1月29日、日銀は「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入することを発表しました。個人が日銀に口座を持つことはありませんが、金融機関は日銀に当座預金があります。金融機関は預金等の一定比率以上の金額を日銀に預ける義務があったり、他の金融機関や日銀などと決済を行う必要があるため日銀に預金を持ちます。金融機関が義務として日銀に預ける金額を超えて預けている金額を超過準備といいますが、従来はこの超過準備について利息が付されてきました。

マイナス金利とは、ざっくり言うと新しく適用される方法によって計算される超過準備についてマイナスの金利を付することです。マイナスの金利なので金融機関は預けておくと利息をもらえず、逆に一部の預金について利息を払わねばならなくなります。日銀がマイナス金利を導入することに至った理由として、金利全般に強い下押し圧力を加えること、物価上昇率の2%実現を図ることが挙げられています。

金利低下は預ける側からすると利息の低下になりますが、借りる側からすると企業の借入コストの低下や住宅ローン金利の低下などのメリットがあります。日銀としては超過準備として預けられていた資金を日銀ではなく市場に向わせることで資金供給をする意図もあったかと思われます。市場に出回る資金が増えるとモノの価格である物価は上昇します。仮に金利をゼロとしても金融機関は日銀に預け続けるでしょうから、マイナスにすることで日銀に資金が向わないようにしたのでしょう。

このマイナス金利の影響を見てみますと、まず金融機関の株価下落が目立ちます。金融機関は日銀に預金するだけで収益を得られていたわけですが、それがマイナスになってしまうため他に収益の源泉を見つけなければなりません。貸し出すにしても信用力のある貸出先は限られているうえ、金利は低下していますので貸し出し金利を高く設定することは難しいでしょう。日銀がもう一段階金利を下げる可能性もあり、資金の運用難や収益性悪化懸念から金融機関の株式は売られています。

個人の預金金利がマイナスになることは早々ないと思われますが、外国の金融機関のように口座管理料を徴収する金融機関が出てきてもおかしくはありません。金融機関は前述のとおり資金運用が難しい局面に直面していますから、収益を上げることよりもまずコストを減らすことを考えるかと思います。個人の預金口座は手数料がかからないのが一般的ですが、口座管理のシステム運用費用や人件費などは発生しているため収益を生まない口座は金融機関から見ればコストセンターでしょう。口座管理料を徴収するとか、決済手数料を値上げするなど実質的なマイナス金利を導入する可能性は高いと思われます。

(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。