高杉真宙、20歳の素顔は「他人に見せたくない!」…なのに現場で化けの皮をはがされた!?
前回、話を聞いたのは舞台『闇狩人』への主演が決まった2月。約7カ月が経ったが、高杉真宙は「今年の2月? なんか去年のことみたいです」と遠い目をして笑う。それだけ濃密な時間を過ごしてきたのだろう。7月にはある作品の現場で二十歳の誕生日を迎えた。「もうちょっと、自分の中で何か特別な感じがあるかな? と思ってたんですけど…」。そう首をかしげるが、二十歳の感慨はなくとも、この数カ月で参加したいくつかの作品で、これまでにない衝撃、そして自らの変化を感じたという。高杉真宙にこの数カ月で何があったのか?
撮影/平岩 享 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.
――前回のインタビューでは『闇狩人』を控えての意気込みを伺いましたが、実際に5月に舞台に立たれていかがでしたか?
めくるめく公演の日々で…本番は大変でしたね(苦笑)。稽古は充実の毎日で、アクションもたくさんあったし、深作(健太/演出)さんにいろいろ引き出していただいて。本番の舞台に立つ前は不安でしたが、幕が上がったらやっぱり、テンションが上がってきて、舞台の快感を味わいました。
――俳優デビュー作『エブリ リトル シング'09』で立った天王洲銀河劇場の舞台に凱旋を果たしました。
すごく懐かしい感じがしました。あのとき、13歳で初舞台を踏んで今回、10代最後の舞台を主演として同じ場所でやらせていただけて…。「そんなことってあるんだ!」と思ったし、帰って来られて幸せでした。いろんな人に巡り合って、ここまでやって来てよかったなと思ったし、もっと頑張ろうとも思えましたね。
――時間が前後しますが、3月にドラマ『カッコウの卵は誰のもの』(WOWOW)が放送され、5月から6月にかけて東京、北九州、大阪で『闇狩人』の公演がありました。7月に主演の短編映画『想影』がサテライト上映。すでにその時期には映画『PとJK』の撮影に入っており、さらにその後も映画『トリガール!』の撮影があり…。
めまぐるしいですね(笑)。いま、『闇狩人』の話をしつつ、すぐに言葉が出てこなかったですもん(苦笑)。『トリガール!』はすでに撮影は終わっていて、年末までにさらに3本、新作の撮影があるんです。
――2月の時点でもかなり、忙しかったと思いますが、さらに加速してますよね。こうした状況をどう受け止めていますか?
僕としてはいつも、全力で過ごすだけというのは変わらないです。忙しさによって、何か変化したというのは感じないんですが、髪色はどんどん変わってます(笑)。『PとJK』で金髪にして、『トリガール!』で茶髪になって、最近、別の作品で黒髪に戻しました。
――ここまで次々と異なるタイプの役柄を演じるとなると、切り替えに苦労しませんか?
そこはあんまり大変じゃないんですよね。ひとつ仕事が終わって、可能なら1日お休みをいただいてリフレッシュして、次の作品に向かうという流れで、前の役を引きずることがほとんどないんです。ただ、次の役柄への準備がなかなか追いつかないところはありますけど…(苦笑)。
――見た目の部分以外の準備こそ重要ですからね。
できるだけのことをやるしかないと思ってますし、自分にとってはとにかく台本が教科書。これがすべてであり、そこからいかに肉付けしていくかだと考えてます。監督によって、撮影の仕方や求める演技のタイプが違うので、役柄よりもそちらに追い付くのが大変だったりもします。
――髪形や見た目が大きく変わることで日常生活でも性格が変わったりすることは?
オフに関して、そのとき演じている役柄や見た目に影響されたり、侵食されたりすることはほとんどないんです。それこそ、金髪にしてた頃も自分が金髪だってことを忘れるくらいで、毎朝、目が覚めて前髪を見るたびにビックリしてました(笑)。
――ここからは公開待機作について話を伺ってまいります。6月にクランクインした『PとJK』(2017年3月公開)は、警察官と女子高生の年の差カップルを描いた少女漫画原作の恋愛映画ですね。高杉さんは不良のように見えて、実は心優しい大神平助を演じています。
もともと原作を読んでたんですが、自分がこの平助の役をやるってことが不思議でしょうがなかったです。一見、金髪の不良キャラって、僕に与えられるような役じゃないだろうって思ってました。僕自身、大神が原作で一番好きなキャラクターでもあったので、緊張もありましたね。
――好きな作品、キャラクターであるがゆえに悩む?
