“なりませぬ”でブレイクした峯村リエ、新たな『姑 (ヒール) 女優』が演じたい役とは
昨年のNHK大河ドラマ『真田丸』で、“なりませぬ”の決めゼリフと“ヒール”なお局キャラで注目された女優の峯村リエ(53)。現在は、同局土曜時代ドラマ『悦ちゃん』(土曜夜6時5分〜)で、明治生まれの厳格な女性役がハマっている。舞台女優としてスタートしたキャリアや最近の映像での活躍ぶり、アラフィフ女優の素顔にも迫ります。
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「“浅はかさ”が、(『真田丸』での)大蔵卿局(おおくらきょうのつぼね)と共通していると思います。でも、それが人間っぽいし、愛すべきところじゃないでしょうか」
こう語るのは、峯村リエ。放送中のNHK土曜時代ドラマ『悦ちゃん』に、主演のユースケ・サンタマリア扮する碌太郎(ろくたろう)の姉・鶴代役で出演している。“男やもめ”の弟を叱咤激励(しったげきれい)する一方で、財閥令嬢のカオル(石田ニコル)と結婚させて、自分の利益にしようと企む一面も。
ドラマは、獅子文六の原作に現代風なアレンジを加えて、昭和初期の東京を舞台にした、人情ラブコメディー。
「すごくハラハラする事件や、手に汗握る展開もないけど、とても懐かしくて、最近のドラマにはない新鮮さを感じています。(演じていても)とても面白くて、引き込まれる作品です」
ユースケとは、ミュージカルの舞台で一緒になって以来、10数年ぶりに共演する。
「本気なのか、冗談なのかわからないところが面白く、こちらの気持ちを楽にさせてくれる方です。ユースケさんの人柄もあって、収録現場も楽しいです」
鶴代の役作りでは、髪型と着物姿の扮装が、手助けになっているそうだが、背筋が伸びた着物姿は、明治生まれの気骨ある女性を彷彿(ほうふつ)とさせる。
「明治生まれで、厳格な感じだった祖母の写真が浮かびました。富士額じゃない、まっすぐな生え際は、祖母に似ています(笑)」
『真田丸』の“なりませぬ”で注目
峯村といえば、昨年のNHK大河ドラマ『真田丸』での、茶々の乳母・大蔵卿局役が評判に。“なりませぬ”のセリフとともにヒールっぷりが注目され、バラエティー番組の出演依頼も増えた。
「いまでも、(スタッフには)必ず“なりませぬ”を言ってください、と言われますね。抵抗? 楽しんで言っちゃいます(笑)」
大河以外にもNHK朝ドラ『まれ』での、パティシエ志望の娘を強引に連れ戻す美容師の母親、深夜ドラマ『民王』(テレビ朝日)では、総理夫人の怖い妻ぶりなど、印象的で存在感ある役どころを演じている。
「偉そうなことは言えませんが、世の中は、悪役を待っていたんだ、と思いました」
個性的で強烈なキャラクターの熟年女性がハマリ役といえば、6月に亡くなった野際陽子さんや高畑淳子がいるが、先輩たちに続く“姑(しゅうとめ)女優”として、さらに活躍の場は広がるのでは?
「そうだとしたら、うれしいです。野際さんも高畑さんも個人的に大好きな女優さんです。共演した経験はないですが、お芝居が上手ですし、同じラインに立たせていただけるのなら、こんなにうれしいことはないです」
母の影響で女優に。映像は憧れの世界
最近は、映像での活躍が目立つが、原点は舞台女優。芝居好きの母親の影響を受けた。
「小さいころから新劇や小劇団の芝居を見に連れていかれてました。『はなれ瞽女(ごぜ)おりん』を見たときには、小学校1年生ぐらいだったので、意味がわからず、男性の局部を切るシーンに、“なんで?”と大きな声で聞いたら、ものすごく怒られたことを覚えています(笑)」
高校卒業後、俳優養成所『五月舎』の演出部に入所した。
「養成所に入るときは、(役者として)前に出ることはまったく考えていなかったので、演出部に入りました。ただ、演出部も俳優志望の人と同じ授業を受けないといけなかったので、発声法やリズム感といった勉強をしました」
その後、養成所の俳優部にいた、犬山イヌコがケラリーノ・サンドロヴィッチと劇団を立ち上げる際に、役者として参加を誘われ、劇団女優として歩むことになった。
初舞台で、観客の盛り上がりや拍手が快感となり、舞台の楽しさにハマったという。
その一方で、こんな思いも抱いていた。
「いつかはちゃんと働くんだろうな、と思っていたんです。ある日、事務員の求人広告を見たら、28歳以下とか、30歳以下の年齢制限を自分が超えちゃっていたんです。そこから、役者に本腰を入れようと思い直しました」
劇団の活動と並行しながら、20代から堤幸彦監督作品に出演するなど、映像の仕事もしていた。
「映像は、憧れの世界で、小劇場の人間が、足を踏み入れてはいけないと思っていました。それが、“大河”や“民王”をやってから、意識が変わり、演じることはみんな一緒だと思えるようになりました。
映像は、演技に、音が加わり、編集して作品になっている。みんなの力が結集して、できあがったものを見るときは、ホントに楽しみです」
酒豪、実は酒嫌い!? 篤姫の晩年役を熱望
ドラマ収録に追われ、忙しいスケジュールでの健康法は?
「なによりも睡眠です。7時間睡眠はふつう。5時間は、ぎりぎり頑張れるかな。それ以下だとつらくなります」
バラエティー番組では“酒豪”ぶりをのぞかせていたが、飲んで乱れることはないそう。
「飲めば飲むほど、シャンとなっちゃうので、記憶をなくしたことがないです。誰かが先に酔っぱらうと、酔えなくなりますね。家で飲むことはしないので、私は、お酒があまり好きじゃないのかな?」
今後、演じてみたい役に“天璋院篤姫”の晩年をあげた。大河ドラマにもなった篤姫は、江戸城の無血開城に尽力したことで知られる。
「江戸幕府がなくなってから千駄ヶ谷に住んで、49歳で亡くなるまで自由を謳歌(おうか)していたそうです。晩年に初めて、自由な生活をして、楽しんだということを聞いて、面白いな、と思いました。
当時の女性としては、ちょっと大柄だったことや、写真を見たら顔が、ちょっと怖い感じだったので、シンパシーを感じています。
制約の多かった時代の女性たちが、どう生きてきたのか、興味があり、演じてみたいです」
大河、朝ドラ、土曜時代ドラマに出演と貢献する実力派女優の願い──NHKさん、叶えてあげてはいかがでしょう……。
174センチと長身。高校生まで水泳を続け、自由形選手で東京都大会に出場。高校時代に女子プロレスのビューティ・ペアの試合を観戦した際に、スカウトされた経験が。
「男の人に“君、いい身体しているね”と声をかけられ、スカウトされそうになったけど、“私、闘争心がないんです”と答えたら、“ダメだな”とあきらめてくれました。いまも格闘技は見るのが好きで、WWEとか見ています」
<プロフィール>
みねむら・りえ/1964年3月24日生まれ。東京都出身。劇団『ナイロン100℃』に在籍。8月4日(金)よりBunkamuraシアターコクーンでの『プレイヤー』に出演