「蚊」「虹」「蛇」など数多ある虫偏の漢字。昆虫の名ならば納得いきますが、なぜ虫でもないものに虫編が使われているのでしょうか。今回の無料メルマガ『1日1粒!「幸せのタネ」』では著者の須田將昭さんが、人に話したくなる昆虫名を表す漢字の由来を紹介するとともに、「なぜこの名に虫偏?」という疑問にも答えています。

虫のつく漢字あれこれ

以前のメルマガで虫の名前の面白いところをご紹介しましたが、「虫」が入っている漢字もなかなか興味深いものがあります。

たとえば「蚊(か)」。これは「虫偏」に「文(ブン)」がついています。「虫」の部分が「虫だよ」という意味(形)を表し、「文」が音(声)を表している形声文字です。この読み方自体は「ブーン」という羽音からきているようです。

もう少し羽音が大きくなって「ボーウ」という感じになると「亡」がくっついて「虻(あぶ)」になります。なかなかうまくできています。

他に、虫偏に関する漢字は「蜂(はち)」や「蟻(あり)」などいろいろありますね。不思議なのは、カエルやヘビも「蛙」「蛇」と虫偏です。え? なんで? となりませんか?

実は「虫」という字は「ヘビ」の形からきたもので、意味としてはマムシでした。ですからその仲間、爬虫類を表すのに「虫偏」を使うのは、こちらの方が妥当なのです。他に蜥蜴(トカゲ)などにも虫偏がありますね。

「虹(にじ)」にも虫偏がありますが、天をまたぐ龍のような形をしたもの…と想像していくと、つながりが見えてきます。「蛸(たこ)」も「魚編」じゃなくて虫偏になっているのも、うねうね、くねくねしたところが爬虫類の仲間に見えたのでしょうね。

では、「蚊」や「虻」など、いわゆる「昆虫」に使われている「虫」はなんでしょう? こちらは,本来は「蟲」という文字が使われていました。蛆虫みたいなのがわさわさ湧いているようすを…、すみません、朝から思い浮かべてもらうのは恐縮なのですが、そのような感じです。

『易経』には「山風蠱(さんぷうこ)」という卦があります。これは物が腐敗したことを意味する卦ですが、まさに皿の上の物が腐敗して蟲が湧いている様子を「蠱」という一字で表しています。「蟲」がやがて略されて「虫」とだけ書かれるようになったので、「蛇」や「蛙」と「蚊」や「虻」が同じようなグループになってしまったのです。

魚編の漢字は良くお寿司屋さんの大きなお湯のみに書かれていることもあって、興味を持つ方も多いと思いますが、虫偏の漢字にもぜひ興味を持ってくだされば…。あまり好まれないかな…。

『易経』では、他に「水雷屯」という卦があります。これは春になって芽が出ようとしつつも、なかなか頭を出せないで苦労している、いわば「産みの苦しみ」を表しています。

春になって出ようとする…、蠢くという漢字がありますね。「うごめく」と読みますが、下に虫が二つ並んでいます。こちらは一般的に「昆虫」を表しています。春の下に「蟲」じゃないところがポイントですね。「蟲」が出てこようとするのは春じゃない。

虫がひとつかふたつかみっつか…。意味がそれぞれ違うのが面白いですね。

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出典元:まぐまぐニュース!