「FINE!」をキーワードにホンダの誇るパワートレイン技術について語る福井威夫社長=19日、千葉市の幕張メッセで(撮影:吉川忠行)

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「先進技術に裏づけされた機能美に加え、人の感性に訴えかける美しさを表現した」─。本田技研工業<7267>の福井威夫社長は19日、東京モーターショーの記者発表で、ステージに並べられた3台のコンセプトカーを紹介した。環境配慮や低燃費を重視した技術をめぐって各社がそれぞれ手法をアピールする中、福井社長は「先進技術のキーはパワートレイン(エンジン、トランスミッション)」と強調。エンジンとモーターを併用するハイブリッド技術を争うトヨタに対し、ホンダはVTEC(可変バルブタイミング・リフト機構)技術や、気筒休止技術などを進化させたこだわりのエンジンを3年以内に市販車に投入すると、独自の戦略を示した。

 「究極のパワートレインは燃料電池」(福井社長)として、7、8年先の技術進化を盛り込んだのが今回出品された中型セダン「FCXコンセプト」(全長4.72メートル、全幅1.87メートル、全高1.43メートル、定員4人)。水素から電子を取り出し、エネルギーを出力する燃料電池システムで、世界トップレベルの高出力化を実現。スペースを要した電池などをこれまでの半分に小型化して、床下に収納した新開発の低床車台「V Flow F.C.プラットフォーム」を採用したことで、広い車内空間を確保したという。

 課題だった航続距離も、従来比で2倍の水素5キログラムを搭載させることで、既存の燃料電池車より100キロメートル以上長い560キロメートル程度の水準まで向上、ガソリン車・上級セダンの600キロメートルに近づいた。福井社長は「環境性能だけでなく、走る楽しさや快適性でもガソリン車をしのぐものにしたい。水素タンクなど主要部品のさらなる小型・効率化を鋭意進める」と実用化に意欲を示した。

 そのほか、運転手のみならず乗員みんなが高い走行性能を楽しむことをコンセプトにした次世代スポーツカー「SPORTS 4コンセプト」(全長4.58メートル、全幅1.85メートル、全高1.36メートル、定員4人)も発表。同車には、昨年春に開発され、上級セダン「レジェンド」のみで採用されている先進技術のSH-AWD(4輪駆動力自在制御システム)を搭載。後輪の駆動力が左右それぞれ最適な水準に制御されるため、旋回時に安定した走りを発揮する。座席も4席それぞれが独立したバケットシートになっており、快適性も高い。

 さらに、愛犬を「家族の一員」として一緒に快適なドライブが楽しめる「W.O.W(ワウ)コンセプト)」(全長3.98メートル、全幅1.72メートル、全高1.68メートル、定員6人、4人+“1匹”)を提案。同社の小型ミニバン「モビリオ」より一回り小さい車体に独立シートが前後2席の4人乗り。後席を後方にスライドして、床下に収納された座席を出せば6人乗り、そのクッション持ち上げれば愛犬用の特等席になる。小型犬には、インパネ部分にスペースがあり、愛犬と“会話”しながらドライブもできる。また、ドアは電動スライド式で前後の両方に開き、乗り降りも楽にできる。

 ホンダのテーマは「FINE!」。「独自の先進技術やデザインを磨き上げることで、運転の楽しさ、環境性能、安全性能などすべての分野において、お客様の期待を大きく超える価値を提供したい」(福井社長)として、コンセプトカー3車種、市販乗用車20車種と、燃料電池の実用化を想定して家庭での水素供給を可能にするHES(ホーム・エネルギー・ステーション)など先進技術を展示した。

この企画では、21日に開幕した「第39回東京モーターショー」の開催中、出展する国内主要メーカーごとに、社長イチオシのコンセプトカーを紹介。次回はトヨタ自動車の最高級ブランド「レクサス」を予定。【了】

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