デジタル遺品の最前線! 生前相続の有無で違法? データ復旧は可能? プロが解説

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「デジタル遺品」という言葉をご存じだろうか?
デジタル遺品とは、故人のスマホやパソコン、クラウドサービスなどに残されたデジタルのデータや情報のことだ。

最近は、写真データのクラウドストレージへの保存から店頭や通販での買い物、各種支払いまで、電子決済化が進んでいる。また銀行や証券などもネットを使った取引に移行しはじめてもいる。

こうしたネットサービスは、便利な反面、本人の死後の対処が課題とされている。
NHKの受信料が、死後も請求されたといったニュースも記憶に新しい。

どのように、デジタル遺品に対処すればよいのだろうか?

「デジタル遺品セミナー&データ復旧見学会」で、いろいろとお話をうかがった。

■デジタル遺品の保存と破棄、判断はどうすれないいのか
スマホでなんでもできる時代。銀行だけでなく、株やFX、仮想通貨をネットで取引している人も多い。
ネットを利用してサービスや取引をしている人のスマホやパソコンには重要な情報が記録されている。

何も考えずに、スマホやパソコンを
・売ってしまう
・人に譲渡してしまう
・破棄してしまう
といったことがあれば、取り返しがつかないこともある。

一般社団法人デジタル遺品研究会ルクシー代表理事古田雄介氏
「FXや仮想通貨をやっている人が亡くなったら、気を付けたほうがよいです。オンラインの保険は受取人が申請しないと動きださないというのもあったりするので、確認する必要があります。」

亡くなられてから3カ月くらい経ったあと、遺品整理となるのが一般的だ。
デジタル遺品は、確認がとれるまで、とっておいたほうがよいそうだ。

理由は、スマホやパソコンには、
・ネット銀行
・証券取引
・仮想通貨
などの個人情報が入っている場合もあるからだ。

万が一、この情報が
・他人に漏えいしてしまう
・情報が消失してしまう
こうなると、こうしたサービスを変更、終了させることができなくなり、とんでもないことになる。

加えて、デジタル遺品を整理するうえで注意しなければならないのは「責任問題」だという。

たとえば、相続人の母親が亡くなった場合、
父親はパソコンがよくわからないので、パソコンに詳しい甥に依頼したとしよう。
パソコンを調べていたら、故人(母親)のプライバシーに関わる写真やデータを見つけたが、
・父親に公開すべきか
・処分すべきか
故人をよく知らない甥には判断ができない。
独断で判断して対処すれば、責任を追及され、トラブルになることもある。


古田氏によれば、
・判断自体は相続人が請け負う
・作業自体は詳しい人にお願いをする
これがよい方法だという。

実際に作業を行う場合、相続人の立ち会いをして判断する必要があるのだという。



一般社団法人デジタル遺品研究会ルクシー代表理事古田雄介氏


■デジタル遺品は、相続することが大事、そのために必要なこと
デジタル就活とは、デジタル遺品に対する死後の取り扱いについて考える活動だ。
「相続で苦しめられる人を0に!」を目的として、同協会が設立された。

デジタル遺品は一般的に、
・オフラインデータ
・オンラインデータ
の2種類に大別される。

まずオフラインデータだが、スマホやパソコンに存在するデータだ。
これらは古田氏の話では「デジタル遺品」となるが、日本デジタル終活協会では「普通の遺品」として扱っている。

日本デジタル終活協会代表理事弁護士・公認会計士伊勢田篤史氏
「オフラインデータには、所有権が認められないのが大きなポイントになってきます。所有権は物(ぶつ)に対する権利です。物は民法条で有体物。簡単にいえば、形あるものとご理解いただければと思います。」

オフラインデータは「有体物」ではないため、直接的に相続することができない。
しかし、スマホやパソコンのデジタル機器は「所有権」が認められるので、相続を通じてオフラインデータを処分することはできるというわけだ。

結論として、
オフラインデータの相続は、データが保管されている「デジタル機器」の相続の有無が判断の分かれ目となる。

オフラインデータのスムーズな相続方法は、
「デジタル機器」を共有物にすることなく、特定の人の単独所有で引き継ぐことが重要だ。

単独所有にするための方法は、
・生前贈与
・遺言書
があるという。

こうした相続対策しないと、「共有」となってしまう。この共有には大きなデメリットがある。
民法251条「共有物の変更」で、
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
つまり、共有資格のある全員の合意がなければ、
・変更
・売却
・破壊
することができない。

