「ドンキはなくとものん気に暮らせる」...鳥取県・平井知事のダジャレに見る、そのPR上手ぶり
人口が日本一少なく過疎に悩む鳥取県。それにもかかわらず、鳥取がメディアで取り上げられる回数は日増しに大きくなっている。エアポートに鳥取砂丘コナン空港という愛称を付けたり、境港市を「妖怪の町」として売り出したり、話題性を狙った取り組みが功を奏している。
他県よりも出遅れていることを逆手にとり、地域の良さをさりげなくアピールすることも、好感をもって受け止められている。
最も有名なのは、平井伸治県知事が2013年に発言した「スタバはないけど、日本一のスナバ(鳥取砂丘)はある」だろう。地元出身の国会議員・石破茂も「一つの現象を逆手に捉えて情報発信してきた平井伸治知事の発想力に敬意を表する」と賞賛したほどだ。
平井信治鳥取県知事(KASEIさん撮影、Wikimedia Commonsより)
ついにダウンタウンと共演を果たす。スタジオの反応は?
朝から晩まで多忙を極める平井知事は、2015年10月8日放送の「秘密のケンミンSHOW ダウンタウンDX 2時間合体スペシャル」(日テレ系)に出演した。
昨年に引き続き実施している「蟹取県(かにとりけん)ウェルカ二キャンペーン」のPR目的と思われるが、かにとりけんハッピを身にまとい、観客席に向かってピースサインならぬカニサインで「よろしくどうも〜」とほほ笑む。
テレビでしゃべっていた時間はそれほど長くなかったけれど、その存在感は居並ぶタレントにひけを取らない。新たな名言(?)もオンエアーされた。
「残念ながら(鳥取県には)セブン-イレブンはまだありませんが、セブン-イレブンがなくても『いい気分』になります」
「『ドン・キホーテ』がなくても『のん気』に暮らせる」
番組スタッフが知事を密着取材したときのVTRも流れた。
1日9件のアポ――視察やスピーチ、意見交換会、表敬訪問をこなす超人的な働きぶり。世界各国の人が出席する交流会では韓国語や英語を交えつつ、約6分間原稿を見ることなくスピーチする。知事が「ま、営業です」とさらりと説明したところ、同じ出演者からは「すごい!」「カッコいい」「こりゃ大変だ」といったつぶやきがこぼれた。
個性派知事の原点はアキバと神田明神にあった
これだけ芸達者な人物なのだから、知事就任前は芸能関係の仕事でもしていたのかと思いきや、東京大学法学部卒のエリート自治官僚出身だ。
2001年から6年間副知事を務め、2007年の知事選挙で初当選し、現在に至る。
出身は千代田区外神田。地下鉄銀座線末広町近くで、小学校は秋葉原のど真ん中にある旧芳林小学校だった。現在は昌平小学校と統合し、その校舎は「ラブライブ!」にも登場する場所だ。
「月刊千代田人」(千代田区観光協会)によると、子どもの頃から社会人になっても神田祭で神輿をかついでいたそうで、当時の経験は大学の学園祭などに役立ったと述べている。
エリート街道を歩みつつも、ネアカで機転がきくのは、人間関係の濃密な下町育ちだからではないか。
そういえば鳥取は「まんが王国とっとり」を知事の肝いりで進めている。月刊千代田人のインタビューで知事が、
「『アニメ』『サブカルチャー』や『萌え』もひとつの文化かなと思います」
と答えているところを見ると、故郷アキバが電気街としては一時衰退した後、オタク文化の発信地として再生したことに、何らかのヒントを得ていたりして。もちろんその陰には優秀なブレーンもいるだろう。
知事は今年4月に3期目の当選を果たした。そのスタート会見でもマンガなどを活用した観光客誘致を推し進めると発言している。
10月5日に「まんが王国とっとり」の公式サイトを多言語対応にするなど意欲はますます盛んだが、一方で、今夏の関連イベントは集客に苦戦したと伝えられている。
まんが王国とっとり公式サイト
外から人を呼び込む宣伝マンとして、平井知事以上の人材はいまのところ見当たらない。
メディアへの積極露出と鳥取ダジャレは今後も続きそうだ。