1月2日に柏の葉公園総合競技場で行われた鹿島学園(茨城)対國學院久我山の試合は、2−1で國學院久我山が逆転勝利を収めた。

「國學院久我山が求めるつなぐサッカースタイル」(スポナビ)

以下、試合後のミックスにて筆者が國學院久我山の李済華監督に質問をした箇所。




――今日のチームのパフォーマンスへの評価は?少しミスが目立つ印象でしたが?

李監督
 今の高校生は、人工芝で慣れているので感覚が人工芝なんですよね。うちの学校も人工芝なので、天然芝だと感覚が少し違うんですよ。そういうところも前の1回戦も含めて、私たちみたいなチームは特に影響していると思います。それでも、そこをコントロールできるようにならないと。ちょっとミスが(多かった)。

うちのキープレーヤーは何人かいるのですが、そのうちの一人の平野佑一が1年生ながらもキーをあそこ(中盤の底)で作るのに、あそこにミスが多かったので自分たちのリズムを作れなかった。もう1つ前、相手陣地に入った時は良かったんですけど。中盤の底のところは彼一人で担当しているので、負担が大きかったみたいですね。

あと、彼の場合はけがが心配ですね。(ギリギリ)間に合った子ですから。あそこがもう少し機能していれば、もう少し支配率は高まったんじゃないですかね。

――その平野選手が痛むシーンが多く、監督も心配そうな様子でしたが?

李監督
 使えないと思っていた選手ですから。(1回戦)前日までは使わない予定で、国立でやるその日(30日)に「大丈夫か、じゃあ使うか」となって、その日に使ったので。だから、今心配ですね。(今日の出来が)足の影響なのか、ただパフォーマンスの問題なのか気になるところなので後で確認したいと思います。

――先制されてからの逆転勝利だけに大きい一勝では?

李監督
 都大会から苦しい戦いをずっとやっていたので。だから子供たちもそう動揺はないんですよね。私も動揺はあんまりしていないんですよ。苦しい戦いを戦ってくると、子供たちに力を与えますよね。あと、この大会に来てなのか、右郄(静真)が絶好調なので感謝しないと。いつも怒っているばっかりなんで(苦笑)。感謝すると次の試合でパフォーマンスが下がってしまうかもしれないので、怒っていた方がいいのかわからないですけど(笑)。1試合目から非常にパフォーマンスがいいですよ。

――右郄選手の調子の良さは大会前から感じていましたか?

李監督
 あいつはわかんないんですよ。パフォーマンスを示せばこのくらいやるというのはわかっているんですよ。彼は力を持っていると思いますよ。高校サッカーにないタイプのセンターフォワードでしょうね。ボールを持てて、キープして、相手をやっつけて。今風のセンターフォワードだと思いますよ。いいプレーヤーだと思います。

――そういう選手がJユース(横浜FM・ユースへの)昇格ではなく久我山に来てくれたとういうのは、それだけ久我山のサッカーに魅力があるからではないですか?

李監督
 私たちは他の高校みたく熱心にスカウティングすることはないんですよ。まず勉強の成績がないと入ってこれないし、久我山というのはサッカー、サッカーの学校ではないので。逆に言うと、サッカーに集中したい、朝から晩までサッカーをやりたいという子もいるわけです。うちの学校はそう学校ではないので、連れてきちゃって「物足りない」と感じるような子もいるので、こちら側から積極的に獲りに行かないんですよね。

そういう意味で、彼は「ユースに上がれる」と言われていたみたいだけれど、私からすると「えっ、そうだったの?上がれたのに来たの?」という感じ(笑)。そういうスカウティングをして連れてきた子ではないですから、ありがたいですよね。うちの学校を選んでくれて。

サッカーのスタイルが良かったのか。どこかで一回だけ、「お前プロから話あったらどうすんの?」と聞いたことがって、「僕、大学行きます」と言うから、「あっそうなの?お前プロに行きそうな選手なのにね。そういうことだったの?」と言いました(笑)。彼なりに勉強も頑張っていますよ。

――よく「文武両道」と言われますけれど、久我山が短時間で効率的な練習をした上で、こういうサッカーをして勝っていることは、高校サッカー界に提言を投げかけてくれていると思います。

李監督
 今日、ウォーミングアップをやっている時に小さい子がいて、家族と一緒にあまりに熱心に見ているから、『君、何年生?』と聞くと『小学校4年生です』と。その時、お父さんが『久我山の中学を受験します』と言ってくれました。

久我山に入るために勉強するという子が来てくれたら、親も嬉しいし、子供も頑張るし学校も嬉しい。もっと言うと、東大に行けるんだけれど、サッカーも高いレベルでやりたい、という子がサッカーを捨てずにすむ。東大に行くなら一般的には違うところ、超進学校に行くわけですよね。文が武を助けて、武が文を助けるという本当の意味での文武両道、(文と武の)相乗効果を出せるような学校になりたいですね。

子供たちが勉強する時間を与えないと行けないという意味も含めて、今がちょうどいいんですよ。2時間の練習を250日やったとして、大体高校サッカーというのはどのくらいでしょう?うちは休みが多いので、(練習を)270日くらいやるんですかね、一回トータルの統計をとってみないとわからないですけど、(1日の練習に)2時間かける270日なら合計540時間くらいやっているわけですよ。そしたら十分上手くなりますよ。

――李監督の「オフ」、「休み」に関する考え方は?

李監督
 よく言われているように、休みもトレーニングだし、トレーニングという意味でオフは本当に休養すればいいと思います。映画も行くし、デートに行く子もいるし、音楽も聞くし。私たちが昔、京都へ遠征に行くとやっぱり寺巡りする子もいる。残ってずっと受験勉強をやっている子もいるし、川があるようなところでは釣りに行く子もいる。私自身はそういうの大好きですね。

私はこういう学校だから長くいられたと思いますよ。朝から晩までガーッと教えるタイプの監督ではないので。そういう学校だったら、私は辞めていたと思いますよ。この学校は私にも時間を与えてくれていると思いますよ。

――朝練をやってビシバシ鍛えるような感じではないと?

李監督
 学校的にも許されていませんから。

――完全下校は19時でしたっけ?

李監督
 普段は18時30分が完全下校ですから。いつも大会の時に試験が入ってしまうんです。中間、期末テストが。そういう時は、週に2回、1時間半のトレーニングしか許可も出ません。それは選手権中であっても同じで、テスト期間中は日曜の試合はダメ。

試合もさせてくれませんから、平日の1時間半というので決まっています。少しコンディションが落ちる時は実際にあるんです。かなり勉強をやりますから。目を真っ赤にして、「お前、何時間寝たの?」と聞くと、「3日間で10時間くらい」という感じ(苦笑)。

それも含めて入って来た子たちですから。久我山が求める生徒像、選手像を実現させて欲しいと思うから、学校側に私から「もっと練習させて下さい」と要求したこともない。そういうものであり、そこでできる子がうちで勝ち残れる子という認識ですから。

(了)




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