中国の消費マインドの冷え込みは確かなようだ。10月の新車販売は5カ月ぶりにマイナスに転じ、近く発表されるであろう11月の実績にしても「かなり厳しい数字になる」と、この関係者は語る。中国を北米市場と並ぶ主戦場と位置づけているトヨタ、日産、ホンダなどの日本勢が、その影響をモロに被るのは避けられない。
 テレビやエアコンなどの家電も例外ではない。中国は日本のエコポイント制度に先駆けて2007年暮れに、四川省などで購入価格の13%を補助する「家電下郷」制度を導入、'08年のリーマンショックで落ち込んだ景気回復を狙ってこれを全国に拡大した。そして日本と同様、この補助制度の打ち切りと同時に販売が失速。メーカーや家電小売店は、大量在庫の山を前に悲鳴を上げているという。

 そんな中国経済の前途を見透かしたかのように、サッサと身辺整理をする動きもある。米投資ファンドのブラックストーンは9月末に超優良物件とされる上海ショッピングモール「チャンネル1」を売却、40億円近い利ざやを稼いで撤退した。ゴールドマン・サックスを始めとする証券会社や投資銀行も競うようにして保有不動産の売却を加速、投資マネーを回収するなど逃げ足は速い。今や上海、北京では「まだ大型物件を売却できない海外投資家はバブル崩壊で討ち死にする」とまで陰口されている、と関係者は打ち明ける。
 そのデンでいうと、森ビルが総額1250億円の大枚を投じて建設した地上101階建て、高さ492メートルの「上海環球金融中心」は、中国バブルに踊った巨額投資を象徴する“歴史的遺産”になりかねない。
 「中国バブルが炸裂すれば、かの地に次々と大規模工場を建設した日本メーカーは深刻なダメージを被る。日本経済が迎える第2の敗戦といっても過言ではなく、そのインパクトは絶大です」(前出・貿易関係者)

 これに輪をかけるのが、中国による対日投資の引き揚げである。とりわけ目が離せないのは、中国政府系ファンドが100社を上回る日本の有力企業株を次々と買い漁り、堂々たる大株主に名を連ねていることだ。
 「現時点で時価3兆円と言われるビッグな投資マネーです。これが一気に売りに出されたら株価はたちまち大暴落し、それこそ“東京・兜町発の世界恐慌”に直結する。そんな最悪の事態に比べたら、日本国債の売り崩しシナリオを心配すること自体、まだかわいい部類です」(前出市場関係者)

 欧州危機にも増して、どうすれば中国バブル炸裂を阻止できるか、世界の関心は嫌でも高まるばかりだ。