おうち時間が長くなると気になるのが、家の中のこと。なんだか居心地が悪い。そう感じたら、見直しのときかもしれません。
ものを捨ててすっきり暮らしたいのに、なかなか捨てられない…。そんな悩みを抱えるESSE読者4人が集まって、「断捨離」の提唱者・やましたひでこさんと本音の座談会を開催!
断捨離の意味をとおして、捨てるための心得をアドバイスします。


「もの、コト、人の順に断捨離しましょう」(やましたひでこさん)

※座談会は2019年に開催されたものです

読者のお悩み「せっかくの新居がすでにものでパンパン…」



今回、集まってくれたのは、捨てられない悩みを持つ4人の女性。Tさん、Sさん、Kさん、Iさん。やましたさんに本音を伝えます。
まずは、社宅住まいから、念願の新居に引っ越したTさん。ですが、すでに物置き状態の部屋もあるほど、ものがあふれているそう…。洗剤などがギッシリ入った段ボールが積み重なったTさん宅は、「じつは1部屋まるまるストック品で潰してしまっています」とのこと。

Tさん:住宅ローンが始まったわが家では、ものを買いたす余裕はなくて…。長男の服を二男に着せるためにとっておいたり、とくに日用品のストックは必ず使うものだから、捨てるに捨てられないんです。

やました:あなたは、家族が心地よく暮らすために家を購入したのよね? だったらなおのこと、余計なものはいらないじゃない。まずは、今あるものの中から選び抜いたものを残せばいいの。私たちはそれだけで十分暮らせるんです。

Tさん:本当は、ホテルのようになにもない空間で暮らすのが理想だったんですが…(苦笑)。

やました:イメージができているなら、あとは引き算していけばいいだけ。ものを選び抜く基準は、使うのが楽しくて、自分を生かしてくれるかどうか。「捨てるのがもったいない」や、「使えばトクするかも」じゃないのよ。

Iさん:今の言葉、かなり胸に刺さりました(笑)。

やました:あとはね、どんなものでも、ギチギチにつまっていれば安っぽく汚らしく見えると覚えていてください。常に7割収納を心がけ、残りの3割はものの通り道としてスペースを確保しましょう。

Sさん:7割…もう別世界です。

やました:でしょ? 取り出すゆとりがないと、ものを持っている意味がない。押し込まれて出番がないままなんて、ものだって辛いわよ。余裕のある空間は、人もものも元気にしてくれるんです。

読者の悩み「年賀状を捨てるのに罪悪感が…」



お次はKさんのお悩み。スペースはさほどとらないものの、年々増えていくKさんの年賀状。
「フォルダーを見ると憂鬱に。年末が近づくとモヤモヤ…」


Sさん:私も7割収納を実践すべく、捨ててきたんですが、年賀状や手づくり品などの気持ちがこもったものを目の前にすると作業が止まってしまうんです。

やました:だれかの顔が見えるものの始末は、私も苦労しましたよ。あとは、親の思いがつまったものとか。でもね、捨てたからといって相手の気持ちを踏みにじるわけではないよね。気持ちだけありがたくいただきましょうよ。バチも当たらないし、たたりもないから大丈夫よ(笑)。ちなみに私は、年賀状自体やめてしまった。それでもおつき合いが続く人たちが、私にとっても本当に大事な人たち。心地よい人間関係だけを残せたと思っています。

Sさん:安心しました…。じつは私も屋根裏の隠し部屋にまとめてアルバムや年賀状をしまい込んであるので、これから取りかかります。人からもらったけど処分してしまったものを、「あれどうした?」ともしも聞かれたら、どう答えればいいでしょうか?

やました:「じつは、とても気に入ってくださった方がいたので、お嫁に出したんです」って言うといいわよ。

Kさん:なるほど、そう返せばいいんですね! 捨てることはものを生かすことでもある…。これで思いきって捨てられそうです。

●断捨離はもの以外にも。人生を豊かにしましょう

やました:ものを捨てるのは、執着などの不安とお別れするステップの1つ。それができたら、続いて「コト」、そして最後に「人」を断捨離していきましょう。

Tさん:断捨離は、もの以外にも当てはまるんですか?

やました:そうですよ。だって、自分に心地よい生活を与えていくためにあるものだから。ものだったら「捨てる」、コトだったら「やめる」、人だったら「別れる」というやり方です。

Iさん:なるほど…。

やました:ただね、コトや人はハードルが高いの。よく、「実家のものを片づけたい」とか「義実家がものであふれて…」といった相談も受けますが、対人関係にも関わる問題にいきなり手をつけるのは難しいです。だからまずは自分のものを断捨離するの。1歩踏み出すことが大事なのよ。引き出し1つから始めればいいんです。最後に残るのは希望で満たされたあなたの空間と人生よ。住まいは楽しいこと、うれしいことで埋めていきましょう。

一同:なんだか、早く家に帰って断捨離したくなってきました!

私たち、断捨離できました!



読者4人のその後を追跡調査! 先生の激励で見事、断捨離に成功しました。

●Iさん(千葉県・40歳)

夫、長女(7歳)、長男(4歳)の4人家族。自宅は3LDKのマンション。趣味はプリザーブドフラワーづくり。片づけへの意欲はあるが、それを維持できないのが悩みでした。


BEFORE

先生に「主婦ならキッチンから」と言われたのを胸に、まずはキッチンの断捨離から。


AFTER

「水きりカゴは、使わないときはしまえばいいと気づきました。シンク回りがすっきりすると、本当にやる気がアップ!」

●Kさん(東京都・39歳)

3LDKの一戸建てに、夫、長男(9歳)、長女(5歳)の4人家族。子ども部屋の確保に向けてものを捨てたいと思っているが、捨てる直前で悩んでしまい、片づけが一進一退気味に。


BEFORE

大量にあった年賀状は、さかのぼるとなんと新婚時代のものまで!


AFTER

「書き損じハガキも50枚を超えていました。あいたスペースには、以前からしまい場所に困っていた文房具を置こうと思っています」

●Sさん(東京都・39歳)

夫、長男(8歳)、二男(4歳)の4人家族。8年前に4LDKの一戸建てを購入。自宅は一見、ものが少なくスッキリしているが、じつは大量の服であふれる隠し部屋がアリでした。


BEFORE

クローゼットはハードルが高すぎるので、まずはタオルに挑戦。


AFTER

「使わないサイズのタオルを処分したら、あきスペースができました! 使いたくても下ろせなかった新品タオルを入れても、まだゆとりがあってうれしい」

●Tさん(東京都・32歳)

夫、長男(4歳)、二男(1歳)の4人家族。結婚以来、社宅住まいだったが、この夏念願の新居を購入。しかし、社宅時代のものを捨てられず、すでにカオス状態に…。


BEFORE

「もったいない」にとらわれてストック品を捨てられなかった土屋さんは、洗面所からスタート。


AFTER

「最低限のストックと毎日使うものだけを厳選したら、なんと1段スペースができました。捨てる勇気がついたと思います」

やましたさんの言葉を胸に、断捨離の一歩を踏み出した読者たち。それぞれに心地よさを実感した模様。さあ、今度は皆さんの番です。気になるところから少しずつ、始めてみませんか?

※断捨離はやましたひでこさんの商標登録です

<撮影/林紘輝 取材・文/ESSE編集部>

●教えてくれた人
【やましたひでこさん】


早稲田大学在学中に出合ったヨガの行法哲学「断行・捨行・離行」に着想を得た「断捨離」を日常の「片づけ」に落とし込み、だれもが実践できるメソッドを提唱。著書に『捨てる。引き算する勇気
』(幻冬舎刊)など