10月14日のスポニチに、「ブレーメン 柿谷に2度目オファー提示へ!今冬にも移籍実現か?」との見出しで、ドイツ・ブンデスリーガの名門であるヴェルダー・ブレーメンが柿谷選手に興味を示しているという内容の記事を掲載しましたが、これは全く事実に反することであります。

実は、ヴェルダー・ブレーメンの強化部及びスカウト部は、昨今のブンデスリーガに於ける日本人の活躍とその費用対効果、そして勤勉で和の心を持つ特性等を鑑みた結果、日本を欧州、中南米に次ぐ若手選手発掘の市場として認知するに至り、2012年の4月からJリーグに於けるスカウト活動を開始しています。

私はその前年の12月に、ヴェルダー・ブレーメンのGM補佐(当時)であるフランク・バウマン氏とチーフ・スカウトのフランク・オルデネヴィッツ氏(以下、オッツェ)から、同クラブの日本人選手獲得プロジェクトを支援して欲しい旨の依頼を受け、過去3回のJリーグに於けるスカウト活動に全て同席しているので間違いありません。

そして、その間20試合程のJリーグの試合をスカウトしましたが、チーフ・スカウトのオッツェが1軍即戦力と認めたのは、清武選手のみでした。清武選手に注目したのは、2012年4月28日に行われたホームでの対ジュビロ戦でのことでしたが、その試合には柿谷選手も出場していました。しかし、その際のオッツェの同選手に対する評価は、「プレーに傲慢さが垣間見える」というものでした。そして、その後もセレッソ大阪の試合は3試合見ていますが、その全てに柿谷選手が出場していたにもかかわらず、ついぞ彼の名前が挙がってくることは無かったのです。

従って、事実関係を確認すると、ヴェルダー・ブレーメンは一度も柿谷選手に関心を持ったことはなく(だからと言って、彼が才能の無い選手ということではありません。念の為・・・。)、スポニチに掲載された記事は、大嘘であることがお分かり頂けるかと存じます。

では、なぜこのような記事が掲載されてしまったのでしょうか。誰がこのガセネタをスポニチに提供したのでしょうか。古今東西の過去に起きたこの手の誤報を検証すると、以下のような予想を立てることが出来ます。あくまで私個人の予想ですので、決して事実を知っているわけではございません。念の為・・・。

「今、Jリーグで最も注目されている同選手の代理人が、彼の移籍金を釣り上げようと思案している時に、どこからかヴェルダー・ブレーメンが清武選手に興味を持っていることを聞きつけ、それを柿谷選手にすり替えることで柿谷選手の評価を挙げようと画策。そのガセネタを懇意にしているスポニチの記者に流した。要するにこの冬の移籍マーケットで、柿谷選手の値段を釣り上げようと、代理人が画策した。」

と、まあ、あくまでも憶測(念のため・・・)ではありますが、この手の話しは本場の欧州や南米ではよくあることなのであります。

因みにオッツェがこれまでに唯1人、即戦力と認めた清武選手ですが、ヴェルダー・ブレーメンが獲得に動いた時には、既にニュルンベルグと仮契約を済ませていて万事休す。その後の清武選手の活躍は皆様ご存知の通りで、私はヴェルダー・ブレーメンのチーフ・スカウトの眼力と申しますか、真贋を見分ける眼には恐れ入った次第です。

また、オッツェは大前選手がデュッセルドルフ移籍を決定付けた昨季のホームでの対FC東京戦も見ていますが、大前選手がハットトリックを決めたにもかかわらず、同選手の名前を挙げることはありませんでした。そして、先日、欧州の名手が揃ったセルビア代表を相手にしたときの柿谷選手のパフォーマンスを見た際に、オッツェが何故柿谷選手を獲得リストに挙げないのか、少しわかったような気がした次第です。

ということで、来る冬の移籍マーケットで、ブンデスリーガの名門であるヴェルダー・ブレーメンが柿谷選手を獲得することはありませんが、ひょっとすると別の選手の名前がスポニチを始めとしたスポーツ紙を賑わすことになるかも知れません。その可能性のある選手は、御本人はわかっていらっしゃると思うので、残り少ないJリーグの試合を泥臭く貪欲にプレーして頂きたいと願っています。チーフ・スカウトのオッツェは19日の朝、Jリーグ第4次スカウト活動のため関西国際空港に降り立ちます。