在京AMラジオ3局が、FM波でも受信できるようになる「ワイドFM(FM補完放送)」の本放送がスタートした。3局の公式サイトによると、受信エリアは東京23区と多摩地域の一部、埼玉・千葉・神奈川の主要都市などだという。


ワイドFMの受信エリア(3局のサイトをもとに編集部作成)

ぼんやりとしたエリア図は公開されているが、具体的に「どこで聞けるか」はわからない。そこで今回は、どこまで受信できるのか、電車に乗って調べてみようと思う。スタートは、電波が発信されている東京スカイツリー。さて、どこまでいけるのか?

スカイツリーから出発!


まず向かったのは、東京スカイツリー。ソニーの新型ラジオ「ICF-P36」を購入し、放送初日の2015年12月7日、ツリーの下へやってきた。右手にスマホ、左手にラジオを掲げ、天を仰いでの撮影は、思ったよりキツイ。周囲の目を気にしながら、とりあえず南へ向かった。



歩き始めて数十分。渋谷から移転したばかりの「たばこと塩の博物館」の横などを通り過ぎ、錦糸町駅に到着した。ここから総武線と中央線で、ひたすら西へ。御茶ノ水からは中央特快(特別快速)の高尾行きに乗る。


23区を出て、多摩地域へ。「住みたい街」常連の吉祥寺、多摩最大の都市・立川を抜けて、多摩川を越えてもなお、受信状況に変化はない。きわめてクリアな音質のまま、列車は高尾駅にすべり込んだ。


ついに山梨県へ!


ホームに鎮座まします「天狗」の石像と記念撮影をし、大月行きの普通列車に乗り換える。この高尾駅が中央線の東京最西端で、トンネルを抜けると神奈川県だ。おとなりの相模湖駅と、その次の藤野駅が神奈川県相模原市で、そこから先は山梨県となる。


高尾を発車すると、少しずつ電波が弱くなってきた。アンテナをのばし、窓に密着させる。相模湖、聞こえる。藤野も聞こえる――。しかし山梨県に突入したあたりから、雑音だけしか聞こえなくなった。もうここまでか。観念して、列車を降りた。


上野原駅到着。改札を降りた後、「もしかして」とスイッチを入れると、若干の雑音はあるが、軽快なトークが聞こえた。ただ単に電車内だから、ノイズが入りやすかったのか。


もう少しガマンしておけばと反省するも、さらに西へ進む列車は40分後。対する東京方面は25分後。ぐるりと駅前を歩き、帰社することにした。


次を逃すと、さらに30分後

駅前には食堂1軒のみ。でも食事する時間はない。北口から南口へと、ぐるりと歩いてみよう。テクテク進んでいると、1枚の看板を見つけた。「お買い物は地元のお店でネ」。語尾の「ネ」が昭和チックだが、思いのほか新しそうに見える。口調はポップだけど、文面からは切実さも読み取れる。おみこしのイラストも印象的な1枚だ。


スカイツリーから上野原駅まで、直線距離で60キロちょっと。ここまで電波が飛んできたのかと思うと感慨深い。「これじゃ普通のAM放送、いらなくなるんじゃない?」。そう思いつつAM放送に切り替えてみると、雑音まじりのワイドFMより耳心地のよい音声が聞こえた。いつもより空が青い気がした。