有名パティシエが考案、介護の「食の悩み」に対応するスイーツカフェとは
JR御茶ノ水駅から徒歩約7分。ガラス張りのおしゃれな店内が印象的なカフェスペースの中をのぞくと、介護食や口腔ケアグッズがズラリと並ぶ。一体、ここは!?
実は、この『Kamulier（カムリエ）』というお店、介護にまつわる“食”の悩みをアドバイスするコンセプトショップ兼カフェ。もちろん、普通のカフェとして利用することも可能だけど、一般的なメニューのほかに“嚥下（えんげ）食スイーツ”を取りそろえているなど、高齢化社会に向かう日本の新たな食を提示するお店なんです！
「嚥下機能が弱った方や噛む力が低下してきた高齢者にも飲み込みやすく、むせずに食べやすいスイーツを提供したいとの思いから、世界的パティシエの辻口博啓さんにご協力いただき、4年前にオープンしました」
と話すのは、店長の志水香代さん。“嚥下食スイーツ”という言葉だけ耳にすると、どこか病院食チックで“美味しくなさそう”というイメージを抱く人もいるかもしれない。しかし、そのお味は辻口氏がレシピを考案したとあって有名スイーツ店に引けを取らないほど美味。
通常、ケーキであればスポンジ部分にパサパサ感があったり、クリームが濃厚で、飲み物がなければ飲み込むことが難しい場合も少なくないが、カムリエで提供する“嚥下食スイーツ”は、嚥下機能が弱い人でも、健康な人でも同じように美味しく楽しめるように考案されているため、驚くほどになめらか（しかも重くない）！
「代替食材を利用するのではなく、一般の方が召し上がる小麦や生クリームをそのまま使用しています。工程や作り方を工夫することで、カムリエ特有のなめらかさや飲み込みやすさを実現しました。特にスポンジの部分に特徴があります」（志水さん、以下同）
オープン当初、4種類からスタートしたスイーツは、季節限定スイーツや“みたらしケーキ”といった和スイーツなど約20種類にまで増加。バラエティーに富んだ品々は、誕生会や敬老会のお祝いに介護施設などからの注文が多く寄せられているという。
「誕生日の主役なのに、その人の飲み込む力が弱いとプリンしか食べられないという状況も多いと耳にします。みなさん、いくつになってもケーキは食べたいんですよね。カムリエのケーキによって、みんなでケーキを食べながらお祝いができました、なんて聞くとうれしくなります（笑）」
介護と食にまつわる料理教室やイベントも
もともとカムリエは、歯科医療機器のトップメーカーである株式会社ジーシーによってプロデュースされた店舗。そのため店内には、歯ブラシやデンタルフロスが並び、歯科衛生士まで常駐するという徹底ぶりだ。
「歯科衛生士、管理栄養士の資格をもったスタッフもいますので、口腔に関する相談だけでなく介護食のお悩みなどにも対応しています。また、噛む力を中心に、口を動かすことで脳は活性化するといわれています。口腔ケアは歯の予防だけではなく、認知症予防の対策としても欠かせません」
歯科医療機器の最大手がバックアップするからこそ、カムリエではトータル的な歯にまつわるサポートが可能となっている。“歯が弱くなってきたけど栄養価の高いものを食べたい” “どの歯ブラシを購入していいかわからない”などの多岐にわたる悩みを、このお店だけで解消できてしまうのは、なんとも心強い限りだ。
「介護など同じ悩みを抱えた人が集まって、介護食に関する意見交換を行う会や、介護食の料理教室なども開催しています。料理教室はカムリエの店内で行い、一般家庭にある普通の調理器具を使ってスーパーで購入できる食材で作ります。HPや電話でもお問い合わせ可能ですから、気軽にご相談ください」
2025年には、3人に1人が65歳以上となる日本。高齢化社会をただ待つのではなく、たくさんのヒントを提供するカムリエのようなお店を知れば、来るべきときへの備え、そして高齢と向き合ううえでの楽しみ方も見えてくるに違いない。
「カムリエのスイーツは全国発送も可能です。デコレーションやケーキのカット数などご対応いたしますので、きっと満足していただけると思います」
“美味しいケーキを食べたい”、そんな高齢者の“歯”がゆい思いまで解消してしまうスイーツ、ぜひともご賞味あれ！
＜店舗情報＞
Kamulier（カムリエ）
東京都文京区本郷3-2-15 新興ビル1階／11:00〜19:00、日・祝定休
http://www.kamulier-gc.jp
※10月中旬からは、インターネットでの受注が可能に。
介護食パーティー『ケア・レストランvol.3』が開催！／11月18日（土）13：30〜16：00／介護に関わる多職種の関係者が一堂に会するイベント。カムリエのケーキだけではなく、介護食とパーティーメニューのコラボ料理など、新しい介護食を体験したい方はぜひ！
（取材・文／我妻アヅ子）
