今回も好視聴率だった池上彰氏のテレ東「選挙特番」

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 12月14日、第47回衆院選の投開票が終わり与党である自民・公明で3分の2超の安定政権となった。とりわけ公明党は小選挙区で立てた候補者すべて当選という躍進をみせた。

 そんな常勝ムード沸く公明党に冷や水を浴びせるかの如く切り込んだ男がいた。ジャーナリスト・池上彰氏である。池上は投開票が終了した夜に放送された『TXN衆院選SP 池上彰の総選挙ライブ』(テレビ東京系列)にて、前回同様、公明党創価学会の関係に鋭く切り込み、ロケでは公明党本部を訪問して“家宅捜索”まがいのあら探しまで行ったのだ。そして、投開票直後、山口那津男公明党代表に生中継でインタビューし「宗教と政治」の関係をのっけからぶつけたのだ。

池上 「(『公明党50年の歩み』のトップページに)池田大作さんが出ていますが?」

山口 「創立者ですから……」

 この池上の切り込みに創価学会員の間でも賛否が分かれているという。関西の創価学会幹部は、「学会とは関係のない私見」と断りを入れた上で筆者の取材にこう答えた。

池上氏の質問に学会への「悪意」を感じる?

「池上氏は、学会や公明党を正しく応援してくれてる。公明党創価学会、池田名誉会長が創立に携わった政党だ。世間にはさも池田名誉会長が政治に口出ししているかのような声もあるが、我々がそれに反論する機会はほとんどなかった。過去伝えられることのなかった“公明党創立者”という存在としての池田大作を放送で伝えてくれただけでもよしだと思う」(関西の創価学会支部長)

 公明党といえば創価学会と一体化しているかのような報道が多かった。前出の関西の創価学会の支部長のように「公明党創価学会の関係について誤解なく、正しく伝える」メディアが表れたことを歓迎するという声がある一方で、池上の取材の仕方に異を唱える学会員も少なくない。

「池上氏の質問の仕方そのものに公明党・学会への悪意を感じる。放送では公明党創立者として池田大作名誉会長の存在を炙り出して終わったが、これではまるで宗教者である池田大作公明党創立者であることが悪いことのような印象を視聴者に与えやしないか。そこは不満を覚える」(関東在住の創価学会幹部)

 この関東在住の創価学会幹部は、宗教と政治の関係について続けてこう語る。

創価学会に限らず、宗教者が政党を作ってはいけないということを世の中にはいう人がいる。しかしそれを認めてしまうと、どの宗教に属していようとも一切、政治に関われないという弊害が議論されるだろう。それこそ高潔で知識もある町の牧師や寺の住職が選挙に出られない。みずから選挙に出ずとも特定の政党への応援もできない。それが民主主義なのでしょうか。民主主義とは『政治と宗教に対して中立であること』ではないのでしょうか」

 相反する2人の学会員の感想だが、「どういった形でも放送で公明党創価学会を取り上げてくれたこと」は評価したいという点では一致している。

 また、この2人は今回の池上の選挙特番は公明党創価学会のお膝元・信濃町を取り上げていたが、「年配の学会幹部はマスコミへのアレルギーがあったのかメディアへの露出を嫌ったが、いまは積極的に出ている。公明党や聖教新聞社、創価大学だけではなく、今度は創価学会本部のなかももっとオープンにすべきだ。その姿勢を見せるだけでも世間の印象は変わってくる」と話す。

池田大作氏不在の中、ソフト路線化すすむ創価学会

 与党の“ブレーキ役”として、かつての自民党のハト派的な役割での存在感をみせつつある公明党。その支持母体である創価学会も、かつての閉ざされた雰囲気からオープンなそれへと変わりつつあるようだ。

「もともと我々(創価学会員という意味)は個人の集まりなのでオープンなのです。ただ人数も多いので調整に時間がかかるというだけ。大所帯ですから舵を切るのも大変。でも、一度決まるとその方向にまっしぐらです」(冒頭で紹介した関西の創価学会支部長)

 公の場に第3代創価学会会長であり、公明党や創価大学の創立者である池田大作名誉会長が姿を見せなくなって以来、学会を中心として「ソフト路線化」が進みつつあるという。

 戦後高度経済成長期からずっと右肩上がりで成長した創価学会も、与党参加政党の支持母体として、いまは安定成長の時代を迎えつつあるといったところか。すべての対応に「大人の余裕」が伺える。

(文/鮎川麻里子)