<新刊レビュー>辛口フランスガイド、”データ削除”の物語、在宅死を叶える医師

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めったに笑わない理由とは? フランスあるあるが満載のエッセイ

■『フランス人 この奇妙な人たち』
(ポリー・プラット=著 1800円+税 CCCメディアハウス)

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「パリ症候群」という言葉をご存じですか。フランスに旅行した日本人女性の多くがかかるといわれ、日本からフランスに行く前に抱いていた理想的なパリのイメージと現実が異なり、落差でうつのような状態となるカルチャーショックの一種。実はこれ、日本人だけではありません。フランス人独自の行動や考え方には他の国の人間も戸惑っているようで……。

 本書は、フランスで異文化セミナーを主催していたアメリカ人女性によるフランス生活を楽しむための辛口の「フランス人ガイド」。カフェのウエーターは高飛車、スーパーのレジは不愛想、近所の人は不親切、銀行では延々と待たされ、列に割り込み、ミスを認めない。これらフランス人あるあるに隠された理由を解き明かし、うまく付き合う方法を伝授するのが本書。旅行前に読むには最適ですし、人間観察本としてもおもしろいです。

(文/ガンガーラ田津美)

デジタル・デバイスの中、死者が残した秘めたる思い、最後の願いとは?

■『dele』
(本多孝好=著 1600円+税 KADOKAWA)

『dele』(ディーリー)とは、校正用語で「削除」の意味。そんな意味深な社名を持つ「dele.LIFE」は、誰にも知られたくないデータを、持ち主の死後、スマホなどのデジタル・デバイスから削除するのを業務としています。死者が決して残せないと考えたデータの中身は、詐欺の証拠、異性の写真、そして隠し金。しかしそこには、やるせないばかりの人生模様が隠されていて……。

 生きることそのものが作り出す澱みや小さなきらめきといった側面に迫るのは、「dele.LIFE」所長の坂上圭司と、新入りの元フリーター・真柴祐太郎。発想がどこか冷たくデジタルな圭司と、つらい記憶を持つアナログな性格の祐太郎、両極端に設定した性格描写も読ませます。

 デジタル・データという極めて今日的なアイテムを素材にしつつ、人生の切なさと悲しみを描く、小説の王道をいく1冊です。

(文/千羽ひとみ)

夢のまた夢だと思っていた“在宅死”それを全力で叶える先生がいた

■『看取りのお医者さん』
(CBCラジオ=原案 ひぐらしカンナ=漫画 1200円+税 KADOKAWA)

 この本を読んで、今は亡き祖母のことを思い出しました。晩年、入院生活を送り、常日ごろ「家に帰りたい」と言っていた祖母。結局その願いを叶えてあげることができず、病院で亡くなりました。それは「死」そのものの悲しみよりも、ずっと悲しい記憶となって、今もどこかで私たち家族を苦しめている気がします。

 そんな“後悔”を絶対にさせない頼もしい先生、それが人生の最期を“わが家”で迎えたいという人たちのために奮闘する訪問医の杉本由佳先生です。先生は、患者さんはもちろん、その家族には“やりきった”と思えるサポートができるように優しく、ときには厳しく指導し寄り添います。この本には、先生が見届けた5つの別れについて描かれており、「こんな幸せなお別れの仕方があるんだ」と正直驚かされました。

 幸せな最期は涙ではなく、笑顔を生む。それは決してキレイごとではなく、真実なんだなと思いました。こんな現代だからこそ、手にとって読んでみてほしい1冊です。

(文/週刊女性編集部・おむすび)