東北楽天ゴールデンイーグルス 藤田一也選手「高校野球を見て守備について勉強している」【後編】
昨年、ゴールデングラブ賞を受賞した藤田一也選手。天然芝化した本拠地にどう対応をしていったのか、解説していただき、高校生へ向けてポジショニングの概念も分かりやすく教えていただいた。後編では、現在の高校生内野手の印象について聞いてみた。
■前編「天然芝だからこそ自分の守備技術を見直すことができた」を読む
レベルアップしている高校生内野手藤田一也選手(東北楽天)
――藤田選手は高校生のプレーを見る機会はありますか?
藤田:時間があればテレビで甲子園大会を見ますし、動画サイトで甲子園大会での守備の好プレー集なんかを見たりもします。自分が高校生のころと比べると全体的にレベルが上がっていてびっくりさせられますよ。
――レベルの向上を感じますか?
藤田:感じます。いい意味で基本にとらわれてない選手が増えたように思います。ぼくが高校生の頃はどんなゴロに対しても、正面に回り込んで両手で捕球しようとする型にはまったプレーをする選手ばかりだった気がするんです。
そのこと自体は悪いことではないのですが、今の選手は基本の型を押さえつつ、アウトにする上で確率が上がると判断したら、なんのためらいものなく、自信をもって、逆シングル捕球やジャンピングスローといったプレーを選択、実行しているように感じます。高校野球も随分と変わったなぁと思わされますね。
――なるほど。
藤田:プロでずっとやってると土のグラウンドでプレーをする機会が少なくなるので、高校球児のほうが甲子園のような土のグラウンドに慣れてるんですよ。自分が甲子園のグラウンドに立っている高校球児だと想像しながらテレビ中継を見ることもあるのですが、あんな大胆なプレーがよく土の上でできるなと感心させられることがよくあります。
――そうだったんですか。
藤田:プロの使用球場は大半が人工芝球場なので、回り込んで正面で捕球するよりも逆シングルで捕球した方がアウトにできる場面が多いんです。そんなプロのプレーの影響を受けている球児が増えているのかもしれませんが、ぼくは高校野球を見て、勉強させてもらっています。これはリップサービスじゃなく、心からの本音です。
今シーズンに向けて企んでいる変化とは「高校生はむやみに守る位置を変えず、定位置で守ることを大切にしたほうがいい」――2017年シーズンに向け、守備に関してなにか新たに試みようとしていることはありますか?
藤田:今年は芝生と土の切れ目を気にせず、思い切って深く守る機会もつくろうと考えています。あと、グラブを少し小さくすることも検討しています。メジャーの選手を見ていると、球場がほぼ天然芝なのもあってか、小さめのグラブを使っている選手が多いんですよ。
チームメイトのゼラス・ウィーラーのグラブを見せてもらってもやはり小さい。大きいとどうしてもハンドリング力が落ちるので天然芝への対応力を高めるべく、少し小さくしたグラブを作ってもらい、試してみようと企んでいます。
――どの程度小さくする予定ですか?
藤田:5ミリほどですね。年齢が上がって動きが落ちる分をカバーしようと、数年前に5ミリ大きくしたので、若い頃のサイズに戻す形になります。年齢を重ねた分だけしんどくなるとは思いますが、それを承知の上でトライしてみようと思っています。
取材の数日後、2016年度のゴールデングラブ賞の獲得者が発表された。パリーグ・二塁手部門に選出されたのは藤田選手。天然芝に苦しめられながらの獲得はさすがだった。現状に満足することなく、さらなる高みをめざす守備の達人。2017年度のプレーにも注目が集まる。
(インタビュー/文・服部 健太郎)
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