テニスの錦織圭が、全豪オープンでベスト8になった。準々決勝では世界ランク4位のアンディ・マレーにストレート負けを喫したが、自分のテニスを出し切っての負けに、収穫も多かったようだ。彼の表情からもそれは見て取れるね。

4大大会での日本人男子のベスト8入りは、1995年ウィンブルドン選手権の松岡修造氏以来だという。17年ぶりを、喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか。というのは、これは日本のスポーツ全般の課題とも言えるが、次から次へと優秀な選手が生まれてくる土壌、スポーツ文化と言えるものが、やはりこの国にはまだないのだ。
  
錦織は、ソニーの盛田正明が運営する「盛田正明テニス・ファンド」対象選手となり、渡米した。アメリカというスポーツ文化の中で育ったからこその、稀有な才能である。アメリカに行かなかったら、ここまでの選手になっていたかどうか、ふと考えてしまう。
 
スポーツ文化とは、簡単に言えばスポーツがポピュラーであるかどうかだ。ポピュラーというのは、人々の生活の中にスポーツが入り込み、いつでも、どこでも、だれでも、どんな種目においても、人々がスポーツに接することができることだと思っている。
 
学校社会における部活スポーツが主になる日本では、基本的に一人の選手は一つの種目でしかプレーできない。競技間の垣根を飛び越えるには、登録の問題などがあり、非常に難しい。
 
有能な選手の出現は、確率の問題だと思っている。子どもたちが複数の種目をプレーし、その中で自分がもっとも才能を発揮できる種目を選んでいくことができれば、その確率はぐっと高くなる。
 
日本が世界の強豪に比べて劣るのは、体格やメンタリティの問題などではない。持っている宝くじの枚数が少ないだけだ。スポーツがもっとポピュラーなものとなり、パイが広がっていけば、第二、第三の錦織はまたすぐに生まれてくると思うし、そうなってほしいと強く願っているよ。