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エアバス機のパーツ輸送のための「社内機」として運航

 ヨーロッパの航空機メーカー、エアバスが新たな貨物輸送サービスを開始すると、2021年1月25日(火)に発表しました。同社が保有している異形の貨物機「ベルーガ」の初期タイプ「ベルーガST」を用いて、さまざまな顧客からの特大貨物輸送業務を引き受けるというものです。


エアバス「ベルーガST」(画像:エアバス)。

「ベルーガST」は旅客機「A300-600」をベースとし、翼などの長尺の荷物も運ぶために、胴体上部が大きく膨らんだルックスが特徴の貨物機。「ベルーガ」は「シロイルカ」を意味します。1995(平成7)年にデビューし、運航機数は全5機。エアバスも「あらゆる輸送機の中で世界最大級の内部断面を持ち、幅7.1m、高さ6.7mまでの特大貨物に対応できる」としています。

 ただ、「ベルーガ」シリーズはそもそも、エアバス航空機のパーツを輸送する目的で作られた機で、その形状も用途にあわせたものでした。そしてこれまで「ベルーガST」はその目的どおり、2020年デビューでより収容力の大きい後継モデル「ベルーガXL」とともに、おもにヨーロッパ圏内のエアバスの工場間を飛び回り、パーツ輸送を担ってきました。つまり、ほとんどがあくまで“社内”のみで使用されていたのです。

 そして実のところこれまで、新型機「ベルーガXL」の導入により、「ベルーガST」は“そのまま退役する説”が濃厚でした。これが一転、エアバス機パーツ輸送業務は「ベルーガXL」たちに任せ、「ベルーガST」は“社外”からの貨物も引き受けるようになる――という展開になったわけです。

引退濃厚がなぜ「新ビジネス」担当機に?

 実は「ベルーガST」、設計上はまだまだ十分に飛行を続けられる余裕があるとされています。機齢こそ25年以上経過している機もあるものの、離着陸回数に相当する「総サイクル数」は、設計限度である3万回の半数程度となる約1万5000回に留まっているというのがエアバスの弁。今回のサービス開始で「ベルーガST」の現役期間は、15年から20年程度伸びると見込まれます。

 新ビジネスを担当する「ベルーガST」は、2022年は2号機、3号機の2機体制。最終的に2024年に全5機が、社外からの貨物輸送を担当します。これは、後継機である「ベルーガXL」が全6機出揃うタイミングにあわせたものになります。またこのタイミングで、独自の航空会社証明書とスタッフを備えた新会社が、運航を担当することになります。


エアバスの新型ベルーガ「ベルーガXL」(乗りものニュース編集部撮影)。

 想定される貨物はヘリコプターや航空機用エンジン、陸上車両や軍事機器とのこと。また、その巨大な貨物室の容積からエンジンを分解することなくそのまま輸送できることなどから、航空会社からの需要も見込んでいるとのことです。

 同サービスのスタートで「ベルーガST」の就航範囲は、これまでのエアバスの工場間ではなく、世界の広い範囲に広がる見込みです。ちなみに、このサービスの皮切りとなったのが、2021年12月の神戸空港へのヘリコプター輸送業務。もしかすると今後、日本で「ベルーガST」の姿を見ることが、ごく日常的になるかもしれません。