50歳の漫画家・古泉智浩さん。古泉さん夫婦と母(おばあちゃん)、里子から養子縁組した5歳の長男・うーちゃん、里子の2歳の長女・ぽんこちゃんという家族5人で暮らしています。
今回は、子どもたちとお風呂をめぐる、おもしろくてちょっと切ないエピソードです。

お風呂で2歳のミュージシャンが爆誕!バケツと洗面器でセッションしています



里子のぽん子ちゃんに、お風呂でバケツを叩くブームが訪れていました。手桶を小脇に抱えて、反対の手で裏の底をポンポンとリズミカルに叩きます。
僕も洗面器を湯船に反対に向けて浮かべてポコポコ叩いていると、一定のリズムは人を興奮させるようで、ぽんこちゃんが片足をどんどんと踏み鳴らします。


手桶2回に足踏み1回で見事にリズムをとっています。ちょうどドラムのバスドラとスネアを叩いているようで、まったく教えていないのに自然にやっているので驚きました。

●一方、5歳のうーちゃんは「イヤイヤ期」が続いています

養子のうーちゃんはなにかと反抗したがるイヤイヤ期が、5歳になった今もまだ続いていて、僕がお風呂に誘っても断られることが多いです。しかしなにかの気まぐれで一緒に入ってくれることがあります。

いつもの太鼓遊びにうーちゃんも誘いましたが、断られてぽんこちゃんと二人で手桶と洗面器を叩いて遊んでいると、うーちゃんはおもしろくないようで、僕の洗面器を奪いました。それをうーちゃんが叩くのかと思うとなにもせず、返してもくれません。

仕方がないので、湯船の水面を洗面器と同じようにバシャバシャ叩きました。すると、意外にいい具合にリズミカルに叩けました。しかし激しい水しぶきが上がって僕もぽんこちゃんもうーちゃんも頭から顔からお湯がかかります。子どもは顔が濡れるのが苦手です。


「やめてー!」
うーちゃんからの猛抗議で水面を叩く遊びは終わりになりました。だったら洗面器を返してくれればこんなことにならずにすむのにと思いました。

●ぽんこちゃんのもうひとつのブームが「ぺっ」

またぽんこちゃんはシャワーのお湯を飲みたがります。口を大きくあけて、シャワーをかざすのを待っています。口に入れてあげると、閉じてしばらく口に含みながら、僕にもシャワーのお湯を口に入れるように僕の口を指さし、
「ん」
と促します。

僕はシャワーのお湯は飲みたい気持ちがないので、口に含んでブクブクとうがいをして、洗い場の床にぺっと吐き出します。するとぽんこちゃんもぺっと吐き出すしぐさをするのですがなにも出ません。もうとっくに飲んでしまっているのです。


再びぽんこちゃんが口にシャワーのお湯を入れたがって、入れてあげると僕にも口に入れるように指さして促し、僕がシャワーのお湯でブクブクしてぺっと出すと、ぽんこちゃんも吐き出すしぐさをしますが飲んでいるので出ない、そんなことを何度も何度も繰り返します。
何度やってもぽんこちゃんはお湯を飲んでいるので、ぺっと出すしぐさだけでなにも出ません。

●新型コロナウイルスが流行後は、お風呂事情が変わりました

じつは、これはちょっと前のお風呂の様子です。コロナが流行り出してからママが夜、スポーツジムに行かなくなり、家で子どもをお風呂に入れてくれるようになりました。

今では僕は朝、ぽんこちゃんに起こされると洗濯機を回してパンを温めて豆乳を出して、オムツを交換してズボンを履かせます。それら一連の作業を終えてぽんこちゃんがパンを食べているときなどに、さっと10分くらいでシャワーをします。

ある朝、ぽんこちゃんがパンを食べている間にシャワーをしようとすると、ぽんこちゃんが脱衣場について来ました。まだちょっと寒い時期です。

「ぽんこもシャワーする」
「ダメダメ、夕べママと一緒にお風呂入ったでしょ。寒いからお部屋でパン食べてな」

そう言って急いでシャワーをすませて出ると、洗濯機の前の洗濯カゴのスペースの中にすっぽり収まってぽんこちゃんが僕を待ってくれていました。


そんなところに収まっていておもしろいのかなにがしたいのか不明な行動なのですが、近くにいたかったのかな、一人は寂しかったのかなと胸がつぶれそうになってしまいました。

【古泉智浩さん】

漫画家。1969年、新潟県生まれ。93年にヤングマガジンちばてつや賞大賞を受賞してデビュー。里子を受け入れて生活する日々をつづったエッセイ『うちの子になりなよ ある漫画家の里親入門
』、その里子と特別養子縁組制度をめぐるエピソードをまとめたコミックエッセイ『うちの子になりなよ 里子を特別養子縁組しました
』など著書多数。古泉さんの最新情報はツイッター(@koizumi69
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