在宅で家事格差がくっきり…コロナ離婚に繋がりやすい夫婦
コロナウイルス感染拡大防止のため、夫婦ともにテレワークをすることになった…という家庭も多いはず。
一緒の時間が増えれば普段は気がつかなかったいやな部分が目についたり、ケンカがすることが増えたり、最悪離婚に繋がる可能性も。テレワークの動きが出てきた頃、早い段階で、「#コロナ離婚」がトレンド入りしたことで、話題になりました。
いったいなぜ、一緒の時間が増えることで関係が悪化してしまうのか、また、どうすることで回避できるのか。大手前大学で心理学の研究をしている武藤麻美さんにお話をうかがいました。
あらゆる不満が生じて起こるコロナ離婚。対処法は?(※写真はイメージです。以下同)
まず、夫婦が一緒にいる時間が増えたことで関係が悪化する理由について、武藤さんは「ひとつは夫婦によっては性別役割分業の持つマイナス面が顕在化してしまうためではないでしょうか」と語ります。これは、特に共働き家庭では、女性がより家事、育児、仕事(テレワーク)を行うことになり、これまでよりもいっそう負担がかかることも原因のひとつになるそうです。
以前より、家事の負担が増えてしまったという妻側からの意見を聞いてみたところ…。
「どちらも仕事をしているのに、休憩時間中に食事を用意するのも、在宅勤務終わりにスーパーに買い物に行くのも私で、逆に負担が増えた」(36歳・妻)
「休校中の子どもの相手を頼むと、『俺は仕事中だから』とすべて私に押しつけ、業務時間中は、家事・育児どちらも協力的になってくれない」(31歳・妻)
一方で、夫は夫でこれまで見えていなかった妻への不満が見えてきたという人も。
「普段は気づかなかったけど、妻の掃除の雑さが目につきます。やんわり伝えたら、怒られてしまった」(37歳・夫)
「ただでさえ、家では仕事にならずイライラするのに、家事をやってほしいと言われても困る」(40歳・夫)
どちらも仕事・家事のはざまでストレスがたまってしまっていることがうかがえます。
「以前から夫婦でよく話し合っていて、役割分業が対等な夫婦・カップルは基本的に大きく関係性は変わらないと考えられます。しかし、もともとどちらかに家事育児などの比重がかかっていた場合は、今回の在宅勤務により、余計に精神的な不満や体力的な限界など、問題が深刻化したのではないでしょうか」(武藤さん)
緊急事態だと割りきっているテレワークですが、外出自粛がさらに長期化してしまった場合、このまま目を背けていたらさらに悪化してしまうかもしれません。
深刻な事態になる前にできることを伺いました。
●テレワークをチャンスととらえ、家事分担について話し合おう
武藤さんは、今のうちに家事分担について話し合う時間を設けることをすすめています。
「在宅勤務が増えたことで、家庭内の男女のあり方を再考する機会になるかもしれません。この機会に、ケンカにならない程度に今後の家事・育児分担について話し合うことが対策になります」
お互いに不満が爆発してからでは、話し合いも穏やかに進めることができないかもしれません。テレワークを「今だけ」ととらえず、先々のことも考えて、早い段階で時間を設けることが大事になります。
●それぞれのパーソナルスペースをきちんと確保すること
また、武藤さんはそれぞれがパーソナルスペース (心理的な縄張り) を確保できなくなったことでフラストレーションがたまっていることも関係悪化の要因として挙げています。
「これまでは男性が働きに出る、または共働きしていたことで、お互いに適度な心理的距離が取れていました。日中は別々の空間や時間を過ごし、自分のペースとリズムを確保していたので、精神的なバランスが取れていたのです」
しかし、テレワークにより、ひとつの環境に家族が留まらなければならないといけなくなり、自分のパーソナルスペースが確保できず、時間のリズムも狂ってしまいました。そのことによってお互いにフラストレーションがたまり、ささいなことでケンカや暴力などを引き起こし、関係性の破綻に繋がっている可能性があるのです。
実際の声を聞くと、これに関しては双方がストレスをためてしまっているケースが多いことがわかりました。
「ひとりの時間が一切取ることができない。リビングでは夫がゲームしながら寝そべっているくせに、夜に私がくつろいでいると『早く寝たら』などといちいちカチンときます」(37歳・妻)
「普段はそんなに会話をしていなかったけど、一緒の時間が増え、妻がどうでもいい愚痴や不満、同じ話をしてくるので疲れる。ひとりにさせてほしい」(41歳・夫)
こういったフラストレーションが溜まっていくと、いまさらなる問題として起こっている家庭内暴力へと繋がってしまいます。この対処法として、武藤さんはこう教えてくれました。
「1日のなかで、少しでもいいので、各々が自分の空間と時間を確保することが重要です。たとえば、ひとつの部屋にとどまりすぎないことや、社会的距離を保ったうえでの散歩やスーパーへの買い出し、ベランダやバルコニーでの日光浴、目を閉じてゆっくり深呼吸する時間を設けるなどが効果的です。どうしても長時間ひとつの部屋にとどまる必要がある場合は、イヤホンをして音楽を聴いたり、映画やドラマを観たりして自分だけの世界を確保するといいでしょう」
今回の新型コロナウイルス問題は、社会的混乱も重なり、だれしもが不安や恐怖を感じています。ただでさえ、人間関係に溝が入りやすい条件が重なっているいま、少しでも精神的なストレスを解消していきながら、乗り越えていきたいですね。
<取材・文/ふくだりょうこ>
●教えてくれた人
【武藤麻美さん】
大手前大学現代社会学部准教授。専攻は心理学で、博士 (人間科学)。医療機関で精神保健福祉士として勤務した経験も踏まえ、社会的マイノリティに対する認知(社会的距離やステレオタイプなど)について研究
