スタメン

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 ボスマン判決以降、オランダのクラブチームはどうも元気が無い。イブラヒモビッチがいたことのアヤックスは非常に元気だったが、その後のアヤックスの記憶はほとんどない。今季はCLに久々に登場しているので、期待がされているところ。監督はフランク・デ・ブールでベンチにはベルカンプも座っている。

 オランダの中でも、PSVは個人的に異端な印象を持っている。勝つためには手段を選ばないとか、4-3-3に対するこだわりも別にないような。管理人がよく目撃していたころのPSVはゴメス、アレックス、コネ、ファルファン、チアゴ・タルデッリを中心としたチームで、オランダの香りはまったくしなかった。いいチームだったことは付け加えておくが。

 この試合のときの両チームの状態を詳しく。リーグは序盤戦だが、アヤックスは首位。ただし、CL明けでコンディションは辛い。PSVはアヤックスから勝ち点3差の4位。たぶん、こちらもEL明けでコンディションは辛い。欧州の大会の後に、ビックマッチが組まれるのは、リーグ戦こそ主役なんだという意思表示だろうか、それとも、単なる偶然か。

 序盤はPSVの攻撃的な守備が目立つ展開となった。実際にいきなりの先制点はPSVの攻撃的な守備からのショートカウンター炸裂であった。
 

PSVの守備



 PSVは4-1-4-1。プレスを開始する位置はかなり高め。アヤックスのCBにもどんどん襲いかかる。マタブズは特に頑張る。そして、運動量がとりえのヴァイナルダムも相手のCBまで襲いかかる。こうして、相手がボールを落ち着かせる場所をなくしていくプレスの前に、アヤックスはいわゆる自分たちのサッカーをすることができなくなっていく。

 GKを積極的に利用したり、DFラインを下げてもお構いなしのPSVの攻撃的な守備の前に、どうしたもんかのアