しつこいタオルの臭いに効く! タオルの臭いを取る方法
ふわふわに乾いたタオルは、思わず頬ずりしたくなるほど気持ち良いものです。しかし「いざ使おうとすると、タオルから洗濯物特有の臭いがした」という経験のある人も多いのではないでしょうか。ネット上では、「天日干しでしっかり乾かしたのに臭う」「乾いている時は気にならなくても、濡れると臭いが気になる」などの体験談も見られます。
タオルが臭う原因と対策について、東京・旗の台にある三共クリーニングの田村嘉浩社長に聞きました。
雑菌やカビが増える「5条件」とは
臭いの元である雑菌やカビは、空気中など日常のあらゆるところに存在し、避けることはできません。それがある一定量増殖すると臭いが発生します。雑菌やカビは生き物なので、増殖するには条件があります。不快な臭いを防ぐコツは、次の「5条件」がそろわないようにすることです。一つでも欠ければ増殖できません。
【栄養(天然繊維や汚れ)】
ほとんどのタオルは「綿製品」です。綿は天然・植物繊維のため、綿自体が菌増殖の栄養になってしまいます。臭うまでの一定量に増殖しないように、汚れ・菌を除去することが大切です。こまめに洗うことを心掛けましょう。
【温度】
菌にとっての快適な温度は、人間と同じです。低温・高温では活動できないため、高温の湯に浸すのが効果的です。
【湿度】
菌は水分がないと増殖しにくいため、脱水を強めにかけ、できるだけ早く乾かすようにしましょう。
【無風状態】
風があると乾燥しやすいほか、菌が飛んでしまうため増殖しにくくなります。乾燥機や扇風機を活用し、風通しのよい場所に干すようにしましょう。
【時間】
菌の増殖には少し時間がかかります。その間に乾燥すれば増殖はできません。できるだけ早く乾かしましょう。
しぶとい「モラクセラ菌」と赤カビ
タオルは他の衣類と異なり、水分を拭き取るのが主目的です。どんなに洗った手でも、入浴した後でも、全ての雑菌は落ちないため、タオルに付着します。濡れた状態のタオルは雑菌に快適な環境で、あっという間に繁殖して臭いの元になってしまいます。
タオルの表面はループ状に毛羽(けば)立ちしています。このループのおかげで多くの水分を抱え込むことができますが、逆に言えば乾くのにも時間がかかります。手や体を拭く時、このループに髪の毛や皮膚、皮脂、角質、汗、石けんカスなどが絡め取られ、結果的に雑菌のエサになってしまいます。雑菌は、洗濯〜乾燥で減少し、増殖を抑えられますが、濡れると再繁殖し始めるため、あっという間に臭いが戻ってきます。
雑菌の中でも厄介なのが「モラクセラ菌」です。ヒトや動物の口腔、上気道、性器の粘膜などに常にいる「常在菌」ですが、この菌が皮脂などをエサにして繁殖すると、脂肪酸の一種「4-メチル-3-ヘキセン酸」が生成され、雑巾のような悪臭を生成します。モラクセラ菌は天日干しによる紫外線消毒や乾燥に強く、普通に干しただけでは死滅しません。また、濡れるとしぶとく再繁殖するため、非常に厄介です。
雑菌による臭いのほか、特にタオルで気になるのがピンク色の汚れです。原因は「赤カビ」といわれる酵母カビで、お風呂の目地や排水溝などによく出てくるヌメッとしたカビです。一度繁殖すると通常の洗濯では落ちず、毒性は弱いもののアレルギーの原因になることがあります。さらに、赤カビは他のカビ(青・黒)の栄養になる恐れがあるほか、一定量を超えるとタオルの悪臭の原因になります。
ついてしまった臭いの殺菌処理
少しでも雑菌が残っていると水分で再繁殖するため、臭いは何度でも出てきます。一度ついてしまった臭いには、以下のような熱や洗剤を使った殺菌処理が必要不可欠です。
【重曹を使う】
なるべく漂白剤を使いたくない方は、まず重曹から始めましょう。スーパーや薬局で売っている重曹を洗剤と一緒に洗濯機に入れて回すだけです。すすぎをしっかり行うコースを選ぶのがベスト。重曹はアルカリ性のため、酸性の臭いを中和し、重曹自体が臭いを吸着する効果も期待できます。軽い臭いならば、ティースプーン5杯ほどの量で取ることができます。普段から臭いの予防に使いたい方は、洗濯の際にティースプーン3杯ほどを日常的に投入してください。
【アルコールスプレーを使う】
干す前の濡れたタオルに満遍なくアルコールスプレーを吹きかけると、臭いが軽減されます。アルコールは揮発するため、タオルを使う時には残らず、子どもにも安心です。
市販のアルコールスプレーのほか、薬局で販売している「無水エタノール」を使って、「エタノール8:水2」の割合で薄めたものを、スプレーボトルに詰め替える方法もあります。アルコールスプレーを使うと、柔軟剤などの香りも消えてしまう場合があるため、柔軟剤を使うのは完全に除菌してからの方がよいでしょう。
