「要支援」と「要介護」って何が違うの? それぞれの判定基準や状態を教えて!

写真拡大 (全4枚)

身近な人の介護について考えたり調べたりしたとき、「要支援」や「要介護」という言葉が出てくると思います。もし、誰かの助けが必要になったときに、両者の違いを理解しておくことはとても重要なのです。はたして、それぞれの介護サービスはどのように異なるのでしょうか。「介護福祉士」の冨松さんに詳しく解説していただきました。

監修介護福祉士:
冨松 智(介護福祉士)

介護付き有料老人ホームや住宅型有料老人ホームに勤務。その後、サービス付き高齢者住宅に、サービス提供責任者として4年間従事。働き方改革と介護業界の人材教育の問題解決にむけて、2020年に介護従事者対象のオンライン相談を開設。将来の目標は、介護業界のリーダー育成と人材教育。

一部介助や見守りが必要なのが要支援

編集部

介護について調べると、「要支援」と「要介護」という言葉が出てきます。それぞれ、どのような状態のことを指すのでしょうか?

冨松さん

要支援と要介護では、被介護者の状態が異なります。まず要支援についてですが、日常生活上で掃除などの家事や入浴をする際に、一部介助や見守りが必要な状態のことを指します。一方で、食事やトイレなどは、ほぼ自立しておこなうことができます。

編集部

つまり、介護介入があまり必要ない状態ということですか?

冨松さん

段階によって異なります。要支援の中でも、さらに2つの段階に分けることができます。見守りや介助が必要な頻度が増えるほど、段階は上がります。要支援1は歩行に問題がなく、立ち上がる際や片足立ちのときなどに、一部介助や見守りが必要な状態です。要支援2は、歩行の際も一部介助や見守りが必要です。

編集部

要支援が必要だと感じたら、どうすればいいでしょうか?

冨松さん

介護の必要性を感じたら、まずは住んでいる地域の市役所、または地域包括支援センターに相談をしてください。そこで「要介護認定」の申請をおこない、「要介護認定調査」の結果に沿って居宅介護支援事業所を選定します。担当のケアマネージャーがその人に合ったケアプランを作成します。ケアプランに応じて訪問介護や訪問看護、リハビリなどのサービス提供をおこないます。

運動機能や思考力が低下すると要介護に

編集部

では、もう一方の要介護はどのような状態なのでしょうか?

冨松さん

要介護は、要支援よりも日常生活に必要な介助が増え、自力だけで生活を営むのは困難な状態です。運動機能だけではなく、思考力や理解力の低下も含めて総合的判断がされ、5段階に分類されます。

編集部

要介護の段階について詳しく教えてください。

冨松さん

心身の状態に応じて5つの段階に分かれています。要介護1は、食事をほとんど自分でとれますが、歩行が不安定で生活動作には部分的な介助が必要な状態です。要介護2は、立ち上がるときや歩くとき、食事やトイレ、入浴などの生活動作にも一部介助が必要な状態となります。

編集部

要介護3以降だと、どうでしょうか?

冨松さん

要介護3は、要介護2の状態に加えて、着替えなどに全面的な介助が必要となり、要介護4は日常生活全般に介助が必要です。要介護4の状態に加えて、寝たきりで意思疎通が困難な状態が要介護5になります。

編集部

要介護が必要と感じたら、どうすればいいでしょうか?

冨松さん

基本的には、先ほどの要支援の流れと同じで、まず「要介護認定」の申請をして「要介護認定調査」後に居宅介護支援事業所を選定します。そして、担当のケアマネージャーがケアプランを作成します。

段階によって受けられるサービスが異なる

編集部

要支援と要介護の一番の違いはなんでしょうか?

冨松さん

受けられる介護サービス内容が大きく異なります。また、要支援や要介護の段階によって、月に利用できるサービスの内容や回数が変わってきます。段階が上がるほど、買い物代行や掃除、入浴介助など依頼できることが増えます。そのためにも、要介護度をしっかりと判断してもらうことは重要です。

編集部

こうした段階は、どのように判断するのですか?

冨松さん

要介護認定調査は、市区町村の職員または地域包括支援センターの認定調査員が要介護者の自宅を訪問して、状態を確認し一次調査をおこないます。そして、主治医の意見書をもとに二次調査を実施し、その調査結果で段階が決まります。要介護3以上になると、特別養護老人ホームに入居する条件を満たします。

編集部

要介護3になると、必ず特別養護老人ホームに入れるのでしょうか?

冨松さん

特別養護老人ホームは国に認可された施設のため、月々にかかる費用が安くなります。そのため、入居を希望する人がとても多く、希望してもすぐに入ることができません。

編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

冨松さん

高齢のご両親と同居されているご家族の方で、仕事をしながら介護をこなすのは、相当ハードであると想像します。施設入居だけでなく、自宅に訪問するサービスや地域の相談窓口など、多岐にわたる選択肢があるので、利用してみてはいかがでしょうか。

編集部まとめ

日常生活に関して、ほとんど自立できますが一部介助や見守りが必要なのが「要支援」。他方、運動機能に加えて意思疎通なども難しく、多くの介助が必要なのが「要介護」とのことでした。要介護者の心身状態によってこれらの段階が決まります。段階により受けられるサービス内容や回数が異なるので、困ったときは市役所の福祉課や地域包括支援センターに一度相談するのがおすすめです。