久保裕也(撮影:Noriko NAGANO)

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久保裕也は練習後、報道陣の前を通るときに挨拶されると、いつもニコリと微笑んで会釈を返してくる。その態度には過度な緊張感もなく、かといって自信たっぷりな傲慢さもない。久保はいつもオープンマインドで人に接している。

これまで日本代表で4試合出場し、2ゴール。3月のアウェイ・UAE戦では貴重な先制点を叩き込み、ホーム・タイ戦でも2試合連続ゴールを決めた。本田圭佑のコンディションに問題があったにしても、代役という以上の活躍を見せたのだ。

今年のベルギーリーグの活躍もあり、一気に鼻が高くなってもおかしくない。だが、久保はいつもどおり飄々と受け答えをする。そして「そういう(威張るような)タイプじゃないので」とほんの少しだけ頬を緩めた。

3月の試合で自信は付いたのか。「自信はありますけど、まだ2試合ゴールしただけなので、継続していくのが大事だと思います。(代表4試合で2ゴールのハイペースは)これを続けていければいいペースだと思いますけど、次の試合でまた点が取れなかったら意味がないので、結果を出せるように準備をしたいですよね」

そんなやりとりをしながらも、表情は動かない。

「コンスタントに結果が出るようになって、でももっと上のリーグでやりたいし、目指しているので満足することはないですね。上の舞台に行けるように、まずは代表でも目に見える結果が大事かと思ってやってきたので」

「限界は全然ないです。もっと技術もフィジカルも伸びると思ってますし、やればやるだけ伸びると思ってます」

「(3月の代表戦は)やれるという手応えはありましたし、それが表現できたのかと思います。でももっとこう、絶対的な結果が出せる選手になりたいし、常に出せる選手になりたいと思いますのでまだまだです」

「試合に出してもらえるならどこでもいいです。とにかくチームに貢献したいですね。勝ちに関われるような結果を出したいですし、自分が結果を出してチームが勝てれば最高です」

自信に満ちた台詞が続くが、話し方が淡々としているので外連味(けれんみ)は一切感じられない。

高校2年生で京都のトップチームに登録された。ところが当時の京都はJ2で、久保は日本の1部リーグを経験しないまま、2013年にスイス1部のヤングボーイズへと渡る。そして今年、ベルギー1部のヘントへ移籍し7試合5ゴールという活躍を見せた。リオ五輪に招集されるものの、チーム事情で参加が取り消され、世界の舞台で活躍を見せることはできなかった。

苦労した分、精神的に落ち着いているのかもしれない。最後に「好調は維持していますか?」と聞いたとき、「はい」と答えながら、やっと少しだけ笑顔になった。

【日本蹴球合同会社/森雅史】