どちらかというと、僕はファン側、オタク側の人間ですから。そちらの心理で考えると「自分がこの役やっていいのか?」「みんな、どう思うんだろう?」って不安でしたし、なるべく近づけられるようにと努力しました。
――メガホンを握ったのは映画『ストロボエッジ』や『火花』(Netflix)の廣木隆一監督。「一度は廣木さんと仕事がしたい!」と公言する若手俳優も多いです。実際、廣木監督の演出はいかがでしたか?
カッコいいひとでした。男気があるというか…。最初の本読みの段階で、玉城ティナさん、西畑大吾(関西ジャニーズJr.)くんと一緒だったんですが、監督の思い描く大神像とは違ったみたいで、僕だけ「もう1回」「違う」「もう1回」って延々と繰り返しました。誰もが一度は通る道なのかもしれませんが…(苦笑)。
――20回、30回と本番を繰り返す俳優さんも珍しくないそうですからね。
言葉は悪いですが「なにくそ!」って感じでくらいついていきました。その数日後にもう一度、本読みがあったので「絶対にOK出してやる!」って。それだけ厳しいからこそ、芝居をやっていて安心感があるんです。カメラのすぐ横で見てくださるし「この監督がOKを出したんなら大丈夫だな」と思える。
――廣木監督の演出を受けたことで、撮影の期間中にもご自身の成長や変化を感じましたか?
普段、短期間で「成長した」と感じられることってないんですが、今回に関しては、変化を体感しましたね。そもそも、最初の頃とは役へのアプローチ自体が大きく変わりました。「映画ってこういうものか!」と強く感じ、勉強にもなったし、その後も映画が続いたんですけど、この経験があったからこそ、という瞬間が何度もありました。
――『PとJK』の後、ほぼ間を空けず、鳥人間コンテストに挑む大学生たちの青春を描いた『トリガール!』(2017年秋公開)の撮影に入りました。こちらは『ヒロイン失格』など、ラブコメの名手である英勉(はなぶさ・つとむ)監督の作品です。廣木監督とはまた違うタイプの演出だったかと…。
いや、もうびっくりしました! 衝撃でしたね。『PとJK』の後が英監督の現場だと言うと、周りから「リハビリが必要だよ」と言われたんです。「どういう意味だろう?」と思ってたんですが…。
――まさに、先ほどおっしゃっていた「監督によって求める演技のタイプが違う」という部分ですね。
廣木さんに求められたのは、余計なものを削ぎ落としていく“引き算”の演技。英さんからは「どんどん演技していいよ。面白いことやってみて!」と言われ続けてました。
――英監督からは“足し算”の演技が求められた、と。高杉さんが演じた高橋 圭は、土屋太鳳さん演じるヒロインが一目ぼれする王子様キャラでしたが…。
周囲を見ると、意味のわかんないキャラばかりなんですよ(笑)。最初はそこで、なかなか、はっちゃけることができずに戸惑いました。前の現場とは演技の土台がまったく違ったんです。
――違う競技をしているような感覚?
本当にそういう感じです。同じ映画なのに、舞台とドラマよりもかけ離れているような感覚でした。それから、現場でちょっと恐ろしい経験もしまして…(笑)。
――恐ろしい経験?
監督と間宮(祥太朗)さんのことなんですけど、人をすごくよく見てるんですよ。撮影は3週間もないくらいだったんですが、化けの皮をはがされたといいますか、こんな短期間で素の自分を見透かされたのは初めてに近い経験でした。
――どちらかというと高杉さんは、普段から“壁”のようなものを作って、他人との距離を自分でコントロールする、用心深いタイプですよね?
他人に素を見せるのが嫌だし、恥ずかしいんです。でもかなり早い段階で、監督に「高杉くん、現場を見渡して『どこで食ってやろうか?』って考えてたでしょ?」と言われて…。まさに、この戸惑いの多い現場で「どこで自分の色を出してやろうか?」という思いで静かに周囲をうかがってたんですよ(笑)。
――そこを見事に突かれた?