【熱湯消毒】
熱湯を使った消毒は、乾燥や紫外線に強いモラクセラ菌の対策にもなります。タオルは綿100%の物が多いため、熱湯に浸けても問題ないでしょう。ただし、装飾が多いものや色落ちしそうなタオル、熱で変形する恐れのある化学繊維が含まれるタオルは避けてください。
家庭用給湯器でも設定できる場合が多い、75度程度の湯を湯船などに張り、そこにタオルを入れておくと10分ほどで効果が出ます。熱湯消毒したタオルは洗濯機に入れ、普通の洗剤でしっかり洗濯してください。
ピンク色の赤カビは熱湯消毒だけでは落としきれない場合があるため、熱湯消毒による早めの対策が肝心です。小さいものや少量のタオルならば、鍋で直接煮ると強い殺菌効果が期待できますが、熱湯に浸けるため、素材の確認と取り扱いに注意しましょう。
【漂白剤で落とす】
湯に漂白剤を入れ、タオルを浸け置きする方法です。タオルの雑菌の多くは酸性のため、アルカリ性の洗剤だと効率よく除菌が可能です。粉末の酸素系漂白剤(過炭酸ナトリウム)は弱アルカリ性である上、粉末は成分が濃縮しているため、除菌効果が上がります。
まず、浸け置き前に一度、普通に洗って汚れを落としておきます。規定量の洗剤を入れ、柔軟剤は入れずに洗濯して干しましょう。浸け置きに水を使うと効果が半減してしまうため、湯を使うようにします。湯の温度は、酸素系漂白剤の効果が発揮されやすい40度以上に。タオルを浸けたら1〜2時間、お湯が冷めるまで放置し、よくすすいで外干ししてください。洗う前に、タオルの洗濯表示を確認しましょう。
臭い予防のポイントは?
頑固な臭いが解消されても、一度臭いがしたタオルは再び臭くなる可能性があります。事前の対策で臭いを予防するポイントをご紹介します。
【洗濯槽を掃除・除菌する】
タオルをどんなにきれいにしても、結局、汚れた洗濯機で洗ってしまっては再び臭くなってしまいます。洗濯槽をきれにする際にも酸素系粉末漂白剤が役立ちます。
まず、洗濯機にたっぷりの湯を入れます。空回しのため、温度は60度程度が目安。これ以上高い温度は洗濯機を傷める可能性があるため、注意が必要です。
湯10リットルに対し、粉末洗剤50グラムの割合で投入します。3分ほど空回しをして、洗濯機全体に洗剤を行き渡らせたら最低2〜3時間、可能なら一晩そのまま置きます。ドラム式の洗濯機は上側に洗剤が回らないため、時々空回しする必要があります。時間が経過したら、普通の水道水を使って洗い→すすぎ→脱水の手順を1〜2回空回しで行えば、洗濯槽の除菌は終了です。
【タオルを濡れたまま置かない】
雑菌は湿度が大好きです。除菌されたタオルでも、手や体を拭けば一発で水分と雑菌がタオルに移ります。それを濡れたまま重ねておけば、あっという間に臭くなってしまいます。
使用後のタオルはハンガーなどにかけ、洗濯前に一度乾かすつもりで干し、乾燥してから洗濯カゴに入れます。決して洗濯槽に直入れで放置してはいけません。
【乾かし方を工夫する】
洗濯が終わったら、洗濯槽に入れたままにせず、なるべくすぐ干すようにしてください。洗濯物と洗濯物の間隔を空けたり、タオルを完全に重ねて干さずに少しずらして干したりするなど、乾きが早くなるように工夫しましょう。
部屋干しする場合は、扇風機やエアコンを使って風を当てるのがよいでしょう。風呂場に干してドアを閉め、換気扇をつければ、かなり早く乾燥します。部屋干しをするとどうしても嫌な臭いがしがちなので、部屋干し用や除菌タイプの洗剤を使って洗うことをお勧めします。
【熱を上手に使う】
天日干しだけでは殺菌しきれない菌の対策に、「熱」を加えるという方法があります。
一番簡単なのは、乾燥機を使うことです。乾燥機を使った後で天日干しすれば、ダブル除菌効果が期待できます。コインランドリーの乾燥機を利用するのもお勧め。菌はしぶといのが特徴であるため、可能であれば、熱と紫外線の両方で対策をしてください。
湯(60度程度)を使った洗濯も効果があります。素材にもよりますが、タオルだけ洗濯する時に湯を使って臭い対策をするのもよいでしょう。
タオルを買い替える前に…
「中途半端な除菌では、汗や雨に濡れた時に再び悪臭が発生してしまいます。一度しみついた臭いがあまりに強力な場合は、タオル類を買い替えてしまうのも一つの手ですが、その際も洗濯槽の汚れ取りをしっかり行うなど、新しいタオルに臭いがつかないように予防・対策をすることが大切です」(田村さん)