カモノハシは遺伝子的に哺乳類でもあり鳥類でもありハ虫類でもあった
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「毒のトゲや蛍光色に光る毛皮をもつ」「性染色体が10本ある」「汗をかくように母乳を分泌する」など、あまりにも奇妙な特徴を兼ね備えるカモノハシのゲノム(塩基配列)地図が発表されました。
Platypus and echidna genomes reveal mammalian biology and evolution | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-020-03039-0
https://www.sciencealert.com/platypus-genes-reveal-some-of-the-bizarre-traits-that-come-with-5x-and-5y-chromosomes
オーストラリアに生息するカモノハシは鳥類と同じ卵生ですが、子どもは哺乳類と同じく母乳で育ち、哺乳綱単孔目に分類されている通り、哺乳類の1種とされています。研究チームはオスのカモノハシを使って、2008年に塩基配列が決定されたカモノハシのゲノムマップを解析しました。
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by Maggie
記事作成時点で、地球上に存在する哺乳類は単孔類・有袋類・真獣類の3つのグループに分けられ、私たち人間はその最後のグループに属します。有袋類と真獣類はともに胎生で子を産みますが、単孔類(カモノハシ目)は鳥類やハ虫類と同じように卵を産みます。
この3つのグループがいつから分かれ始めたのかはまだ不明で、「単孔類がまず分裂して有袋類や真獣類がそれに続いた」という説や「同時に3つに進化した」という説もあります。そのため、カモノハシのゲノムを解析することは、哺乳類の進化の軌跡を解明することにつながります。
単孔類のカモノハシやハリモグラから収集したデータによって、単孔類全体が約1億8700万年前に有袋類や真獣類から分岐したようであることがわかりました。それにもかかわらず、半水生のカモノハシは1億年以上その姿に変化がなく、多くの有袋類や哺乳類とは異なり、オーストラリアの奥地の環境に適応しています。
カモノハシは10本の性染色体をもつ唯一の動物です。カモノハシの性染色体は5種類のX染色体と5種類のY染色体が環状に並んでおり、それぞれの性染色体が哺乳類の進化の過程で断片化したと考えられています。この染色体情報を人間や、オポッサム、タスマニアデビル、ニワトリ、トカゲのゲノムと比較すると、カモノハシの性染色体は人間のような哺乳類よりも、ニワトリのような鳥類と共通していることがわかりました。
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by Melbourne Water
カモノハシはニワトリのように卵を産みますが、カモノハシの子どもは母乳を飲んで育ちます。ゲノム解析の結果、カモノハシは卵内で子どもの栄養となるような卵タンパク質を発現できる遺伝子を約1億3000万年前に失ってしまっていることがわかりました。その代わり、カモノハシのゲノムは有袋類や真獣類のように、母乳の成分となるカゼインを発現する遺伝子を含んでいることがわかりました。
研究チームの一員で中国科学院昆明動物学研究所の研究員であるGuojie Zhang氏は「現存するすべての哺乳類の乳生産は、1億7000万年以上前に恐竜と同じ時代を生きた祖先の遺伝子に由来していることがわかりました」と語っています。ただし、カモノハシの母乳は、血液由来で母乳を作るウシや人間とは違った作られ方をしているとのこと。
また、カモノハシはアヒルのような幅広いクチバシを持っていますが、歯は生えていません。これについても、ゲノム解析の結果、カモノハシが歯の発生に関する4つの遺伝子をおよそ1億2000万年前に失っていることがわかりました。
さらに、2008年の研究で、カモノハシの後ろ足から分泌される毒素のタンパク質は、ハ虫類と同じ遺伝子系統から生じたことがわかりました。つまり、カモノハシの毒性はハ虫類の親戚である証拠というわけです。ただし、カモノハシと同じ単孔類であるハリモグラは、この毒素タンパク質を発現する遺伝子を失ってしまったようです。
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by Stowe Boyd
研究チームは、カモノハシにはまだ多くの謎が残っていると述べ、「カモノハシやハリモグラのゲノムマップを解析することで、生物学および進化学へのさらなる洞察が可能になるでしょう」と期待しています。