インプラント治療って痛いの?

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切開や増骨処置を伴うこともあるインプラント治療。それなりの手術が避けられないだけに、やはり気になるのは「痛み」です。加えて、手術後の経過も気になります。万が一の場合、丁寧なフォローなどをしてくれるのでしょうか。これら痛みに関する疑問を、「さかの歯科」の坂野先生へ投げかけてみました。

監修歯科医師:
坂野 泰造(さかの歯科 院長)

徳島大学歯学部卒業。徳島大学歯学部第一補綴科(現・口腔顎顔面補綴学分野)入局、歯科医院勤務を経た1997年、京都府京都市に「さかの歯科」開院。大学病院での経験を生かし、インプラント治療をはじめとした地域医療に尽くしている。日本補綴歯科学会、日本口腔インプラント学会、日本歯周病学会、国際審美学会の各会員。

最も懸念される手術時の痛み

編集部

インプラント治療には、大がかりな施術を伴うイメージがあります。

坂野先生

手術時の痛みに関して言えば、麻酔を用いるので、ほとんど感じません。麻酔なしで手術することは100%考えられませんね。ただし、痛くなりそうで“怖い”と感じる方は、少なくないように思います。

編集部

怖がる患者に、どのような「声掛け」をしていらっしゃるのでしょう?

坂野先生

抜歯のとき痛くなかったですよね、インプラントも同じですよ」などでしょうか。インプラント手術を受けるということは、すでに抜歯の経験があるはずです。抜歯に至ったということは、患部が炎症を起こしていたはず。対する現状は、おそらく炎症などがみられないと思います。組織として健全な箇所にインプラントを施術するわけですから、悪化していた抜歯時に比べれば、痛みの少ない道理です。

編集部

わかりますが、麻酔を注射するその時点から、痛くないか心配です。

坂野先生

ご安心ください。当院では麻酔注射の前に、患部へ表面麻酔を塗るようにしています。注射針そのものも、医療で使う最も細い針を用いています。

編集部

麻酔は、どのようなタイプのものを使用しているのでしょう?

坂野先生

部分麻酔が一般的で、意識を失うような全身麻酔はほとんど使われません。部分麻酔なら、施術中でも、医師とのコミュニケーションが可能です。麻酔の効き方には個人差がありますので、万が一、痛むようなら、遠慮なく申しつけてください。麻酔の量を加減したり追加したりします。

編集部

インプラントのメーカーによって痛みが変わったりしますか?

坂野先生

メーカーにより施術回数は違います。しかし、工程の違いを「インプラント選びの基準」にはしていただきたくないですね。あくまで、その患者さんにとって「どれが適しているのか、どの成功率が高いのか」という観点から、ご提案しています。

一次手術から上物の装着までの痛み

編集部

インプラント体、つまり「土台」を埋め込んで終了ではないですよね?

坂野先生

手術後約1~2週間後に抜糸手術をおこないます。この間で怖いのは、感染による炎症ですね。したがって、抗炎症剤や痛み止めを処方します。糸を取ってしまえば、「組織に空いた糸通し穴」が埋まりますので、感染症リスクは低減します。

編集部

経過観察中、なにかの不具合が起きて、予想外の痛みを感じることはありますか?

坂野先生

ありえます。インプラントの成功率は一般的に95%といわれ、予想と反して、生着がうまく進まないことも“まれに”起こりえるからです。また、手術時の炎症が長期化する恐れも考えられます。これらのリスクは、抜糸手術時に診断します。

編集部

人工歯の装着まで、自宅で気をつけたいことは?

坂野先生

食事などを、患部とは“逆側の歯”でかむようにしてください。普段でも、ケガしたところをお風呂でこすったりはしませんよね。患部でかむのも同様で、癒着の遅れや痛みの原因になることがあります。患部のブラッシングも避けるべきで、一定期間だけ使う「液体歯磨き」をお出ししています。

編集部

痛み止めの内服薬って、のめばのむほど効くのでしょうか?

坂野先生

医師が指示した用量・用法を「厳守」してください。お薬全般にいえることですが、上限を越すと、例えば「おなかを壊す」といった別のトラブルになりかねません。医師の注意が守れない方には、インプラント治療をすすめないこともあります。

編集部

人工歯の装着は、手術不要でおこなえるんですよね?

坂野先生

メーカーによっては手術が必要ですが、インプラント埋入時の手術と比べれば、痛みを心配するレベルのものではありません。もちろん、部分麻酔は併用します。加えて、万が一のために痛み止めを処方するものの、大半の患者さんは「痛み止めを使う必要がなかった」とおっしゃっています。

インプラントでの生活が始まった後の痛み

編集部

一連の治療が終了した後に気をつけたいことは?

坂野先生

インプラント周囲炎の管理が欠かせません。インプラント自体は虫歯にはなりませんが、その周りの生体組織は病気になりえます。つまり、歯肉の腫れや顎の骨の吸収などが心配材料です。インプラントの手術後に一度落ち着いて、改めて痛くなりだしたとしたら、「かなり問題」でしょう。そうならないよう、定期的な歯科医院でのメインテナンスに努めてください。

編集部

ほか、痛みと関連して、どのようなことが考えられるでしょう?

坂野先生

インプラントの10年生存率は、定期メンテを前提にしても、95%前後というのが現実です。人工の歯だから「永久にもつ」とは考えず、むしろ自然の歯と同様なケアをしてください。インプラント治療の主な目的は、病気知らずではなく、「かむ力を元に戻す」ことです。

編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

坂野先生

患者さんが「痛み」を懸念されているのは、「トラブルへの怖さ」も含めての実感なのだと思います。これに対して医師としてできることは、事前の綿密な検査と、正確なリスク評価でしょう。少しでも「安心」をお届けしたいと願っておりますので、まず、カウンセリングだけでも受けてみてはいかがでしょうか。検査や診断で痛むことはありません。手術するかどうかは、その後に決めていただければ結構です。

編集部まとめ

インプラント治療を植樹に例えると、わかりやすいでしょうか。抜歯直前の「荒れ地のような患部」をならすのは大変です。しかし、すでに「ならされた抜歯跡」に植樹するとしたら、比較的平易におこなえるでしょう。もちろん、植樹作業の難易度にかかわらず、部分麻酔が用いられるとのこと。また、予後不良を防ぐためにも、治療後の定期メンテは必須です。