流行りの「天然氷かき氷」がおいしいワケを科学的に解説!

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天然氷かき氷の人気に迫る!

昨年よりブーム到来中の、かき氷。中でも、天然氷を使ったかき氷の人気が高いようです。天然で冷やすのも、家の冷凍庫で冷やすのも、水を凍らせることには変わりはないはず。それなのに、天然氷のかき氷はお値段もちょっぴりお高めです。天然氷は、何がそんなにスゴいのでしょうか?

今日は、天然氷の人気のワケを、科学的に納得してもらいたいと思います!


天然氷かき氷の特徴


まず、天然氷かき氷が、通常の氷よりも良いと言われているポイントを2つ挙げます。

1.頭がキーンとしにくい

2.食感がふわふわしている

このため、この2つの理由を科学的に説明することにします!


ポイント1.実は「温度」が違った!!


天然氷は、氷室と呼ばれる貯蔵庫に山からの湧き水を溜めて、冬の間に冷凍させることで作られます。
冷凍のスピードはとてもゆっくり
一方、家の冷凍庫で水を凍らせる場合は、マイナス18℃前後の低い温度で、急速に冷却します。

この過程で変わってくるのが、“水に含まれる不純物”


通常、水の中にはミネラルや空気といった“水(H2O)以外の物質=不純物”が含まれています。
水は、水分子同士がかっちりと結合することで氷になってゆきますが、その過程でそれらの不純物を押し出す性質があります。

天然氷は、冷凍のスピードがゆっくりであるため、押し出しを十分に行う事が出来ます。
しかし、家の冷凍庫で急速に凍らせて作る氷は、押し出しにあまり時間をかけられないため、不純物が残ってしまうのです。


不純物が残ると何が起こるかというと・・・

通常は0度であるはずの“水が氷になる温度”が下がります!
これは裏を返せば、“氷が溶けて水になる温度も下がる”ということです。
つまり、氷点下でも溶け始めうるので、通常より溶けやすくなるのです。


天然氷の氷は、不純物が少ないため、氷が溶けて水になる温度は0度に近い状態です。
このため、かき氷として氷を削る前に、マイナス10℃からマイナス4℃くらいまで、少し温める事が出来ます。ところが、急速に凍らせた不純物の多い氷は、マイナス10℃くらいで溶け始めてしまうので、温めてから削る事が出来ません。

こうした理由により、天然氷のかき氷は”冷たすぎない状態”で提供する事ができる一方で、家の冷凍庫の氷のかき氷は”チョー冷たいまま”で出さざるを得ないのです。

ポイント2.頭がキーンとしにくいメカニズムがあった!!


ここまでで、天然氷と冷凍庫の氷は“かき氷として提供するときの温度が違う”ことが分かりました。
でも、氷は同じ氷です。冷たい事に変わりはなく、冷たければ頭はキーンとしそうです。
どうして、天然氷は、頭がキーンとしにくいのでしょうか。

まず、頭がキーンとするしくみについてミクロなレベルで説明します。
冷たいものを食べて頭がキーンとする現象、通称「アイスクリーム頭痛」は、「冷たい」の刺激を、脳が「痛い」と感じることが原因の一つだとされています。


そのメカニズムを簡単に説明しますと、

1.冷たい刺激がやってくる

2.「温度が17度以下の刺激」をキャッチするセンサー(タンパク質)が働く

3.そのセンサーが「痛み」のシグナルを脳に送る

このようになります。

「冷たい刺激」は、このセンサーを介して「痛みの刺激」に変換されるのですね。

このため、「頭がキーンとしにくい」という現象は、「このメカニズムが作動しにくい」という現象に置き換えられます。

不純物の少ない天然氷は、水分子同士がかっちり結合しているため、固い氷になります。
固い氷であれば、とても細かく削る事が出来ます。
そして、削って盛りつける際に空気が含まれるため、いわゆる“ふわふわ”なかき氷が出来上がります。
これが天然氷からふわふわ食感を作れる理由です。
さらに、削りが細かいということは表面積も多いので、
「温かい舌」に触れる面積が増え、口の中で溶けるスピードも早くなります。


天然氷かき氷は温度が高めであることに加え、溶けるスピードも早いため、「冷たい刺激」を受け取ってる時間が短くなるのです。
このため、削りがあまり細かくなく、温度も約マイナス10℃前後である冷凍庫の氷のかき氷は、冷たい刺激をキャッチするセンサーを作動させやすいのに対し、天然氷のかき氷は、そのセンサーが作動しにくくなると考えられます。つまり、頭がキーンとしにくいのです!

以上が、天然氷が頭がキーンとしにくく、ふわふわな食感であると言われている科学的な考察です。
このため、原理的には、不純物を完全除去した氷を冷凍庫で冷やし、少し温めたのちに細かく削れば、頭がキーンとしないふわふわなかき氷を再現できることになります。しかし、それは中々容易なことではありません。
天然氷のスゴさは、科学的にも理にかなっている美味しさを生み出す氷を、自然の力で作れるところにあったのですね♪


著者:味博士

味覚研究家。AISSY株式会社代表取締役社長 兼 慶応義塾大学共同研究員。味覚を数値化できる味覚センサーを慶大と共同開発。味覚や食べ物の相性の研究を実施。メディアにも多数出演。ブログ『味博士の研究所』で味覚に関するおもしろネタを発信中。



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