チェコといえば首都のプラハが真っ先に浮かびますが、地方にも魅力あふれる小さな街がたくさんあります。

そのひとつが「モラヴィアの真珠」とたたえられる、ボヘミア・モラヴィア高地にひっそりとたたずむ小さな街、テルチです。

アルプス以北のイタリア・ルネッサンス都市の最高傑作とされる美しい街並みは、「テルチ歴史地区」として世界遺産に登録されています。かつて天然の要塞として機能した3つの池に囲まれ、水辺の要塞都市として発展してきました。

テルチの中心がザハリアーシュ広場。細長い三角形の広場をカラフルな建物が囲む、メルヘンチックな空間です。


このようなカラフルでかわいらしい街並みが生まれたのは、実は火災がきっかけでした。1530年、テルチを火事が襲い、街は全焼してしまいます。その後、1550年に跡を継いだ領主ザハリアーシュは、建て替える家はすべてルネッサンス様式あるいは初期バロック様式にするよう市民に呼びかけました。

市民もこの呼びかけに応え、それぞれが競うようにして趣向を凝らした家を建て、現在の美しい街並みができあがったのです。当時は「マルクト広場」と呼ばれていたこの広場は、領主に敬意を表し、「ザハリアーシュ広場」と呼ばれるようになりました。

街が全焼するという憂き目に遭ったテルチの人々は、さぞ打ちひしがれたことでしょう。しかしそれを逆手にとって、世界に名だたる美しい街並みをつくり上げた人々のたくましさには頭が下がりますね。

それぞれに個性が光る、パステルカラーの可愛らしい建物が並ぶ広場はまるで絵本の世界。広場にあるすべての建物を写真に収めたくなるほどに魅了されてしまいます。これほど色彩豊かでありながら統一感のある広場は世界に類を見ないのだとか。


広場のカフェでこの景色を楽しみながらのティータイムはまさに至福のひとときです。

ザハリアーシュ広場が途切れるところにあるのが、街でもっとも壮大な建物であるテルチ城。13世紀に建てられたゴシック様式の城を、16世紀なかばにザハリアーシュがルネッサンス様式に改築させたものです。

城内にある豪華で個性豊かな部屋の数々は、ガイドツアーで見学することができます。

テルチ城のすぐ隣に位置するのが、街を見渡す絶好のビュースポットとなっている、聖ヤコブ教会の塔。

ここからは、何世紀も時間が止まってしまったかのような絵画のようなテルチの風景を楽しむことができます。

自然と調和した素朴な風景を残しつつ、どこか気高さも感じさせるテルチの街並み。それが、「モラヴィアの真珠」と称されるゆえんなのでしょう。

水辺の景色が美しい、池の周辺も散策してみましょう。可愛らしい家々や教会の塔が池に反射する風景に、きっと心が洗われます。

観光地でありながら、のんびりとした田舎町の雰囲気に心癒されます。テルチを訪れると、世界中から観光客が押し寄せ、どこも観光客でごった返すプラハとの違いに驚くはずです。

広場のすぐ裏には民家が並び、人々の生活の場がすぐそこにあります。ザハリアーシュ広場自体も観光スポットである以前に地元の人々の憩いの場。

観光と日常とが共存する、このゆるりとした空気がテルチの最大の魅力なのかもしれません。わずか数時間で周れてしまう小さな街でありながら、すぐには味わい尽くせない奥深いテルチの魅力。

ここでは時計なんて忘れて、昔と変わらずゆったりと流れる穏やかな時間を楽しんでみませんか。

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