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鹿児島市で12月中旬、アパートが全焼し、焼け跡から4人の遺体が見つかるという惨事が起きた。この火災のあと、このアパートに住む30代の女性が、火の不始末をそのままにしてわざと消火しなかったとして、現住建造物放火の疑いで逮捕された。

報道によると、今回の火災は、アパート1階にある女性の部屋で、火の不始末から出火したのが原因だとされる。女性は居間のこたつに座ったまま、燃え広がる火を眺めていたのだという。警察の調べに対して「火を消さなかったことは間違いない」と供述したそうだ。

結果的に、女性が住むアパートと隣接する住宅が全焼してしまったのだが、女性は自ら火をつけたわけではない。なぜ、消火しないことが「放火」とされるのだろうか。刑事事件にくわしい伊藤諭弁護士に聞いた。

●出火させた人物には「火元を消す義務」がある

「火の不始末という『過失』により火事になっただけであれば、『失火罪』が成立するにとどまります」

伊藤弁護士はこう切り出した。だが、今回の逮捕容疑は、『失火罪』ではなく『放火罪』だった。火をそのまま放置することは、失火とは違うのか。

「自分の不始末で火がついたことに気づいた場合、消そうと思えば消せる状態が多いでしょう。

こうしたとき、自分以外に火を消せる人がいないのに、適切な措置をとらず、燃え広がるがままにした場合、自分自身がわざと火をつけた『放火』と、危険性は変わらないと判断されるのです」

出火後の行動が問題になってくるということか。

「出火させた人物には、火元を消す義務があります。さらに、火を放置すれば建物に燃え移ってしまうことが分かったときには、建物に燃え移らないように消火する義務があります。

昭和33年3月11日の最高裁判決では、自らの過失がきっかけで、部屋の中にある書類を燃やしてしまい、わざと放置した者に対して、現住建造物等放火罪の成立を認めています」

確かに今回のケースでも、火を放置していたようだ。

「出火時刻は午前1時ごろで、自宅アパートの中の事件でした。女性が火に気づいたとき、『自分が消火しなければ、建物に燃え移って火事に発展する』ということが分かっていたのに、あえて放置した、ということであれば、現住建造物放火罪が成立すると考えられます」

寒さが続き、ストーブや暖炉など、火元になるものが多い季節だ。火事は大きな責任を伴うということを、改めて肝に銘じたい。

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
伊藤 諭(いとう・さとし)弁護士
1976年生。2002年、弁護士登録。横浜弁護士会所属(川崎支部)。中小企業に関する法律相談、交通事故、倒産事件、離婚・相続等の家事事件、高齢者の財産管理(成年後見など)、刑事事件などを手がける。趣味はマラソン。
事務所名:市役所通り法律事務所
事務所URL:http://www.s-dori-law.com/