ズバッと(笑)。ビビりました。自分のそういう、ギラギラしてる部分を見られるのも嫌だし…超恥ずかしかったです! 悪いことしてるわけじゃないのに「え? なんで? マジで…?」って変な汗かきましたね(苦笑)。
撮影/平岩 享 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.
13歳で初めて立った舞台の地へ凱旋!
――前回のインタビューでは『闇狩人』を控えての意気込みを伺いましたが、実際に5月に舞台に立たれていかがでしたか?
めくるめく公演の日々で…本番は大変でしたね(苦笑)。稽古は充実の毎日で、アクションもたくさんあったし、深作(健太/演出)さんにいろいろ引き出していただいて。本番の舞台に立つ前は不安でしたが、幕が上がったらやっぱり、テンションが上がってきて、舞台の快感を味わいました。
――俳優デビュー作『エブリ リトル シング'09』で立った天王洲銀河劇場の舞台に凱旋を果たしました。
すごく懐かしい感じがしました。あのとき、13歳で初舞台を踏んで今回、10代最後の舞台を主演として同じ場所でやらせていただけて…。「そんなことってあるんだ!」と思ったし、帰って来られて幸せでした。いろんな人に巡り合って、ここまでやって来てよかったなと思ったし、もっと頑張ろうとも思えましたね。
――時間が前後しますが、3月にドラマ『カッコウの卵は誰のもの』(WOWOW)が放送され、5月から6月にかけて東京、北九州、大阪で『闇狩人』の公演がありました。7月に主演の短編映画『想影』がサテライト上映。すでにその時期には映画『PとJK』の撮影に入っており、さらにその後も映画『トリガール!』の撮影があり…。
めまぐるしいですね(笑)。いま、『闇狩人』の話をしつつ、すぐに言葉が出てこなかったですもん(苦笑)。『トリガール!』はすでに撮影は終わっていて、年末までにさらに3本、新作の撮影があるんです。
――2月の時点でもかなり、忙しかったと思いますが、さらに加速してますよね。こうした状況をどう受け止めていますか?
僕としてはいつも、全力で過ごすだけというのは変わらないです。忙しさによって、何か変化したというのは感じないんですが、髪色はどんどん変わってます(笑)。『PとJK』で金髪にして、『トリガール!』で茶髪になって、最近、別の作品で黒髪に戻しました。
――ここまで次々と異なるタイプの役柄を演じるとなると、切り替えに苦労しませんか?
そこはあんまり大変じゃないんですよね。ひとつ仕事が終わって、可能なら1日お休みをいただいてリフレッシュして、次の作品に向かうという流れで、前の役を引きずることがほとんどないんです。ただ、次の役柄への準備がなかなか追いつかないところはありますけど…(苦笑)。
――見た目の部分以外の準備こそ重要ですからね。
できるだけのことをやるしかないと思ってますし、自分にとってはとにかく台本が教科書。これがすべてであり、そこからいかに肉付けしていくかだと考えてます。監督によって、撮影の仕方や求める演技のタイプが違うので、役柄よりもそちらに追い付くのが大変だったりもします。
――髪形や見た目が大きく変わることで日常生活でも性格が変わったりすることは?
オフに関して、そのとき演じている役柄や見た目に影響されたり、侵食されたりすることはほとんどないんです。それこそ、金髪にしてた頃も自分が金髪だってことを忘れるくらいで、毎朝、目が覚めて前髪を見るたびにビックリしてました(笑)。
自他ともに認める「オタク」であるがゆえの苦悩
――ここからは公開待機作について話を伺ってまいります。6月にクランクインした『PとJK』(2017年3月公開)は、警察官と女子高生の年の差カップルを描いた少女漫画原作の恋愛映画ですね。高杉さんは不良のように見えて、実は心優しい大神平助を演じています。
もともと原作を読んでたんですが、自分がこの平助の役をやるってことが不思議でしょうがなかったです。一見、金髪の不良キャラって、僕に与えられるような役じゃないだろうって思ってました。僕自身、大神が原作で一番好きなキャラクターでもあったので、緊張もありましたね。
――好きな作品、キャラクターであるがゆえに悩む?
