日本マクドナルドホールディングス・原田泳幸会長兼社長の発言が、テレビなどメディア界で波紋を広げている。

 1月半ばの会見で原田社長は、昨年の実績は商品・価格戦略で「見通しがあたらなかった」と反省の弁を述べた。
 既存店の売り上げは、12カ月のうち10カ月で前年を割り込んだのである。そこで打ち出した方針が、朝食メニュー「朝マック」を強化し、300円の新しい低料金メニューを増やす計画。このほか、従来の朝食セットも値下げし、宅配事業も本格化する、というもの。

 そして話題となっているのが、宣伝費に関する発言だった。
 「昨年比約“6倍”の広告宣伝費を投入して周知を徹底、朝食時間帯の売り上げを10%以上伸ばす」

 だが、これに多くの広告関係者は驚くと同時にクビを傾げた。マクドナルドHDの年間宣伝費は『60億円規模』(有価証券報告書記載による23年12月期実績、ほかに販売促進費が60億円ある)だが、これを6倍に増やすとなれば『360億円』にもなる。
 この額は中規模自動車メーカーの年間宣伝費にあたり、'13年に使いきれば年間広告費投入企業のベスト10に入るのは間違いない。

 '12年12月期の同社決算は目下集計中だが、売り上げ2950億円、経常利益が243億円、最終利益が125億円の見込み。
 '13年12月期では売り上げを伸ばし、経常利益を上乗せする方針だが、どうみても『360億円』の広告宣伝費をひねり出すのは難しい。また、いくら売り上げを伸ばしても赤字になる可能性は高い。そのため、こんな声も聞かれる。
 「“6倍”というのは“6割増し”の勘違い発言ではないか。あるいは紙媒体やラジオなどを除いたテレビCMに限定した額ではないか、などさまざまな見方が飛びかっている。ただ、マクドナルドHDは有利子負債が5億円、利益剰余金が1065億円もあるため資金的余裕はある」(大手広告代理店関係者)

 もし事実なら、電通やテレビ局の幹部はほくそえんでいるはずだが、そんな話は流れていない。
 マクドナルドHDの決断は、どう転ぶ…。