タイガース 岩田稔選手の成績分析 −模擬査定してみました−
いろいろあった2011年も終わりが近づいてまいりました。プロ野球は契約更改の季節で,毎年査定を巡った悲喜こもごものニュースが溢れます。
さて,そのような契約更改のニュースの中,個人的にはひとつ注目のニュースがありました。いつかと入りあげようと思っていたら,既に終わってしまっていたのですが,阪神タイガースの岩田稔選手(以下,岩田選手)の契約更改についてです。ニュースの記事はこちら。
契約更改で合意に至らず保留するというニュースは毎年のことですが,岩田選手が特別なのは,自分の成績をセイバーメトリクスのデータを用いて評価するよう求めます。しかしながら,球団側は
「セイバーのこととか出してきてましたが,うちの球団にはないので」
と,査定法が違うため,岩田選手の要求を退けました。その後の交渉によって契約更改に至りましたが,こういう選手はいつか出てくると思っていましたが,とうとう出てきたという感じです。
個人的には,査定方法が異なるからという理由だけで,選手の要求を退けたのはあまり良い方法だったとは思えません。選手の側からしてみれば,自分のやった仕事を正しく評価して欲しいと主張しているのに,その方法はウチでは採用していないと答えられては,球団の査定方法への不満とつながり,感情的なしこりが残ってしまうことも考えられます。杉内選手の例もあるように,今後とも良好な関係を続けたいのであればできればお互い納得して交渉を終えたいところです。
また,現在の査定法と違うからといって,球団側もこうしたセイバーメトリクスを用いた評価は選手をよりシビアに評価できるというメリットがありますので,将来的には導入したほうが良いのではないかと思います。とはいえ,速やかな移行というのもなかなか期待できそうもなく,今年は阪神と岩田選手の間でこうした行き違いが生じましたが,来年以降も別のチームでこうした問題が起こるかもしれません。そこで,私はこうした問題を調整するエージェント業を始めようと思っています,というのは冗談ですが,データを扱える専門化によるサポートが今後は必要となってくるかもしれません。
さて,ニュースによると,岩田選手用意したデータとは以下のものになります。
・クオリティ・スタート率(※1)がリーグ3位の84%
・WHIP(※2)がリーグ4位の0.982
※1 クオリティ・スタート(Quality Start QS)
先発投手が6イニング以上登板で自責点3以下の場合達成。QS率=QS/先発登板数(%)
※2 WHIP(Walks plus Hits per Inning Pitched,「投球回あたり与四球・被安打数合計」))
WHIP=(被安打+四球)/投球回数
この成績は確かに素晴らしいものですが,ツッコミどころが無いわけではありません。そこで,もし私が阪神タイガースの査定担当だったらというイメージで,岩田選手の主張にツッコミを入れつつ,その他のデータを含めて岩田選手を評価するという模擬査定を今回はやってみたいと思います。
岩田選手の主張のツッコミどころ
まず問題となるのは,成績の価値を順位で主張しているところです。ペナントレースの順位表を見てもらえればよくわかりますが,リーグや年度が違えば同じ順位でも優勝したチームとのゲーム差は異なります。したがって,成績がどのくらいの価値を持っているかというのは,自分の成績が他の選手と比較してどれくらい優れていたかを示す必要があるでしょう。
次に,投球内容を示すデータとして,WHIPを用いていますが,WHIPの評価内容にも含まれる被安打というのは,投手の責任だけでなく野手の守備力にも依存します。できれば,もう少し他のデータからも投球内容を評価する必要があるでしょう。
というわけで,今回は2011年のNPB12球団で5試合以上先発した投手101名を対象に各種データを集め,この101名の中で岩田投手がどのように位置づけられるかを検証し,彼の価値を査定したいと思います。分析データは「プロ野球ヌルデータ置き場」様を参照しています。
阪神タイガース先発投手陣一覧
まずは,岩田選手を含む阪神の先発投手陣一覧のデータを表1〜3に示します。
これらのデータを用いて岩田選手を評価して行きたいと思います。
勝ち星とクオリティ・スタートとの関係
まずは,勝ち星とクオリティ・スタートとの関係について見てみたいと思います。図1にデータを示します。以降図中の敬称は略します。
この図の見方ですが,右に行くほどQS率が高く,上に行くほど勝利数が増えます。岩田選手のデータを赤い◆で示しました。参考までに他の阪神の投手のデータをオレンジ色の◆で示しています。
