China Daily CDIC / Reuters
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中国の研究チームが、月探査機Chang'e-5(嫦娥5号)にが月面で水もしくはヒドロキシ基の痕跡を発見したとScience Advances誌に発表しました。ヒドロキシ基とは水分子のH2Oから水素原子Hが1つ外れた状態で結合した物質、いわば水の親戚です。

嫦娥5号の科学チームは、着陸地点の近くにある土壌と岩石に関するスペクトル反射率を調べました。その分析の結果、土壌のほうでは最大120ppmの水分が検出され、岩石では約180ppmが検出されたとのこと。

Honglei Lin et al.

月面のほとんどの土壌では、その水分は数十ppm程度で極度に乾燥した状態になっています。しかし、それも当然のこと。大気がほぼない月面では、そこに液体の水があったところで蒸発、霧散してしまいます。

月面でも常に日陰になる極地のくぼんだ場所などでは、氷の状態で水が存在すると考えられています。ただその場合でも地表に露出した状態では、氷は昇華していずれ消え去ってしまうはずです。

とはいえ、月に水が存在するという証拠は以前から発見されています。近年の例では、2018年に行われた、NASAの月面鉱物マッピングセンサーを搭載したインドのチャンドラヤーン1号による月探査で得られたデータから、月の表面に水氷が存在することがデータ的に証明されました。さらに2020年には、ボーイング747を改造したNASAの成層圏赤外線天文台(SOFIA)が、機体に搭載する強力な観測機器で月の太陽に照らされた表面に水があることを初めて観測しました。しかしその時点では、なぜ月の日なたに水分があるのかはわかっていませんでした。

今回の中国の研究では、太陽風に含まれる荷電粒子により水素原子が月面にもたらされ、その後に酸素と結合して水もしくはヒドロキシ基を作り出す可能性を説明しています。そして研究者は「過去10年間で行われた多くの軌道からの観測やサンプルでの測定では、月に水(ヒドロキシ基またはH2O)が存在する証拠を示しています。しかし、月面の現場における水分の検出はこれまで行われていませんでした」と今回の研究結果の重要性を述べています。

なお、研究結果における土壌の値120ppmは、その物質が太陽からもたらされたと考えられるものの、岩石に含まれる180ppmという数値は、月の地中で水分の源になる何か未知の水源、たとえば初期の月における噴火活動などで作り出された可能性があるとのことです。

将来的に人類が火星や深宇宙を目指すにあたり、水の確保は避けて通れない課題のひとつです。水は分解すれば酸素や水素になり、呼吸のためだけでなく燃料としても利用できます。しかし水は非常に重く、地球から必要な量を宇宙船に積載して持って行くのは非効率的。研究者らは月やその他の地球外環境で水を確保する方法を模索しています。

Source:Science Advances

via:PetaPixel