脚本家の渡辺千穂さんが声を大にして言いたい「夫を惚れ直すチャンス」とは
現在放送中の人気ドラマ『ウチの夫は仕事ができない』(日本テレビ系)の脚本家・渡辺千穂さんの新刊エッセイ『あなたの夫は素晴らしい人だと叫びたくなる』(マガジンハウス)が話題に。フリーアナウンサーの羽鳥慎一さんを夫にもち、43歳で娘を出産。
独身時代にたくさん見てきたいろいろな夫婦たち、そして自身の結婚・出産で、見えた、感じた、夫婦の形とは?「夫を惚れ直すチャンス!」と「今を楽しむ!」を聞いてみた。
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渡辺千穂と申します。脚本家として働いています。ちょうど現在オンエア中の『ウチの夫は仕事ができない』というドラマを書いています。この本のタイトルとちょっと被っていますが、たまたまの『夫』つながりです。
私の実体験から生まれた
こちらの本には、私の両親も含め、20代30代の独身時代の私が見てきたいろんな夫婦の形、41歳で夫と結婚してから見えてきたこと、43歳で子供を産んで知ったことなどを書きました。
同年代の友達には、もう子供が大学生だとか社会人になったとか、早い人だと子育てがほぼ終わったという人もいます。現在1歳の娘のお友達のママは、みんな私より若いので、結婚してまだ数年という人も多く、私の周りにはバラエティに富んだたくさんのご夫婦がいます。
出会った頃の輝いていた時間が、そのまま続いているような素敵なご夫婦ももちろんいますが、夫婦生活が長くなるにつれ、大抵は、色褪せてしまうようです。そんな夫婦関係を、また新たに輝く色に塗り直せるような本になれば素敵だなという思いで、この本を書きました。
『あなたの夫は素晴らしい人だと叫びたくなる』というタイトルは、私の実体験から生まれました。本当に心から、そう叫びたくなる時があるのです!
子供を産んで、それまでは全く縁のなかった世の中の不便と親切を知りました。当然そこにあるはずだと思っていた駅のエレベーターがなく、ベビーカーのハンドルを握ったまま、途方に暮れていた時。雨の中、赤ちゃんを抱えて大通りで、タクシー待ちをしている時。そこに颯爽(さっそう)と現れて、何食わぬ顔で助けてくれる人たちがいます。
パッと力を貸してくれ、サッと去って行くその人たちは、きっと、みんな誰かの夫なのです。
もしかしたら、何度言っても家事を手伝ってくれない、あなたの夫かもしれません。「ご飯がいらないなら電話して」と何度言っても電話してこない、あなたの夫かもしれません。昨夜、酔っ払ってソファーで寝てしまった、あなたの夫かもしれません。
夫についても書いています
だけど私や、きっと同じぐらいの赤ちゃんを持つママたちは、どこかでそんな誰かの夫に助けられています。私は、たくさんの親切に触れ、助けられ、その優しさに、何度涙を流したことかわかりません。なので、この本を読んだ日は、夫に優しくしてあげてほしいです。
私も、どんな形であれ「いつか必ず恩返しをしよう」と心に誓っています。
この本には、私の仕事観や女性のライフスタイルやママ友についても書いています。周りが結婚してゆく中、結婚願望のなかった私が、長いこと仕事に打ち込み、独身生活を続けていたからこそわかることや、遅くに子供を産んだからこその思い、子育て、そして、私の夫についても書いています。
遅く子供を産んでよかったことは、自分が若い頃より大人なことです。それから仕事のキャリアが積めたこと。大好きな仕事を死ぬほど頑張り、たくさんのドラマや映画脚本を書くことができました。
逆に、もっと早く生みたかったという思いもありますが、それは、ずっと娘といたいから。でも、夫と出会い、この時期だからこそ生まれた命なので、そこは贅沢(ぜいたく)かなと思います。
なんだか最近、最後は健康トークになってしまうのですが……やっぱり、娘のためにも、夫婦そろって健康には気をつけて、長生きしたいです。読者の方々にも、この本を読み終えて、「今を楽しんで生きよう!」と思っていただけたら嬉しいです。
渡辺千穂(わたなべ・ちほ)◎脚本家 1972年10月18日生まれ、東京都出身。2002年にドラマ『天体観測』で脚本家デビュー。家族、恋愛、悪女ものなど幅広いジャンルを執筆。代表作は映画『赤い糸』、『さよならみどりちゃん』、『レインツリーの国』、『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』、ドラマ『名前をなくした女神』、『サキ』、『ファースト・クラス』、NHK連続テレビ小説『べっぴんさん』など。2017年7月よりドラマ『ウチの夫は仕事ができない』(日本テレビ系)放送中。プライベートでは、2014年8月にフリーアナウンサーの羽鳥慎一氏と結婚、2016年1月に女児出産。