すったもんだの末に、今年船出となる横浜DeNAベイスターズ。祝福ムードの一方、「親会社が代わるまで応援をやめる」と決別を宣言した人もいる。大洋ホエールズ時代からの熱烈なファンとして知られる漫画家のやくみつる氏だ。



 昨年11月、DeNAによるベイスターズ買収を受けて発せられたやく氏のコメントは、野球ファンにちょっとした衝撃を与えた。何しろ、横浜ファンの第一人者。本業の漫画、雑誌のコラム、テレビなどで、やく氏の熱狂ぶりを目にした人は少なくないだろう。そんなやく氏が横浜に決別宣言とは‥‥。ご本人を直撃すると、きっぱりかつ淡々と、こう答えるのであった。

「どんな娯楽にも何らかの“利”があるものです。しかし、DeNAが運営する携帯電話向けゲーム(モバゲー)は、何ら得るものがなくただ時間とお金の空費につながるものだと思っています。そういう事業で稼いだアブク銭で巨万の富を得たのでしょうが、その金を野球につぎ込んでもらわなくても結構ということです」

 DeNAの運営するモバゲーの課金システムや常習性は、商品としての健全性に欠けると主張するやく氏。自身も、テレビゲームこそやらなかったが、サイコロなどを使った遊びに熱中した経験もあるという。振り返れば、もっと時間を有効に活用して勉強する時間も作っておくべきだったという思いがあるという。

 それにしても、長年応援してきた球団との決別に際し葛藤はなかったのか。

「ベイスターズへの愛情が薄れてきてはいたんです。特に最下位を続けてきたここ4年は、はっきり言って魅力を感じなかった。よそのチームなら一軍には入れないだろうなという選手でオーダーを組んでいましたから。そのわりには練習量も少なかった。DeNAの件が引き金にはなりましたが、それ以前から考えていたことではあったので葛藤は別にありませんでした」

 やく氏は、売却したTBSの球団運営にも違和感を持っていたそうだ。自局のワイドショーでベイスターズコーナーを設ける、司会のみのもんたに応援させる、局内の自販機の紙コップに球団のマークを入れるなどという手法に“取って付けた感”があったという。

「そんなことよりフロント強化や戦力補強を優先させるべきなのに、そこに力を入れているようには見えなかった。いかにもお荷物を引き受けてしまったというムードを感じました」

 もちろん、野球が嫌いになったわけではない。ここ数年でベイスターズの勝敗にヤキモキするのではなく、その日のベストゲームを視聴する習慣がついたからだ。が、すぐに他球団に乗り換える気持ちにもなれないという。そこで、激烈に批判したDeNAに最後にこう「チャンス」を与える。

「いかにも漁業会社をバックにしたチームらしい豪快な野球をする大洋ホエールズの試合に魅せられてファンになった。DeNAも新業種に遠洋漁業を加えてみろ。そうすればファンに戻りますよ」