一緒の時間が増えれば普段は気がつかなかったいやな部分が目についたり、ケンカがすることが増えたり、最悪離婚に繋がる可能性も。テレワークの動きが出てきた頃、早い段階で、「#コロナ離婚」がトレンド入りしたことで、話題になりました。
いったいなぜ、一緒の時間が増えることで関係が悪化してしまうのか、また、どうすることで回避できるのか。大手前大学で心理学の研究をしている武藤麻美さんにお話をうかがいました。
あらゆる不満が生じて起こるコロナ離婚。対処法は?(※写真はイメージです。以下同)
どちらか一方の家事負担増、ストレス増により引き起こされるコロナ離婚
まず、夫婦が一緒にいる時間が増えたことで関係が悪化する理由について、武藤さんは「ひとつは夫婦によっては性別役割分業の持つマイナス面が顕在化してしまうためではないでしょうか」と語ります。これは、特に共働き家庭では、女性がより家事、育児、仕事(テレワーク)を行うことになり、これまでよりもいっそう負担がかかることも原因のひとつになるそうです。
以前より、家事の負担が増えてしまったという妻側からの意見を聞いてみたところ…。
「どちらも仕事をしているのに、休憩時間中に食事を用意するのも、在宅勤務終わりにスーパーに買い物に行くのも私で、逆に負担が増えた」(36歳・妻)
「休校中の子どもの相手を頼むと、『俺は仕事中だから』とすべて私に押しつけ、業務時間中は、家事・育児どちらも協力的になってくれない」(31歳・妻)
一方で、夫は夫でこれまで見えていなかった妻への不満が見えてきたという人も。
「普段は気づかなかったけど、妻の掃除の雑さが目につきます。やんわり伝えたら、怒られてしまった」(37歳・夫)
「ただでさえ、家では仕事にならずイライラするのに、家事をやってほしいと言われても困る」(40歳・夫)
どちらも仕事・家事のはざまでストレスがたまってしまっていることがうかがえます。
「以前から夫婦でよく話し合っていて、役割分業が対等な夫婦・カップルは基本的に大きく関係性は変わらないと考えられます。しかし、もともとどちらかに家事育児などの比重がかかっていた場合は、今回の在宅勤務により、余計に精神的な不満や体力的な限界など、問題が深刻化したのではないでしょうか」(武藤さん)
緊急事態だと割りきっているテレワークですが、外出自粛がさらに長期化してしまった場合、このまま目を背けていたらさらに悪化してしまうかもしれません。
深刻な事態になる前にできることを伺いました。
●テレワークをチャンスととらえ、家事分担について話し合おう
武藤さんは、今のうちに家事分担について話し合う時間を設けることをすすめています。
「在宅勤務が増えたことで、家庭内の男女のあり方を再考する機会になるかもしれません。この機会に、ケンカにならない程度に今後の家事・育児分担について話し合うことが対策になります」
お互いに不満が爆発してからでは、話し合いも穏やかに進めることができないかもしれません。テレワークを「今だけ」ととらえず、先々のことも考えて、早い段階で時間を設けることが大事になります。
●それぞれのパーソナルスペースをきちんと確保すること
また、武藤さんはそれぞれがパーソナルスペース (心理的な縄張り) を確保できなくなったことでフラストレーションがたまっていることも関係悪化の要因として挙げています。
「これまでは男性が働きに出る、または共働きしていたことで、お互いに適度な心理的距離が取れていました。日中は別々の空間や時間を過ごし、自分のペースとリズムを確保していたので、精神的なバランスが取れていたのです」
しかし、テレワークにより、ひとつの環境に家族が留まらなければならないといけなくなり、自分のパーソナルスペースが確保できず、時間のリズムも狂ってしまいました。そのことによってお互いにフラストレーションがたまり、ささいなことでケンカや暴力などを引き起こし、関係性の破綻に繋がっている可能性があるのです。
実際の声を聞くと、これに関しては双方がストレスをためてしまっているケースが多いことがわかりました。
「ひとりの時間が一切取ることができない。リビングでは夫がゲームしながら寝そべっているくせに、夜に私がくつろいでいると『早く寝たら』などといちいちカチンときます」(37歳・妻)
「普段はそんなに会話をしていなかったけど、一緒の時間が増え、妻がどうでもいい愚痴や不満、同じ話をしてくるので疲れる。ひとりにさせてほしい」(41歳・夫)
こういったフラストレーションが溜まっていくと、いまさらなる問題として起こっている家庭内暴力へと繋がってしまいます。この対処法として、武藤さんはこう教えてくれました。
「1日のなかで、少しでもいいので、各々が自分の空間と時間を確保することが重要です。たとえば、ひとつの部屋にとどまりすぎないことや、社会的距離を保ったうえでの散歩やスーパーへの買い出し、ベランダやバルコニーでの日光浴、目を閉じてゆっくり深呼吸する時間を設けるなどが効果的です。どうしても長時間ひとつの部屋にとどまる必要がある場合は、イヤホンをして音楽を聴いたり、映画やドラマを観たりして自分だけの世界を確保するといいでしょう」
今回の新型コロナウイルス問題は、社会的混乱も重なり、だれしもが不安や恐怖を感じています。ただでさえ、人間関係に溝が入りやすい条件が重なっているいま、少しでも精神的なストレスを解消していきながら、乗り越えていきたいですね。
<取材・文/ふくだりょうこ>
●教えてくれた人
【武藤麻美さん】
大手前大学現代社会学部准教授。専攻は心理学で、博士 (人間科学)。医療機関で精神保健福祉士として勤務した経験も踏まえ、社会的マイノリティに対する認知(社会的距離やステレオタイプなど)について研究