Jリーグ最終節。見どころは清水エスパルス、湘南ベルマーレ、徳島ヴォルティスの3チームで争われた残留争いと、レアンドロ・ダミアン(川崎フロンターレ)と前田大然(横浜F・マリノス)が争った得点王争いだった。降格したのは徳島で、得点王のタイトルには直接対決の結果、1点ずつ加え、総得点を23とした両選手がそろって受賞した。

 ネットのニュースは、主にそのどちらかで占められていた。横浜FM対川崎戦では、この試合をもって退任する家本政明主審についてもしきりに取り上げられた。

 また本日(12月6日)開催されたJリーグアウォーズで発表された各賞も、それなりの規模で報じられた。ベスト11はもちろん、フェアプレー賞、最優秀主審、副審、優勝監督賞、優秀監督賞、最優秀育成クラブ賞、さらには、柿谷曜一郎がセレッソ大阪戦でマークしたオーバーヘッドシュートに与えられた最優秀ゴール賞も、その中には含まれている。

 しかし、筆者が今季のJリーグでもっとも感激したことについてはあまり報じられていない。柿谷選手には申し訳ないが、最優秀ゴールを表彰するなら、その前に最優秀試合を表彰すべきと言いたくなる。最終節、筆者が観戦に出かけていった横浜FM対川崎は、見応え十分のまさしく表彰したくなる一戦だった。

 勝ち点差こそ13ポイント離れたが、Jリーグの1位対2位の戦いだ。現在のJリーグを象徴する試合。日本のサッカーを語る時、外せない試合である。それが奇しくも最終節に組まれたわけだ。結果以上に、試合内容に目を凝らし、キチッと総括しなければならない試合だった。それが期待に違わぬ好試合だったにもかかわらず、そこをすっ飛ばし、得点王や主審の引退話で盛り上がる姿に、いささか抵抗を覚えずにはいられない。

 攻撃的サッカー対攻撃的サッカーの、日本が誇るべきハイレベルな試合だっただけになおさらだ。少なくとも筆者が最近、生で観戦した中では断トツの一番だった。日本代表対オーストラリア戦以上に、だ。横浜FM、川崎両チームには、外国人選手が各数名存在する。日本代表と単純に比較するわけにはいかないが、ピッチ上には日本代表選手もプレーしているので、いやが上にも見比べてしまう。

 両軍の布陣が輪を掛ける。横浜FMは4-2-3-1で、川崎は4-3-3だ。それぞれは、現在4-3-3で、少し前まで4-2-3-1をメインに戦いながら、弱小チーム相手に苦戦する森保ジャパンの、立派なお手本になる。ピッチに描かれるデザインをそこに重ね、比較して見たくなるサッカーを展開した。日本代表がよくなるためのヒントがぎっしり詰まった試合。すなわち森保監督必見の、日本を代表する模範的な試合でもあったわけだ。

 試合は川崎が後半22分、レアンドロ・ダミアンのヘディングシュートで先制すれば、その7分後に横浜FMがゴール前に詰めた前田の同点弾で追いつくという展開ながら、開始当初から試合を優位に進めていたのは横浜FMで、前半に限れば7対3ぐらいの関係だった。

 そこからお互いが1点を取り合い、緊張感を高めながら最終盤に進んでいく展開は申し分なし。将棋の駒を張るがごとく、交代枠いっぱいの各5人を理詰めに、戦術的交代を交えながら、ピッチに送り込むケビン・マスカット、鬼木達両監督の采配も冴えていた。

 W杯アジア最終予選では、オマーン戦(0-1)、中国戦(1-0)、オーストラリア戦(2-1)などで、5人枠を使い切ることが出来ていない森保監督が、このどちらかのチームの監督だったら、同様な采配は出来ただろうか。難しいと考えるのが自然である。

 横浜FMペースだった試合が後半、徐々に川崎ペースに傾いていった大きな理由に、大島僚太の投入が絡んでいた。左ウイングのマルシーニョをベンチに下げ、インサイドハーフだった旗手怜央をそこに回し、旗手のポジションに大島は入ったわけだが、3回ほど他の選手が真似出来そうもないボール操作術で、決定的なプレーを演出している。