勝ち星とQS率との相関分析をした結果,相関係数は .793となりました。これはかなり強固な相関関係で,QS率が高くなるほど勝ち星が増えることを示しています。しかしながら,岩田選手の場合は,QS率のわりには勝ち星に恵まれてはいないことがわかります。これはなぜでしょうか。
防御率と援護率の関係
岩田選手の勝ち星が振るわなかった原因として,防御率と援護率(打線の得点援護)を見てみたいと思います。データを図2に示します。
この図の見方ですが,防御率は低いほど優れており,援護率は高いほど投手を楽にしてくれます。したがって,図中の右下の領域にある選手ほど勝ち星を重ね易く,たとえ防御率が低くても,援護の低い場合はなかなか勝ち星が稼げなくなってしまいます。このデータについても岩田選手と阪神投手陣の成績を示しておきます。
データを見ると,登板機会の少ない鶴選手は例外として,岩田選手は阪神の中でも,全体の中で見てもかなり援護の少ないことがわかります。防御率と援護率の間の間には相関はなく,投手自身の力でどうこうできるものではありません。ちなみに,岩田選手は2回目の交渉で,
「味方が点を取るまでゼロで抑えたい」
といっていますが(ニュースの記事はこちら。),味方が点を取ってくれなかったことの責任は岩田選手にどれくらいあるものでしょうか。
WHIPと防御率の関係
次に,岩田選手も主張していたWHIPについて,防御率と一緒に見て行きたいと思います。データを図3に示します。
WHIPは大雑把に言うと,どのくらい投手が出塁を許したかという指標ですので,防御率もかなり高い相関関係を示しています。ここでも,岩田選手と阪神投手陣のデータは色を変えて示しています。データを見ると,岩田選手が阪神投手陣の中では最も優れているし,全体的に見てもトップレベルであることがわかります。
奪三振率と与四球率の関係
さて,WHIPは岩田選手も主張したとおり素晴らしい成績でしたが,WHIPは投手の実力に加え野手の守備力に左右されてしまう面があります。そこで,野手の守備力に左右されない投手の成績である「奪三振率」,「与四球率」,「被本塁打率」についても見て行きたいと思います。
まずは,奪三振率と与四球率についてデータを図4に示します。
このデータは,奪三振率が高いほど優れており,与四球率が低いほど優れていることを示しています。ここでも,岩田選手と阪神投手陣のデータは色を変えて示しています。データを見ると,岩田選手の与四球率はチーム最高で,能見選手がそれに近いレベルにあることがわかります。奪三振率については,能見選手がチーム最高で,岩田選手の奪三振率も低いわけではありませんが,メッセンジャー,スタンリッジ両外国人投手と同レベルとなっています。
被本塁打率とFIPについて
次は,被本塁打率とFIPを見てみたいと思います。FIP (Fielding Independent Pitching )とは,「奪三振率」,「与四球率」,「被本塁打率」の総合指標で,
FIP=(被本塁打×13+(与四球+与死球−敬遠四球)×3−奪三振×2)/投球回数+3.12
で計算されます。この値が小さいほど優れていることを示します。それでは,データを図5に示します。
被本塁打率について,登板回数の少なかった下柳選手と鶴選手を除くと,岩田選手,能見選手,メッセンジャー選手が同じくらいのレベルです。この中では奪三振率の優れている能見選手がFIPの成績が最も優れています。
以上,野手の守備力に左右されない投手の成績である「奪三振率」,「与四球率」,「被本塁打率」の成績を見ると,岩田選手も優れた成績を残してはいますが,この成績に関しては同僚の能見選手の方が優れているようです。
野手からのサポートについて
WHIPは投手の実力に加え野手の守備力に左右されてしまうと指摘しましたが,どの程度影響を受けていたのでしょうか。これを数値化するのはなかなか難しいところですが,参考となる指標が無いわけではありません。それは被BAIPという指標です。これは,以下のような計算式で求められます。
被BABIP=(被安打数−被本塁打数)/(被打数+被犠打+被犠飛−被本塁打−奪三振)
一般にBABIPは運の指標と考える方が多いですが,実際のところは本塁打以外でフィールドに飛んだ打球の安打になる割合なので,運と野手の守備力が混在した指標と見てよいと思います。このデータを用いて,野手の守備力の影響を受けないFIPとの関連を見てみたいと思います。データを図6に示します。
