横浜打線、プロ注目の本田を攻略!そして本田が打たれた理由増田珠(横浜)

 今年の神奈川ナンバーワンピッチャー・本田 仁海。10失点を喫してもその評価が揺らぐことはないだろう。しかし本田が目指すプロで活躍するには、いろいろ課題が見えた試合であり、そして横浜の強さを見せつけた試合となった。

 横浜は非常にミート力が高い選手が多い。この試合でも本田相手にしっかりと狙い球を絞る打撃を見せる。一死から2番山崎が中前安打を打つと、3番斎藤も右前安打を放ち、一死一、二塁のチャンスを作ると、4番増田 珠が甘く入ったスライダーを見逃さず、中前適時打で1点を先制する。さらに二死二塁から6番長南 有航の遊撃強襲安打、7番板川 佳矢の適時打で3点を先制。横浜の打者はスイングに迷いがない。星槎国際湘南バッテリーの配球をしっかりと読んだ上で自分たちのスイングができていた。

 その後も横浜打線の勢いは止まらない。3回表には、一死三塁から6番長南がきっちりと犠飛を放ち、4対0。4回表には、一死一、二塁から2番市村の適時打。さらに一死満塁から5番市村の2点適時打や敵失も重なり、4点を追加。8対0と大きく点差を広げた。

 さらに7回表にも代打・鈴木の2点適時打で計10点。先発の板川 佳矢は130キロ前半のストレート、スライダー、カーブ、チェンジアップを低めに投げ分けながら星槎国際湘南打線を打ち取るピッチング。途中、何度も走者を出しながらも、味方の好守備にも救われて、2年連続の関東大会出場を決めた。

 横浜は、一冬で大きく伸びた。打線は広角に打ち分ける打撃で、プロ注目の本田を攻略するレベルとなり、そして外野手、内野手ともに守備力が上がり、脆さが見えた昨秋と比べると完成度が高いチームへ成長した。選手のポテンシャルも高く、伸びしろがあるのが最大の魅力。夏までどこまで伸びるのか、楽しみだ。

先発した本田仁海(星槎国際湘南)

 プロ注目の本田は10失点を喫し、悔しいピッチングに終わった。なぜ本田が打ち込まれたのか。理由は2つある。まず平均球速が慶應義塾戦と比べて5キロ前後も遅かったこと。

 慶應義塾戦では、常時130キロ後半〜140キロ前半と、当たり前のように140キロ台を計測することができていた。しかし今日の横浜戦は135キロ前後がほとんど。たまに140キロ超えが計測されたが、本田の持ち味である角度を兼ね備えたストレートは影を潜め、シュート回転するストレートが多く見られた。そうなると横浜打線は見逃さない。また外への配球が多く、インコースの揺さぶりも少なかったのも課題だろう。

 ただ仮に本田が常時140キロ台を出していたとしても、少ない失点で済んでいたのか?というとまだ不安がある。それは本田の変化球は横系統の変化球しかないことだ。

 本田の球種を振り返ると、110キロ〜120キロのスライダー、100キロ台のカーブ、100キロ台のチェンジアップの3球種がある。スライダーの切れは悪くないが、本田の場合、ストレートの走り具合とスライダーの切れ具合が比例しており、今日はスライダーの曲がりも鈍く、さらに真ん中付近に入ることも多かったので、軽々とミートすることができていた。

 チェンジアップはそこまで大きく変化するものでもなく、ブレーキングするものでもない。打者からすれば大きな威力と感じない。

 夏へ向けての課題は、変化球の精度の向上だろう。落ちる変化球を身に付けたり、スライダーの速度を上げたりとするなど、変化球のレベルも超高校級のレベルにしていきたいところ。その上で、自慢のストレートがさらに速くなれば、神奈川県内でもそう簡単に打たれない投手となるはずだ。

 また大事な試合でベストコンディションに持っていけるように、調整力や、本田の負担を減らすために、控え投手の実力向上も鍵となりそうだ。

(取材・写真=河嶋 宗一)

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