どちらかというと、僕はファン側、オタク側の人間ですから。そちらの心理で考えると「自分がこの役やっていいのか?」「みんな、どう思うんだろう?」って不安でしたし、なるべく近づけられるようにと努力しました。
――メガホンを握ったのは映画『ストロボエッジ』や『火花』(Netflix)の廣木隆一監督。「一度は廣木さんと仕事がしたい!」と公言する若手俳優も多いです。実際、廣木監督の演出はいかがでしたか?
カッコいいひとでした。男気があるというか…。最初の本読みの段階で、玉城ティナさん、西畑大吾(関西ジャニーズJr.)くんと一緒だったんですが、監督の思い描く大神像とは違ったみたいで、僕だけ「もう1回」「違う」「もう1回」って延々と繰り返しました。誰もが一度は通る道なのかもしれませんが…(苦笑)。
――20回、30回と本番を繰り返す俳優さんも珍しくないそうですからね。
言葉は悪いですが「なにくそ!」って感じでくらいついていきました。その数日後にもう一度、本読みがあったので「絶対にOK出してやる!」って。それだけ厳しいからこそ、芝居をやっていて安心感があるんです。カメラのすぐ横で見てくださるし「この監督がOKを出したんなら大丈夫だな」と思える。
――廣木監督の演出を受けたことで、撮影の期間中にもご自身の成長や変化を感じましたか?
普段、短期間で「成長した」と感じられることってないんですが、今回に関しては、変化を体感しましたね。そもそも、最初の頃とは役へのアプローチ自体が大きく変わりました。「映画ってこういうものか!」と強く感じ、勉強にもなったし、その後も映画が続いたんですけど、この経験があったからこそ、という瞬間が何度もありました。
――『PとJK』の後、ほぼ間を空けず、鳥人間コンテストに挑む大学生たちの青春を描いた『トリガール!』(2017年秋公開)の撮影に入りました。こちらは『ヒロイン失格』など、ラブコメの名手である英勉(はなぶさ・つとむ)監督の作品です。廣木監督とはまた違うタイプの演出だったかと…。
いや、もうびっくりしました! 衝撃でしたね。『PとJK』の後が英監督の現場だと言うと、周りから「リハビリが必要だよ」と言われたんです。「どういう意味だろう?」と思ってたんですが…。
――まさに、先ほどおっしゃっていた「監督によって求める演技のタイプが違う」という部分ですね。
廣木さんに求められたのは、余計なものを削ぎ落としていく“引き算”の演技。英さんからは「どんどん演技していいよ。面白いことやってみて!」と言われ続けてました。
――英監督からは“足し算”の演技が求められた、と。高杉さんが演じた高橋 圭は、土屋太鳳さん演じるヒロインが一目ぼれする王子様キャラでしたが…。
周囲を見ると、意味のわかんないキャラばかりなんですよ(笑)。最初はそこで、なかなか、はっちゃけることができずに戸惑いました。前の現場とは演技の土台がまったく違ったんです。
――違う競技をしているような感覚?
本当にそういう感じです。同じ映画なのに、舞台とドラマよりもかけ離れているような感覚でした。それから、現場でちょっと恐ろしい経験もしまして…(笑)。
――恐ろしい経験?
監督と間宮(祥太朗)さんのことなんですけど、人をすごくよく見てるんですよ。撮影は3週間もないくらいだったんですが、化けの皮をはがされたといいますか、こんな短期間で素の自分を見透かされたのは初めてに近い経験でした。
――どちらかというと高杉さんは、普段から“壁”のようなものを作って、他人との距離を自分でコントロールする、用心深いタイプですよね?
他人に素を見せるのが嫌だし、恥ずかしいんです。でもかなり早い段階で、監督に「高杉くん、現場を見渡して『どこで食ってやろうか?』って考えてたでしょ?」と言われて…。まさに、この戸惑いの多い現場で「どこで自分の色を出してやろうか?」という思いで静かに周囲をうかがってたんですよ(笑)。
――そこを見事に突かれた?
ズバッと(笑)。ビビりました。自分のそういう、ギラギラしてる部分を見られるのも嫌だし…超恥ずかしかったです! 悪いことしてるわけじゃないのに「え? なんで? マジで…?」って変な汗かきましたね(苦笑)。