FIPと被BABIPはともに値が低いほうが優れた成績となります。FIPと被BABIPの相関分析を行ったところ,相関係数は .325となりました。この結果は,FIPが高くなるほど被BABIPも高くなることを示しています。このデータでも,岩田選手と阪神投手陣の成績を示していますが,岩田選手の被BABIPが際立って優れていることがわかります。FIPは能見選手の方が優れているのに,岩田選手の被BABIPの方が優れているのですから,運が良かったのか,野手の守備によるサポートが良かったのかはわかりませんが,岩田選手の成績は自身でコントロールできる以外の部分からのサポートを受けていたと考えることができます。
まとめ
以上の分析より,岩田選手の2011年の成績は以下のようにまとめることができます。
・クオリティ・スタートの条件は満たしていたが,勝ち星が少なかった。
・味方打線からの援護が少なかった。
・防御率とWHIPはかなり優れていた。
・FIPは優れていたが,同僚の能見選手の方が優れていた。
・被BABIPが極めて優れており,自身の能力以外のサポートがあった可能性が高い。
これらのデータから,阪神サイドは岩田選手の主張に対して,ウチの査定基準とは違うと突っぱねずに,
「君の成績は優秀だった。そこはとても感謝しているし,評価もしている。しかし,データを見ると,運のお陰か野手の守備のお陰かはわからないが,投手の実力以外の部分のサポートも受けているようだから,今回はこれくらいの額で我慢して欲しい。ただし,君の主張でこちらとしても勉強になったから,その分は色を付けさせて欲しい」
と,2回目の交渉で500万円くらいプラスして6,000万円くらいを提示すべきだったのではないか,というのが今回の模擬査定の結論になります。既に他の選手の査定は済んでいたりもするのだから,今年できるものではこんなものではないでしょうか。果たして,岩田選手が納得してくれるかはわかりませんが……。
さて,そのような契約更改のニュースの中,個人的にはひとつ注目のニュースがありました。いつかと入りあげようと思っていたら,既に終わってしまっていたのですが,阪神タイガースの岩田稔選手(以下,岩田選手)の契約更改についてです。ニュースの記事はこちら。
「セイバーのこととか出してきてましたが,うちの球団にはないので」
と,査定法が違うため,岩田選手の要求を退けました。その後の交渉によって契約更改に至りましたが,こういう選手はいつか出てくると思っていましたが,とうとう出てきたという感じです。
個人的には,査定方法が異なるからという理由だけで,選手の要求を退けたのはあまり良い方法だったとは思えません。選手の側からしてみれば,自分のやった仕事を正しく評価して欲しいと主張しているのに,その方法はウチでは採用していないと答えられては,球団の査定方法への不満とつながり,感情的なしこりが残ってしまうことも考えられます。杉内選手の例もあるように,今後とも良好な関係を続けたいのであればできればお互い納得して交渉を終えたいところです。
また,現在の査定法と違うからといって,球団側もこうしたセイバーメトリクスを用いた評価は選手をよりシビアに評価できるというメリットがありますので,将来的には導入したほうが良いのではないかと思います。とはいえ,速やかな移行というのもなかなか期待できそうもなく,今年は阪神と岩田選手の間でこうした行き違いが生じましたが,来年以降も別のチームでこうした問題が起こるかもしれません。そこで,私はこうした問題を調整するエージェント業を始めようと思っています,というのは冗談ですが,データを扱える専門化によるサポートが今後は必要となってくるかもしれません。
さて,ニュースによると,岩田選手用意したデータとは以下のものになります。
・クオリティ・スタート率(※1)がリーグ3位の84%
・WHIP(※2)がリーグ4位の0.982
※1 クオリティ・スタート(Quality Start QS)
先発投手が6イニング以上登板で自責点3以下の場合達成。QS率=QS/先発登板数(%)
※2 WHIP(Walks plus Hits per Inning Pitched,「投球回あたり与四球・被安打数合計」))
WHIP=(被安打+四球)/投球回数
この成績は確かに素晴らしいものですが,ツッコミどころが無いわけではありません。そこで,もし私が阪神タイガースの査定担当だったらというイメージで,岩田選手の主張にツッコミを入れつつ,その他のデータを含めて岩田選手を評価するという模擬査定を今回はやってみたいと思います。
岩田選手の主張のツッコミどころ
