なぜ「砂不足」が世界にとって大問題なのか?
by NegativeSpace
海に行っても山にいっても目にする「砂」はありふれたものと思いがちですが、実は世界中で「砂不足」が問題となっています。なぜ砂不足が問題となっているのか、海外ニュースメディアのThe VergeがYouTubeで解説ムービーを公開中です。
Why sand scarcity is about more than “running out” of sand - The Verge
A microscopic look at why the world is running out of sand - YouTube
一言で「砂」といっても、砂には場所の特徴を反映した信じられないほどの多様性があります。
海辺に向かう男性は……
砂浜の砂をすかさず回収。
顕微鏡で砂を観察するため、サンプルをニューヨークに送ります。
なぜこのような事を行わなければならないのかというと、ありふれたものであるように見える砂が、実は世界的に非常に重要なリソースであるため。
水を除き、人間が最も使っている素材はコンクリートです。砂はこのコンクリートの材料となります。
インド、中国、アメリカの一部などでは建設ラッシュが起こっており、コンクリートの需要はますます大きくなっています。
「砂不足」が報じられることもありますが、これは単純な問題ではありません。将来的な建設は、小さな砂にかかっていると言っても過言ではないのです。
ということで登場したのはThe Vergeのサイエンスプロデューサーである、ウィリアム・プア氏。「砂の定義は広義です。砂はさまざまな石や鉱物から作られており、その種類ではなくサイズから区別されます」
「SILT」と呼ばれるものは0.05mm以下、「GRAIN OF SAND」と呼ばれるものは0.05mmから2mm、「GRAVEL」は2mm以上のものを指します。しかし、サイズだけではなく、砂がどこから来たのか、どんな形なのか、何でできているのかも同じく重要です。
基本的にコンクリートは砂と大きな石を水やセメントと一緒に混ぜる、という方法で作られます。
そして、コンクリートに最も適していると言われるのは「川砂」です。
川砂の粒は、角が丸みを帯びていて、サイズが一貫しているので、セメントと砂が一体化されやすいとのこと。また、石英などの固い鉱物が中心で、柔らかい鉱物があまり混ざっていません。
砂製造会社「Vulcan Materials」のFrank Leithさんは、この理由について、「川砂はもともと山の上にある」と語ります。
例えば、アメリカ・カリフォルニア州のサクラメント川にある砂は、その400マイル(約640km)離れたところにあるクラマス・マウンテンズからやってきています。
雨や風などによって山が削れたものが、川へと流れ込み……
川の流れの中で、石や鉱物がぶつかり合い、互いを削り合っていきます。その中で、角の丸まった砂が生まれるわけです。この時、柔らかい鉱物は分解されてしまい、サクラメント川には固い鉱物の砂のみがたどり着きます。
川は海と繋がっているので、川砂は海にもたどり着きます。
ただし、ビーチにある砂には塩が付着しているので、コンクリートを作る時の化学反応が純粋な砂とは異なってきます。また、貝殻や海洋生物などが含まれていることもデメリットとして挙げられています。もちろんこれらを取り除くこともできますが、複雑な作業を要し、最終的なコンクリートの価格も高くなってしまいます。
これらの問題から、「人口砂」も作られていますが、人口砂は扱いが難しいとのこと。自然による数々のプロセスをへていないので、角が鋭くとがっているのです。
人工砂のサンプルを持つプアさん。
これが人工砂。
川砂と人工砂は大きく異なるものですが、どちらも輸送するには重く、かさばるという問題点があります。人工砂の輸送コストは、製造コストの2〜4倍もかかるとのこと。
そのため、砂は地産地消されることが多いそうです。あまり長い距離になると、比較的安価な人工砂を使うメリットが無くなってしまうためです。
砂の「遠くまで輸送できない」という問題は、非常に大きな問題。コンクリートを必要とする場所でコンクリートが使えなくなるからです。
このため、インドには砂を盗む「砂マフィア」が存在し……
砂漠に囲まれ川砂を持たないドバイでは、オーストラリアからの輸入の砂に頼っています。
「正しい仕事を行うには、正しい場所に正しい砂がある必要があるのです」とプアさんは語りました。