今季初優勝のイ・ボミ、スイングの輝きを取り戻した(撮影:米山聡明)

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唯一の神奈川県でのトーナメントとなった「CAT Ladies」はイ・ボミ(韓国)の今季初勝利で幕を閉じた。今シーズンは序盤から不振に喘いだ昨年の賞金女王は、どこが良くなって勝つことができたのか。上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏が深層に迫る。
【スイング解説】イ・ボミはよりスキの無いスイングに!
■らしさを取り戻したイ・ボミ 打った後の仕草が以前のものに!
憎たらしいまでに強かったボミが戻ってきた。首位タイで迎えた最終日、同組の大山志保がスタートから3連続バーディ、同じく同組のペ・ヒギョン(韓国)が連続バーディと、序盤から首位を引きずり降ろされる展開となった。だが、冷静に攻めどころを待って6番からの4連続バーディで一気に捲ると、後半9ホールはすべてパーでまとめて勝負あり。大山が「スキが全くなかった。良い時のボミちゃんだった」と脱帽する完璧な勝利だった。
「ようやくという感じ。やっとボミらしいゴルフでしたね。2位に3打差をつけてハーフターンを迎えたときのボミの顔は、今季の前半戦とは違う、“さぁバックナイン、負けられないぞ”といった気合いに満ちた表情でした。また、得意コースで勝つというのはボミの真骨頂。去年同様にアウトコースで伸ばして、ボギーを叩かない。さすがのゴルフ、という感じでした」
“ボギーを叩かない”というらしさを取り戻したのは、樋口久子からの「“バックスイングで右足に体重を乗せて、回ったら左に体重を乗せきる”とシンプルに考えて打つ」というアドバイスが大きかった。辻村氏も「すごくいいアドバイス。一理も二理もある」と続ける。
「ボミさんはシーズン序盤、クラブの入り方など上半身の動きを意識していたため、余計な力が入っていました。去年までの力が上手く抜けて、スパンとスイングスピードが上がりながらボールを捉えていくのができていなかった。それが樋口さんからの助言もあって、しっかりと下半身を使ったスイングができてきました。だから、今季よく見たタイミングがずれて右手を離すシーンがかなり減りました。意識の問題の部分ですし、本当にちょっとのことなのですが、確実にスイングが変わっていました。ヘッドスピードで言えば1は上がったでしょう。まだ完ぺきとは言えませんが、かなり復調していることは間違いない」
スイングが定まったことでプレー中の仕草も変わった。「過去2度の女王をとっていた時のボミはミスショットしてもターフの確認をしてヘッドの入り方、向きの確認だけだったが 、今シーズンは打ち終わった後にスイングチェックする場面が多かった。だけど、そういった仕草は今大会では見られなかった。そういうのはやっぱり練習場でするもの。コースで“スイング”ではなく“スコア”と戦えるようになっていました」。スイングをシンプルに考えられるようになったことで、スコア、コースへと対峙できるようになっていたことも今回の勝因であることに疑いの余地はない。
ここでアマチュアにワンポイントアドバイス。「それぞれのゴルファーに自分の理想的なターフの削れ方がある。ミスショットの原因はターフ跡が教えてくれる。調子の良いときのターフ跡を記憶しておくのも、不調になったときに自分の調子を取り戻すひとつの方法ですよ」
■菊地絵理香は“打つ前の工夫”で不調のパターが上向きに
一方で2位に敗れた菊地絵理香。今季3戦目の「Tポイントレディス」で優勝したが、その後は怪我もあって成績が伸びず。特に怪我が落ち着いた後のパターの大不振が原因だった。菊地曰く「70cmが決められない」という状態では上位に来るのは難しかった。それが、CAT-では打つ前の工夫で改善が見られたという。
「菊地さんは3日間通じてパッティングで打つまでの間合いが短くなっていました。これが効果的だったように思います。短いパターで悩んでいる人は気づかないうちに、色々考えて思っている以上に間合いが長くなってしまうもの。長くなるほど最初のヘッドが上がらなくなる悪循環に陥るのです。“迷う前に”ではないが、今回の工夫は功を奏したのではないでしょうか。これで万事解決、と言うわけではないですが、何かを掴んだと思います」
■難コース小樽CCはメジャーの前哨戦にうってつけ
そのボミと菊地を「今週見たかった」と語る辻村氏(2人はニトリレディス欠場)。理由は今週の試合会場である小樽カントリークラブだ。「毎年グリーンが仕上がっていて、コース全体の難易度が高い。月曜日の練習ラウンドの時点ですでに13フィートが出ていました。そして4日間大会です。とてもタフな1週間になるでしょう。メジャーではないが、難しいセッティングに挑んでいくという点に関してはシーズンでも特別な大会の1つ。復調した2人が小樽でどうなるかは見てみたかったですね。2週間後の日本女子プロ選手権に向けての前哨戦の意味合いが強い試合。ボミさん、菊地さん以外にとっても大事な大会であることは間違いありません」。
解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。コーチ転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子らを指導。上田の出場試合に帯同、様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。
<ゴルフ情報ALBA.Net>

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