「年収700万円以上で総労働時間が少ない会社」トップ10

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働く時間が少なくても高い給料を出せる企業はどこか (写真:suntaka / PIXTA)

労働時間が少なくて、給料が高い会社はどんな会社なのか――。

国会で働き方改革法案が可決に向けて終盤を迎えている。この動きにあわせて、大手企業でも効率性の高い働き方で残業を減らし、付加価値を高めようという動きが広まっている。働く時間が減っても、効率化によって利益が増え、最終的に給料もアップするのであれば、最高の職場といえるだろう。


では、​現在の上場企業で、総労働時間が少なく平均年収が高い企業は、どのくらいあるのか。

『CSR企業総覧(雇用・人材活用編)』では、2018年版から、各企業の残業を含む総労働時間を集計している。

1日の労働時間や週休2日制の有無によって、トータルの労働時間が変わってくるため、残業時間の数字だけでは、実際に働いている時間は見えてこない。そこで、「総労働時間」を調査することで、働く時間の実態を把握できるようにしている。

このデータを使って、平均年収が700万円以上の企業を対象に、年間総労働時間が少ない会社をランキングした(全体のランキングは『CSR企業白書』2018年版に掲載)。

1位は年1680時間労働で平均年収841万円!

ランキング1位はキヤノンマーケティングジャパンの年間1680.0時間だ。平均年収は841.0万円。労働時間と働き方改革に関する管理職研修や、部門ごとの業務プロセス改革を実施している。ノー残業デー、時間外労働の実績を社内で共有し、全社的な労働時間削減に取り組む。

2位はアシックス。1684.0時間で年収は700.8万円だった。フレックスタイム制度、在宅勤務制度の拡充による柔軟な働き方の促進、サマータイムやノー残業デー、定時後の社内スポーツイベントに合わせた早期退社、プレミアムフライデーなどを活用した、計画的な業務遂行を推奨。社員の自律的な働き方を促し、ボトムアップによる「働き方改革」を進めている。この2社が年間総労働時間1700時間を下回った。

3位は協和発酵キリンで1716.6時間(平均年収832.9万円)。会社全体での働き方改革の方針を明確に示し、各部内の目標に長時間労働の是正に関する数値目標を据えて、取り組みを実施している。

4位はキヤノンの1721.0時間(763.2万円)。ノー残業デーの設定や働き方改革の推進などを展開。フレックスタイム制度や半日・時間単位の有給休暇制度などで労働時間削減を進めている。

5位は長谷川香料の1728.6時間(704.6万円)。毎週水曜日をノー残業デーとし、終業時刻後の早めの帰宅勧奨を行っている。

以下、6位塩野義製薬1729.0時間(927.6万円)、7位日本オラクル1730.0時間(1027.1万円)、8位新電元工業1746.0時間(748.3万円)、9位相鉄ホールディングス1747.9時間(841.9万円)、10位コニカミノルタ1759.3時間(752.9万円)と続く。

1800時間を下回るのは、18位東洋インキSCホールディングス(1799.4時間)まで。1900時間を下回るのは、79位東ソー(1899.0時間)までと、一定以上の年収で労働時間の少ない会社は思いのほか多かった。

年収700万円以上で労働時間1900時間以下は79社

トップ100の中で、もっとも平均年収が高いのは80位の丸紅(1900.1時間)で、平均年収は1221.3万円となっている。

なお、年間総労働時間が開示されている552社全体の平均は、1987.7時間。業種別では建設業2151.3時間(32社)、サービス業2137.1時間(29社)、輸送用機器2103.6時間(35社)などが平均を上回っていた。

一方、医薬品1886.7時間(19社)、その他金融業1887.2時間(12社)、陸運業1917.2時間(11社)、卸売業1922.6時間(40社)などが平均を下回る業種だ。

2018年度の土日祝日は118日ある。さらに、特別休暇や有給休暇などが20日あったとすると、年間休日は138日。勤務日は365日-138日=227日だ。毎日8時間働くとすると、227日×8時間=1816時間が年間総労働時間となる。

労働組合や企業が目標として掲げることの多い「年間総労働時間1800時間」というレベルは、計算すると相当恵まれている環境だとわかる。ちなみに毎日1時間残業したとすると、ここに227時間がプラスされ、総労働時間は2043時間となる。ひょっとするとこのくらいであれば、「どうってことない」と思う人もいるかもしれない。

このように総労働時間は考え方も多様で、「適切な数値」を示すのは難しい。CSR評価などでの妥当な数値設定も正直悩ましい。まずは、フルタイム勤務の正社員の平均値やランキングを毎年ウォッチしていき、適正な時間を探っていくことがしばらく必要かもしれない。

就活などでデータを使って企業評価をする場合も、その会社はなぜ従業員が短い労働時間でも経営できているのかを、考えるとよい。そうした背景を分析することで、企業の強みもわかり、企業研究はより進むだろう。