気になる新車ということで浮かれて大事なポイントを見逃すな!

 新車の購入時、ショールームに出掛けると気分が高揚し、完全なるアウェー状態でもあることから、大切な何かをうっかり見落として、契約。あとで後悔する……なんてこともありがちだ。

 カタログでしっかり研究したつもりでも、クルマの機能や装備はさまざまで、グレードによって付く、付かないもある。なおかつ、試乗シーンでも、欲しいクルマのハンドルを握るうれしさのあまり、大切なポイントを見落としがちになったりする。ここでは、欲しいクルマがある程度、絞れてきていると仮定して、グレード選びやショールームでのチェックポイント、そして試乗時の注意点などを紹介したい。

 まず、同じクルマでも自身、家族が必要な仕様・装備をしっかり決めておくことが大切だ。今では先進運転支援機能などはほとんどのグレードに付いているが、衝突被害軽減ブレーキは必須。何しろ2021年から装着が義務づけられるからだ。運転初心者、シニアドライバーなら、前後のアクセル踏み間違い衝突防止機能もあると安心。それも動力を抑制するだけのものと、ブレーキ機能まで付いているクルマもある。

 一例を挙げると、ダイハツ・ロッキーとトヨタ・ライズは兄弟車だが、見た目だけではなく、先進運転支援機能に差があるので注意したい。ロッキーは全グレードに先進運転支援機能のスマアシが付くものの、ライズの最廉価グレードのXには、あろうことか、スマアシレス、衝突被害軽減ブレーキなどが一切付かないのである。まさか、セールスマンも薦めてこないと思うが、念のため。

 高速走行、長距離ドライブの機会が多いなら、ACC(アダプティブクルーズコントロール)もあると便利。ペダル操作によるストレスが軽減され、より快適に長距離ドライブが楽しめるのだ。ただし、同じACCでも渋滞追従機能付きがより便利。そもそも、ACCのありがたみをより強く実感させてくれるのが、高速道路での渋滞時だからだ。このあたりは、カタログでは100%わからないこともあるので、ショールームで確認したい。

 たとえば、ACC以上の機能を持つ先進運転支援機能に、日産のプロパイロットがある。だがデイズの場合、プロパイロットエディションが選べるのはハイウェイスターのみ。標準車の最上級グレードを買ったとしても、絶対に付かないのだ。試乗したデイズがハイウェイスターで、プロパイロットスイッチが付いているのを確認。しかし、買ったのは標準車。てっきり付いていると思ったのに、では遅い。フロアマットなどと違い、あとで付けることは絶対にできないのである。

 そして、ショールームでは、運転席ばかりに座りがちだが、ファミリーカーとして使うなら、助手席(奥さまチェック?)、後席の乗降性、シートのかけ心地、頭上や足もとの広さ、ラゲッジフロアの高さ/広さ/床下収納の有無、使い勝手などもチェックしたい。あとで家族から、後席に乗りにくい、後席が狭い、ラゲッジが使いにくい……などのクレームを出されたらたまらない。できれば家族全員でショールームを訪れ(せめて財布のひもを握っている奥さまだけでも)、評価を聞きたいところだ(そんなことをすると、欲しいクルマが買えないデメリットもあるが)。

 意外に見落としがちなのが、スマホの置き場と充電環境。最新のクルマはディスプレイオーディオ仕様だったりして、ナビなどの機能がスマホ接続前提だったりするが、そのスマホの置き場と充電機能に納得できないと、かなり使いにくいクルマになってしまう。花粉症の人なら、ティッシュボックスの置き場も要チェック。シートや床にしか置けないと不便極まりない。デイズや三菱eKクロスは、助手席前の引き出し式トレー内にティッシュボックスがすっきりと収まるから便利だ。そうした利便性では、軽自動車が優れている。

自分の欲しいグレードや駆動方式に可能ならば試乗すること!

 試乗シーンでは、ショールームでは上級グレードの2WD車を用意していることがほとんど。上級グレードなのは、なにかと印象が良くなるからだ。だが、欲しいグレードとエンジン、タイヤサイズ、装備などが異なる際は要注意。納車されて、試乗したクルマと加速感、乗り心地などの印象がまるで違う……なんていうこともありうるのだ。

 駆動方式が選べ、試乗車は2WDでも買うのは4WDといった場合はとくに慎重に。クルマにもよるが、2WDに比べて4WDの乗り心地が劣ることもある(一部、逆もあるが)。

 ゆえに、理想は、購入する仕様になるべく近いグレード&同駆動方式の試乗車を試してみることだ(ほかのお店から試乗車を取り寄せてもらうか、希望の仕様が置いてあるショールームに出向いてでも!)。どうしても希望の仕様の試乗車がなければ、自動車専門誌、専門WEBサイトの識者の試乗記を参考にするとよい。意外に上級グレードでない仕様のほうが評価が高かったり(その逆もありき)、同車種でもエンジンの排気量の違いによって、走行性能が格段に違うなんてこともあり得るのだ。

 もちろん、カタログでしか見たことがないボディカラーを選ぶのも絶対にやめたほうがいい。工場にあるクルマでもいいから、ボディカラーの実車確認は不可欠。新車を買って、あとでしっくりこない(後悔する)原因のひとつが、ボディカラー選びの失敗でもあるのだ。

 試乗では、できるだけ長い距離、さまざまな環境(狭い道などを含む。高速走行の機会が多いなら、高速道路)を走らせてもらうこと。エコやスポーツなどのドライブモードがあれば、それぞれを体験。駐車もセールスマンにまかせず、自身でトライしてみよう。その際、リヤカメラやビューモニターの機能もチェックしたい。扱いやすさ、運転のしやすさ、バックのしやすさなどまで確認すべきなのである。そのため、試乗が混んでいる日時を避けてショールームに出掛けるのがよいだろう。

 できればセールスマンの運転で、助手席、後席(ミニバンなら全列)にも乗せてもらうといい。運転席と印象が大きく違う(いい意味でも、悪い意味でも)クルマもあるのだ。ミニバンの3列目席は、車種によって乗降性や快適性の差が大きいので、とくに要チェックである。

 そこまでしても、100%満足できる新車を手に入れることはなかなか(予算もあって)難しいとは思うが、後悔しない新車購入の決め手は、何といっても事前の下調べをいかに多く行うかにかかっている。そうすれば、できれば買うべきではない仕様や、すぐにモデルチェンジしてしまうクルマを、そうとは知らずにつかまされることもない。高い買い物だけに、勢いに押されず時間をかけて、じっくりと慎重に選ぶのが正解である。

 つまり、ショールームの商談の場所では、頭のなかに欲しいクルマ、仕様の全容が入っていることが肝心。そこがあいまいだと、あとで後悔するかもしれない、高い買い物になる可能性がある。