とんかつ専門店「かつ庵」は、北は北海道から南は沖縄まで、全国で50店舗以上を展開するチェーン店だ。東京には足立区に1店舗しかないのが残念だが、近隣県などで見かけたときには「あ! かつ庵だ!」と、まるで消防車を発見した子どものように反応してしまうし、それがちょうどメシ時であれば迷わずIN!といった具合である。それほど「かつ庵」は、チェーン店とは思えないような本格的なフライ料理を食べさせてくれるのだ。

もはや自他ともに認めるファンだし、だからこそ、その実力も知った気になっていたのだが、つい先日「私の認識はまだまだ甘かった」と思い知らされる出来事に見舞われた。期間限定メニュー「ジャンボ海老フライ」が、想像より遥かに"ジャンボ"過ぎたのである。

○「一生忘れない」――ずいぶん大きく出た"ジャンボ海老フライ"

この日はとんかつでも食べようかと思い、ちょうど車で通りかかった「かつ庵」に入店してみたところ、店先で何やら目を引くパネルを発見。文字を読まずとも、「今日は何やら海老フライを推しているな」とわかる。海老フライのパネルだけ浮き上がってるし。



さらによく見てみると……



「この味、一生忘れない」――。

ふっ、ずいぶん大きく出たものだ。ジャンボだけに。まぁ多少誇張はしているのだろうが、言うてもあの「かつ庵」である。想像を上回ることはなくとも、期待を大きく下回ることもあるまい。

そう思いながら、タッチパネルで「熟成ロース&ジャンボ海老フライ定食」をサクッと注文(カツだけに)。そしてオーダーを完了しようとした瞬間、「そうだ、ジャンボ海老フライと普通の海老フライを比べてみよう」と、軽いイタズラ心が芽生えてきたではないか。

よーし、面白くなってきた。やってみよう。ポチッと。

○ジャンボ海老フライは想像以上にジャンボだった!

そして数分後、目の前に現れたのは……



デカーッ! 器の半径くらいあるではないか。まるで、とんかつが小さくなったかのように見えるが、もちろんそれは目の錯覚。エビがひたすらジャンボなのだ。



繰り返すが、とんかつ自体は通常サイズである。焼き肉サイズを一切れ衣に包んで揚げたわけでは決してないのだ。

一度、普通の海老フライを見て、現実を見つめ直そう。



う〜む、こちらもとても美味しそうだ。文句のつけようがない、立派な海老フライである。

では、予定通りジャンボ海老フライと並べてみよう。



いやぁ〜……ジャンボ海老フライ、ジャンボすぎるよ、いくらなんでも……。体積としては3倍近くはあるかもしれない。同じ「海老」とひと括りにしてしまうことに疑問を覚えるほどだ。一応、真上からも見てみようか。



もはや笑えてくる。繰り返すが、通常の海老フライは立派な海老フライである。むしろ一般的な海老フライよりもいいサイズ感だとさえ感じる。それなのに、この差である。

いや、落ち着け、自分。ジャンボであれば何でもいいというわけではない。サイズも大事だが、肝心の味はどうか。「大味でイマイチでした」などというオチだけは勘弁してくれよな。

そう祈りつつ、タルタルソースをつけて食べてみると……



ウマーッ!

どこから説明すべきか迷うが、まず、重量がある。写真を撮っている間に手がプルプルし、落としてしまいそうになるほどドッシリとしていた。そして、ひたすらデカいので、口に運ぶだけでも大変だった。私の口が小さいのだろうか? と反省しそうになるほど、このジャンボ海老フライはジャンボだったのだ。

肝心の味について言えば、"めちゃくちゃ濃い"というのが第一印象。大味うんぬんと少しでも疑った自分が情けなくなる。噛めば噛むほど、甲殻類の旨みが口いっぱいに充満していく。どこまでも海が広がっていくようだ。身の弾力も、ものすごい。身がギュウギュウに詰まっているイメージとでも言おうか。



これだけ大きいのに、衣でかさ増ししている感は一切なし。噛む音からも、「サクッ」のあとに「プリンッ」とハッキリと聞こえるほどである。素材としての海老のジャンボさで、正々堂々、真正面から打ち合いに来ているのだ。

もしかしたら、こんなにジャンボな海老フライは生まれて初めて食べたかもしれない。それほど誇張なしに大きいし、しっかり美味い。



もちろん、とんかつも忘れてはいない。相変わらず高いクオリティである。厚めの肉はジューシーで柔らかく、こちらも衣と肉のバランスが抜群にいい。油が綺麗なのか、胃もたれするような重さはまるで感じないし、コクと甘みのある特性ソースはますます食欲を掻き立ててくる。



付け合せに小鉢がついてくるのも「かつ庵」の魅力だ。この日は玉こんにゃくの柚子味噌和えである。小さなサービスに見えるが、定食の価値を大きく高めている。フライ料理の箸休めとして、とてもいい仕事をしてくれるではないか。

いやぁ、食べた食べた。もちろん、通常サイズの海老フライまで残さず完食。これも美味しかったし、おかげさまで満腹どころの話ではない。腹がはちきれそうである。

ジャンボ海老フライは誇張なしにジャンボだったし、期待を下回るどころか、想像を遥かに上回る大きさだった。「かつ庵」をあれだけ推していたくせに、こうも簡単に上を行かれるとは、気持ちいいくらい完敗である。

ありがとう「かつ庵」。ジャンボ海老フライのこの味、一生忘れない。