「ポーランドの京都」とも呼ばれる古都クラクフ。ポーランドを旅行するほとんどの人がこの街を訪れるといっても過言ではないほど人気の観光地です。

そんなクラクフの名物が、「オブヴァジャーネック」と呼ばれるリング状のパン。クラクフ中心部のあちこちでオブヴァジャーネックのワゴンを目にするはずです。

チーズ、ゴマ、ケシなどいくつかの種類があり、ひとつ1.5ズロッティ程度。観光地でありながら、観光客よりも地元の人がよく買っているのを目にします。

「オブヴァジャーネック」とは、「一度茹でてから焼いたパン」の意味。その名の通り、焼く前に一度茹でてあるのでしっかりとした歯ごたえがあるのが特徴です。


見た目も製法もベーグルと似ていて、これがベーグルの原型であるという説もあるのです。しかし、日本でも人気のアメリカ式ベーグルに比べるとモチモチ感やしっとり感は薄く、アメリカ式ベーグルとドイツのプレッツェルの中間のような存在。

実際に、英語でオブヴァジャーネックを紹介する際には「ポーランドのベーグル」と表現する場合もあれば、「ポーランドのプレッツェル」と呼ぶこともあるのだとか。

オブヴァジャーネックの起源は17世紀のクラクフのユダヤ人コミュニティだといわれています。

かつてのポーランド王、カジミエシュ大王がユダヤ人を保護する政策をとったため、ヨーロッパで迫害を受けたユダヤ人が15世紀以降多数クラクフに移り住み、クラクフに一大ユダヤ人コミュニティができたのです。

また、アメリカ式ベーグルも、1880年代にユダヤ系ポーランド人移民から、ニューヨークで広まりました。しかし、それからすぐにアメリカ全土に広まったわけではなく、大規模な東欧系ユダヤコミュニティのある都市を除き一般的な存在ではありませんでした。

ベーグルがアメリカ全土に広まったのは20世紀末のこと。それが今では国境を越え、世界各国で親しまれているのです。ベーグルがもともとユダヤ人から広まったという事実は、意外に知られていないのではないでしょうか。

現在でも、クラクフの旧市街とその周辺の地域でのみ、ライセンスを取得したパン屋だけが製造でき、認可を受けた屋台でのみ販売が許されるというオブヴァジャーネック。

同じポーランドでも首都ワルシャワや他の都市では食べられないクラクフ伝統の味なのです。

シンプルで飽きのこない味わいは、おやつにも、朝食にもぴったり。まだ観光客がいない朝の中央広場で、青空の下オブヴァジャーネックを頬張る…クラクフでしかできない体験です。

これぞ旅の醍醐味!といえる粋なひとときではないでしょうか。

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