栄徳vs桜丘
3回戦では、愛工大名電を完封して勝ち上がってきた栄徳、勢いに乗っている。また、桜丘は昨秋県大会準優勝を果たして、東海地区大会にも進出している。そして、今春もここまで勝ち上がってきた。昨秋の実績も、チームとしては一つの自信にもなっているはずだ。
愛知県の準々決勝としては、いくらかフレッシュな印象でもある顔合わせ。近年、躍進しつつある私学同士の対決ということでも興味深いものがあった。
桜丘はエース原悠莉君が体調を崩して前日には39度を超す熱があったということで、登板を回避。杉澤哲監督としては最初から、「この試合は厳しい戦いになる」という覚悟はあったようだ。ということで桜丘は背番号11をつけた濱田康太君、栄徳は先週、愛工大名電を完封しているエースの釜谷竜哉君が先発。
様子を探り合うようなところもあったが、3回までは早いペースで試合が進み、お互いに0に抑えて、桜丘は2安打。栄徳は無安打のまま中盤に入った。
4回に桜丘は二死満塁まで攻めるものの釜谷君が踏ん張って抑えたその裏、連続四球で無死一二塁のチャンスを作ると、4番石原水輝君が左中間二塁打して二者を帰して先制。さらに一死三塁まで進めると、石橋心君がスクイズを決めてこの回3点目。
これで勢いづいた栄徳は、二死満塁から7番神山響君の三塁線を破る二塁打で走者一掃して3点を追加した。中野幸治監督は「打てない下位打線なのですけれども、野手がもう少しラインに寄っていたら捕られていたでしょうけれども、いいところへ飛びましたね」と言っていたが、よく振り切っていたので打球も鋭く三塁線を抜けていっていた。さすがにこれで、杉澤監督は濱田君を諦めて、2人目の美濃君につないだ。
しかし、美濃君も6回には3番野口泰司君の三遊間を破るタイムリー打や石原君の中越三塁打、近藤颯真君の右犠飛などでさらに3点。試合はワンサイド気味の展開になっていった。
結局、そのまま釜谷君が完封して栄徳がベスト4進出を決めた。
試合の流れのキーポイントとしては、栄徳がリードして、さらに5回に一死二三塁としたところで、雷雨の気配を感じて試合が中断されたのも大きかった。1時間53分の中断の後に再開されて、濱田君としても一旦中断してから、再登板でリズムに乗り切れない中でピンチを背負っていたということも痛かった。そこで再開直後に四球を与えてしまいピンチが大きくなって、「抑えなくては」という意識になったところを神山君に打たれたのが大きかった。雷雨の中断が、結果的には栄徳に味方した形となった。
栄徳は、中野監督としては戦力が充実してきたと感じながらの新チームだったが、昨秋は故障者も多くて満足いく結果にはならなかった。それだけに、新たな意識で挑んだこの春である。「周囲からの期待の声も、正直あります。それに応える、もう一つ上を目指して行きたいと思っています」と、チームとしての充実感があるだけに、実績を残しておきたいという思いがあるのだろう。
釜谷君はタテの変化球も大きいが、「場慣れしていますから、安定した投球はできます」と、中野監督も信頼は厚い。3番野口君、4番石原君という2年生の中軸が思い切りのいいスイングでタイムリーを放つなど、攻守にバランスがとれているという印象だった。
(文・写真=手束 仁)
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