免疫と妊娠のしやすさって関係あるの?

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「免疫機能は高い方がいい」。健康を語る上で、免疫の高さは一つの指標になり得ます。免疫機能が高い健康な体であるほど、妊娠しやすいイメージもあります。果たして、妊娠においても同じことが言えるのでしょうか。「メディカルパーク湘南」の田中先生に、妊娠と免疫の関係性について、お話を聞いてきました。

監修医師:
田中 雄大(メディカルパーク湘南院長)

慶應義塾大学医学部卒業。慶應義塾大学医学部産婦人科学教室入局。川崎市立川崎病院、大田原赤十字病院(現・那須赤十字病院)、大和市立病院などで勤務した後、2009年、神奈川県藤沢市に「湘南IVFクリニック」を開業、2012年に「メディカルパーク湘南」へ移転・名称を変更。不妊治療をはじめとする産婦人科領域全般をひとつのクリニックでおこなっている。医学博士。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医、母体保護法指定医。

妊娠には免疫が低い方がいい

編集部

免疫と妊娠に、関係性はあるのでしょうか?

田中先生

たしかに、免疫は妊娠に関係しています。免疫機能が高いか低いか、どちらの方が妊娠しやすいかと言われると、低い方が妊娠しやすいです。

編集部

それは意外ですね。免疫が低いと体調を崩しやすいイメージですが、低い方が妊娠しやすいのですね。

田中先生

そもそも免疫というのは、病気や感染を防ぐために、菌などの侵入生物を防ぐ機能なのです。そのため、風邪を予防するためには、免疫が高い方がいいと言われています。胎児は、体に悪影響を及ぼすものではありませんが、体が胎児を侵入生物と捉えてしまうことがあり、あまりに免疫が高いと妊娠しづらいことがあります。

編集部

胎児が侵入生物ですか。どういう仕組みなのでしょう?

田中先生

臓器移植を例にすると、分かりやすいかもしれません。手術で臓器を他人に移植すると、体が拒絶反応を起こすことがあります。これは、体が他人の臓器を異物と認識し、免疫によって排除しようとして拒絶反応を起こしているからです。なお、血のつながった親族間の移植だと拒絶反応が緩和されると言われていますが、どちらにせよ拒絶反応が起きてしまい、免疫抑制剤を服用しなければなりません。

妊娠後は免疫機能が低下するので注意

編集部

では、妊活をしているときは、免疫が低い方がいいということですね。

田中先生

難しい問題で、そうとも言い切れません。免疫を下げる薬があり、服用することでいい方向に働く場合もあります。しかし、免疫が下がりすぎると、妊娠する前に風邪を引いてしまうといった、体に悪影響を及ぼす場合もあります。単純に免疫を下げればいいという問題でもないので、専門家と相談して判断する必要があります。

編集部

妊娠中だと、免疫力はどうなるのですか?

田中先生

一般的に妊娠すると、妊婦さんの免疫は下がる仕組みになっています。免疫を下げることで、体内の胎児を侵入生物とみなして攻撃しないようにしています。妊娠中は免疫機能が低下し、風邪や感染症にかかりやすくなるので、体調管理にも意識を向けるべきでしょう。

編集部

今までの免疫のお話は女性についてですが、一方で男性側はどうでしょうか?

田中先生

男性側の免疫と妊娠についての関係は、あまりないと思います。むしろ、免疫が低いと体調を崩しやすくなり、精子の状態も悪くなるのでおすすめしません。男性は、免疫を下げないように、健康的な生活を心がけてください。

気にしすぎない生活が一番

編集部

女性側の話に戻します。妊活中は、免疫を上げないように生活するべきですか?

田中先生

あまり免疫のことは気にせず、ストレスのない生活をするのが一番だと思います。免疫を下げるということは、先ほども述べたように風邪を引いたり、感染症にかかったりするリスクが高くなります。また、免疫が下がることで、妊娠基礎力が下がることも考えられます。総じて、免疫にこだわりすぎなくても、問題ないと思いますよ。

編集部

では、出産後に関してはどうでしょう?

田中先生

出産後は、免疫を上げることをおすすめします。先述したように、自然と免疫が下がってしまう傾向にあるので、日頃から免疫を高めるような生活を意識するといいでしょう。

編集部

免疫を高める生活とは、具体的になにをすればいいですか?

田中先生

よく言われている方法としては、「適度な運動をする」、「栄養バランスの取れた食事をする」、「睡眠の質を高める」、「仕事などでストレスを溜めない」、「腸内環境を整える」、「体を温める」などが挙げられます。また、「喫煙」や「過度の飲酒」なども控えて、生活習慣を改善することが、免疫アップのコツだと思います。

編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

田中先生

免疫機能について色々と話しましたが、妊活においては気にしすぎるのがなによりの害だと思います。また、免疫を下げる薬はありますが、体にもリスクがあり、必ずしも効果が得られるとは限りません。あまり免疫にこだわりすぎず、不安なことは先生に相談してみてください。

編集部まとめ

免疫機能が強く働いている人は妊娠しにくくなることもあるようです。免疫の強さは自分でコントロールできるものではないので、ストレスのない規則正しい生活をするのが一番です。妊活で困っている人は、一度受診してみてはいかがでしょうか。