まず問題となるのは,成績の価値を順位で主張しているところです。ペナントレースの順位表を見てもらえればよくわかりますが,リーグや年度が違えば同じ順位でも優勝したチームとのゲーム差は異なります。したがって,成績がどのくらいの価値を持っているかというのは,自分の成績が他の選手と比較してどれくらい優れていたかを示す必要があるでしょう。
次に,投球内容を示すデータとして,WHIPを用いていますが,WHIPの評価内容にも含まれる被安打というのは,投手の責任だけでなく野手の守備力にも依存します。できれば,もう少し他のデータからも投球内容を評価する必要があるでしょう。
というわけで,今回は2011年のNPB12球団で5試合以上先発した投手101名を対象に各種データを集め,この101名の中で岩田投手がどのように位置づけられるかを検証し,彼の価値を査定したいと思います。分析データは「プロ野球ヌルデータ置き場」様を参照しています。
阪神タイガース先発投手陣一覧
まずは,岩田選手を含む阪神の先発投手陣一覧のデータを表1〜3に示します。
これらのデータを用いて岩田選手を評価して行きたいと思います。
勝ち星とクオリティ・スタートとの関係
まずは,勝ち星とクオリティ・スタートとの関係について見てみたいと思います。図1にデータを示します。以降図中の敬称は略します。
この図の見方ですが,右に行くほどQS率が高く,上に行くほど勝利数が増えます。岩田選手のデータを赤い◆で示しました。参考までに他の阪神の投手のデータをオレンジ色の◆で示しています。
勝ち星とQS率との相関分析をした結果,相関係数は .793となりました。これはかなり強固な相関関係で,QS率が高くなるほど勝ち星が増えることを示しています。しかしながら,岩田選手の場合は,QS率のわりには勝ち星に恵まれてはいないことがわかります。これはなぜでしょうか。
防御率と援護率の関係
岩田選手の勝ち星が振るわなかった原因として,防御率と援護率(打線の得点援護)を見てみたいと思います。データを図2に示します。
この図の見方ですが,防御率は低いほど優れており,援護率は高いほど投手を楽にしてくれます。したがって,図中の右下の領域にある選手ほど勝ち星を重ね易く,たとえ防御率が低くても,援護の低い場合はなかなか勝ち星が稼げなくなってしまいます。このデータについても岩田選手と阪神投手陣の成績を示しておきます。
データを見ると,登板機会の少ない鶴選手は例外として,岩田選手は阪神の中でも,全体の中で見てもかなり援護の少ないことがわかります。防御率と援護率の間の間には相関はなく,投手自身の力でどうこうできるものではありません。ちなみに,岩田選手は2回目の交渉で,
「味方が点を取るまでゼロで抑えたい」
といっていますが(ニュースの記事はこちら。),味方が点を取ってくれなかったことの責任は岩田選手にどれくらいあるものでしょうか。
WHIPと防御率の関係
次に,岩田選手も主張していたWHIPについて,防御率と一緒に見て行きたいと思います。データを図3に示します。
WHIPは大雑把に言うと,どのくらい投手が出塁を許したかという指標ですので,防御率もかなり高い相関関係を示しています。ここでも,岩田選手と阪神投手陣のデータは色を変えて示しています。データを見ると,岩田選手が阪神投手陣の中では最も優れているし,全体的に見てもトップレベルであることがわかります。
奪三振率と与四球率の関係
さて,WHIPは岩田選手も主張したとおり素晴らしい成績でしたが,WHIPは投手の実力に加え野手の守備力に左右されてしまう面があります。そこで,野手の守備力に左右されない投手の成績である「奪三振率」,「与四球率」,「被本塁打率」についても見て行きたいと思います。
まずは,奪三振率と与四球率についてデータを図4に示します。
このデータは,奪三振率が高いほど優れており,与四球率が低いほど優れていることを示しています。ここでも,岩田選手と阪神投手陣のデータは色を変えて示しています。データを見ると,岩田選手の与四球率はチーム最高で,能見選手がそれに近いレベルにあることがわかります。奪三振率については,能見選手がチーム最高で,岩田選手の奪三振率も低いわけではありませんが,メッセンジャー,スタンリッジ両外国人投手と同レベルとなっています。
被本塁打率とFIPについて
次は,被本塁打率とFIPを見てみたいと思います。FIP (Fielding Independent Pitching )とは,「奪三振率」,「与四球率」,「被本塁打率」の総合指標で,
FIP=(被本塁打×13+(与四球+与死球−敬遠四球)×3−奪三振×2)/投球回数+3.12
