先日はホーキング博士が「アルファ星の探査機プロジェクト」を発表して大いに世間が盛り上がりましたが、今回のニュースもとっても興味深いものです。NASAはマーシャル宇宙飛行センターにて、「静電気による太陽系圏高速移動システム(Heliopause Electrostatic Rapid Transit System :HERTS, E-sail)」を進めています。この計画により、宇宙探査機の移動時間は三分の一程度になるというのだから、楽しみじゃありませんか!
 
この計画の基本コンセプトは「太陽風を帆で捉え、探査機の推進力にする」というものです。探査機には太陽風を捉えるワイヤーを装着することにより、太陽系圏内での探査にかかる時間を10年以内に減らすことができます。探査機のボイジャー1号が打ち上げから30年以上かかって星間空間(太陽系の外)に達したことを考えると、大幅なスピードアップですね!
 
太陽風の速度は秒速400〜700kmと超高速で、また強弱の変化はあるものの常に吹き付ける点がメリットです。しかし、ヨットのような巨大な帆を展開するのは容易ではなく、また帆を展開する機構も複雑です。さらに、太陽から離れるほど太陽風は減速するという問題もあります。
 
そこで、現在フィンランド気象研究所のPekka Janhunen博士は10〜20本の極細のアルミニウムの糸を展開するというアイディアを提唱しています。この糸は直径は1mmほどですが、20kmもの長さがあります。そしてこの糸を探査機の周りで回転させることで、まるで「見えない帆」のように数十メートルの電子フィールドを展開し、太陽風を受けて航行することができるのです。
 
現在NASAは宇宙空間を再現できるプラズマチャンバーにて、この電子の帆のテストを行っています。研究はまだ初期段階で、実用化には10年以上が必要だそうです。この電子の帆は無人の探査機での利用が想定されていますが、もっともっと大型化して宇宙船でも使えないかな〜、なんて思わず想像してしまいますね!
 
Image Credit: NASA
■NASA begins testing electronic sail technology for deep space probes
http://www.gizmag.com/nasa-technology-sail-deep-space/42760/?utm_source=rss&utm_medium=rss