近い将来、スタジアムだけでなく自宅でサッカーを観るのも出費のかかる娯楽になるかもしれない。 クラブワールドカップの決勝を観ていて、改めてそう思った。

バルセロナのゴールシーンは、ボールを持っていない選手の動きが得点につながる大きな要素になった。だが、テレビではカメラアングルがボール保持者に近いため、オフザボールの動きを確認できない。日本のメディアが製作した映像には“引き”のカメラアングルがほとんどなかったため、サッカーに詳しい視聴者にとっては不満の残る試合映像だった。

試合内容が良くてもそれがうまく伝わらなければ魅力のあるコンテンツにはならない。

パスの出し手と受け手のコンビネーションやディフェンスとの駆け引きなど、ボールを持っていない選手の動きもサッカー観戦の醍醐味である。欧州では試合全体が映るように“引き”のカメラアングルがあるだけでなく、臨場感を出すためにどの瞬間にどこを映すかという細かい点も配慮している。

一方、日本のカメラワークの技術は海外よりも見劣りする。観ている者に伝わるプレーが途切れる野球と違い、攻守の切り替えが激しく見所のシーンがいつ起こるか予想がつかないサッカーの撮影には、それ相応の技術を要する。

つまり、質の高い映像を作るためには作り手の腕を上げる必要がある。しかし、同時にレンズや機材など設備面を充実させるには、ある程度の制作費が必要だ。

数百億円と言われる高額な放送権料のヨーロッパサッカーに比べると、Jリーグの放送権料は数十億円と圧倒的に安い。メディアは限られた予算内でサッカー中継の映像を製作しなければならない。放映権料は年々、値下がりしており低予算でコンテンツを作る現状が変わることはないだろう。そもそも、視聴率の低いJリーグの試合に高額な制作費をつぎ込むのは、メディアにとっては大きなリスクだ。

一つの案として考えられるのは、視聴者であるサッカーファンに負担を求めることだ。Jリーグ全試合を放映するスカパーでの観戦には視聴料が生じる。だが、1試合単位で価格がついているペイ・パー・ビューではなく月額いくらで見放題という定額制である。

仮に、1試合を観るのに課金すれば質の高いサッカー放送が観られるとなれば、どのくらいの視聴者が納得するだろうか。もし、コンテンツの質の高さが人気を呼んで加入者が増えれば一人当たりの負担額は減るだけでなく、Jリーグの人気が上昇したとも見て取れる。

質の高い映像を作るための制作費をメディア、スポンサーが今以上に負担できないとすれば、1試合テレビで見るのに有料となる可能性があるかもしれない。

(※このエントリは、萬田晃様からの寄稿です。原稿募集に関しては、こちらのページをご覧下さい。)

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