で計算されます。この値が小さいほど優れていることを示します。それでは,データを図5に示します。
被本塁打率について,登板回数の少なかった下柳選手と鶴選手を除くと,岩田選手,能見選手,メッセンジャー選手が同じくらいのレベルです。この中では奪三振率の優れている能見選手がFIPの成績が最も優れています。
以上,野手の守備力に左右されない投手の成績である「奪三振率」,「与四球率」,「被本塁打率」の成績を見ると,岩田選手も優れた成績を残してはいますが,この成績に関しては同僚の能見選手の方が優れているようです。
野手からのサポートについて
WHIPは投手の実力に加え野手の守備力に左右されてしまうと指摘しましたが,どの程度影響を受けていたのでしょうか。これを数値化するのはなかなか難しいところですが,参考となる指標が無いわけではありません。それは被BAIPという指標です。これは,以下のような計算式で求められます。
被BABIP=(被安打数−被本塁打数)/(被打数+被犠打+被犠飛−被本塁打−奪三振)
一般にBABIPは運の指標と考える方が多いですが,実際のところは本塁打以外でフィールドに飛んだ打球の安打になる割合なので,運と野手の守備力が混在した指標と見てよいと思います。このデータを用いて,野手の守備力の影響を受けないFIPとの関連を見てみたいと思います。データを図6に示します。
FIPと被BABIPはともに値が低いほうが優れた成績となります。FIPと被BABIPの相関分析を行ったところ,相関係数は .325となりました。この結果は,FIPが高くなるほど被BABIPも高くなることを示しています。このデータでも,岩田選手と阪神投手陣の成績を示していますが,岩田選手の被BABIPが際立って優れていることがわかります。FIPは能見選手の方が優れているのに,岩田選手の被BABIPの方が優れているのですから,運が良かったのか,野手の守備によるサポートが良かったのかはわかりませんが,岩田選手の成績は自身でコントロールできる以外の部分からのサポートを受けていたと考えることができます。
まとめ
以上の分析より,岩田選手の2011年の成績は以下のようにまとめることができます。
・クオリティ・スタートの条件は満たしていたが,勝ち星が少なかった。
・味方打線からの援護が少なかった。
・防御率とWHIPはかなり優れていた。
・FIPは優れていたが,同僚の能見選手の方が優れていた。
・被BABIPが極めて優れており,自身の能力以外のサポートがあった可能性が高い。
これらのデータから,阪神サイドは岩田選手の主張に対して,ウチの査定基準とは違うと突っぱねずに,
「君の成績は優秀だった。そこはとても感謝しているし,評価もしている。しかし,データを見ると,運のお陰か野手の守備のお陰かはわからないが,投手の実力以外の部分のサポートも受けているようだから,今回はこれくらいの額で我慢して欲しい。ただし,君の主張でこちらとしても勉強になったから,その分は色を付けさせて欲しい」
と,2回目の交渉で500万円くらいプラスして6,000万円くらいを提示すべきだったのではないか,というのが今回の模擬査定の結論になります。既に他の選手の査定は済んでいたりもするのだから,今年できるものではこんなものではないでしょうか。果たして,岩田選手が納得してくれるかはわかりませんが……。
おわりに
以上,岩田選手の分析でした。ここまで長くなりましたが,お付き合いいただきありがとうございます。今回の分析のような感じで,分析して欲しい選手がいたらリクエストください。私も面白そうだと思ったら分析します。人気選手というよりは,何かテーマのある選手が個人的には好みです。
とりあえず,これで2011年の更新は終わりにしようと思います。来年もぼちぼちやっていきますので,またよろしくお願いします。
それでは良いお年を
追伸
最後に個人的な報告をさせてください。知らない方もいるとは思いますが,こことは別にBaseball Labというサイトでもコラムを執筆していたのですが,思うところがあって執筆陣から抜けさせてもらうことになりました。
「Baseball Labの方も読んでるよ」というコメントを時々いただいており,大変励みになっていたのですが,申し訳ありませんが今後はこちらでぼちぼちとやって行きたいと思います。
引用記事
・岩田“マネーボール”交渉不発でチーム保留1号
・岩田、前回提示と同じ5500万円でサイン
データ引用&参照サイト
・プロ野球ヌルデータ置き場
いつもお世話になっています
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