ヤンなで韓国撃破!スタンドでは摩擦が起きる中、楽しいサッカーで準決勝進出の巻。
オトナになんかならなくていい!

最近のアニメの世界では「日常系」「空気系」などと呼ばれる作品群が人気だそうです。平凡なキャラクターが平凡な仲間たちとありふれた世界で作り出す日常を描いた作品性。とりとめもない話と、何も起きない毎日。大きなピンチも大きなチャンスもない平和な世界を、視聴者は静かに観察する。それが心地よいのだといいます。

僕にとってヤングなでしこはそうした存在。アニメタイトル風に表現すれば「やんなで!」という作品を見ているような感覚です。彼女たちは今世界一をかけて戦っています。戦っているはずです。しかし、そこにはピリピリしたムードはなく、戦地に赴く悲壮感もありません。いつものお友だちとキャッキャウフフしながら、部活の練習試合にでも臨むようなリラックスムード。

とかく日本人は気を引き締めるのが大好きです。試合前はもちろん、1点取れば「まだ同点の気持ちで」と気を引き締め、2点取れば「2-0が一番危ない」と気を引き締め、3点取れば「無失点でいかなければ意味がない」と気を引き締め、試合に勝てば「これで終わりではない」と気を引き締め、まるで人生の終わりまで見据えるかのように気を引き締めています。それは疲れるのです。リラックスできないのです。

そんな中、ヤンなでは心地いい。ポワーンとしていて気持ちいい。難しいことは考えず、楽しく今を生きている。彼女たちにとって、スタンドで展開されていた旭日旗持ち込みを巡るいざこざなど、どこ吹く風。監督の指示も聞こえなかったフリしちゃうし、松木安太郎さんにお願いされた「Y」ポーズだってやっちゃう。心のおもむくままに。

僕の尊敬する漫画家の小田原ドラゴン先生はこんなことを言っています。「いつか中2牧場を作りたい」と。それはつまり、中学2年生の女子を放牧する牧場を作り、ワインでも飲みながら見守る生活をしたいという夢の話です。実現するのは大変難しい話ですが、ヤンなでには少しだけその匂いを感じます。芝生の上でノビノビと遊ぶ少女たちを見守っているような感覚を。そこが、なでしこにはない、オトナにはない魅力ではないか…僕はそう思うのです。

いつか彼女たちもオトナになるのでしょう。上手に自分を整えていくのでしょう。でも今はまだU-20。オトナじゃなくてヤングです。整えるのは最後で大丈夫。自分の尖った部分を、伸びる部分を、面白い部分をどんどん出してほしい。オトナになる前の楽しい少女時代を、もう少しの間だけ見せてほしい。いつか僕の腕の中で、オトナになるその日まで…。

ということで、ヤンなでが見事に準決勝進出を決めた、30日の「U-20女子ワールドカップ準々決勝 日本VS韓国戦」をチェックしていきましょう。