また共有物状態の解消は、遺産分割協議となる。
・戸籍謄本による相続人調査
・全員の合意、印鑑証明書
これらが必要となり、かなりの手間と時間を要する。


一方、オンラインデータは、インターネット・サービスのアカウントのことだ。
・金融機関
・クラウドサービス
・SNS
・有料サービス
・メディアコンテンツ・サービス
などがあげられる。

これらをスムーズに相続するためには、どうすればよいのだろうか?

金融機関は、窓口に連絡することになる。
クラウドサービスは専属性に有するサービスなので、原則として本人以外は契約違反となる。
あらかじめ法人契約しておいたほうがいい。

SNSは一身専属性を有するサービスなので、原則として本人以外は契約違反となる。

有料サービスは、決済がクレジットであることが多いので、デジタル就活との相性がよい。
たとえば、
クレジットカードを止めることで、サービスが止まる可能性がある。
一身専属性でない場合には、契約書をよく確認しておこう。

メディアコンテンツ・サービスは、一身専属性でない場合もあるので、利用契約をよく確認しておくことが重要だ。

そのほかとしては、仮想通貨(暗号通貨)やFXがある。取引をしている人が亡くなった場合だ。
仮想通貨やFXの場合には、マイナスの遺産を家族に追わせてしまう危険性がある。

日本デジタル終活協会代表理事弁護士・公認会計士伊勢田篤史氏
「FX取引のようなリスクの高い取引をしているかたは、デジタル就活で。たとえば、何々証券会社でリスクの高い取引をしているから早く決済してねとか、お伝えしましょう。とご案内しています。」


日本デジタル終活協会代表理事伊勢田篤史氏


■スマホに残した遺言を復旧
最後にデジタルデータソリューション株式会社取締役上谷宗久氏は、データ復旧の現場から見たデジタル遺品について解説された。同社はデータ復旧を専門としている会社であり、「デジタル遺品サービス」を2017年9月よりスタートさせている。

スマホやパソコンなどのデジタル機器には、セキュリティーのために、パスワードやバイオ認証などで、ロックされている。故人があらかいじめパスワードを知らせていなかった場合、デジタル機器の中身を見ることができない。

そこで同社の「デジタル遺品サービス」の出番というわけだ。

事例としては、裁判で使用する可能性があるデータの復旧があるそうだ。
生前に母親がスマホに録画した遺言を取り出したいというものだ。
動画の復旧は見事に成功して、遺産トラブルの解消となった。

そのほかの事例としては、
亡くなった夫の仮想通貨の取引の情報を故人のスマホを調べて相続したいというものもあったという。
これもAndroidスマホのパスロック解除に成功し依頼を達成した。

デジタルデータソリューション株式会社取締役上谷宗久氏
「遺品=50代以降かなと思うんですけど、実際は若いかたがけっこう多いですね。というのは、50代以降で貴重なデータが端末にしか残っていないというかたはあまりいないんですよ。必ず何かしらに残っています。ただ年配者の中には、こういったサービスがあることを知らない人も多いので、認知度をもっと上げなければいけないと思っています。」


デジタルデータソリューション株式会社取締役上谷宗久氏


■48時間でデータを普及! データ復旧見学会
データ復旧見学会では、デジタルデータソリューション株式会社のデータ復旧の現場を見せていただいた。
ほとんどの場合、48時間以内に解決できるそう。

お客さんの大事なデータが入った電子機器を預かるため、セキュリティーゲートがあり、金属探知機で入念に体をチェックしなければ、作業場に入ることができない。




作業場では、すでに製造中止になったハードディスク(HDD)のストックが大量にあり、お客さんの壊れたHDDを修理することができる。




SDメモリーの復旧もサポートしており、技術者が1本1本配線する場合もあるという。




手術室同等のクリーンルームも完備されている。
防塵服・静電気防止服着用を義務付け、HDDに致命的な塵や埃を一切寄せ付けない。




デジタル就活は、本人だけでなく家族にとっても早めに準備をしておいたほうがよさそうだ。


ITライフハック 関口哲司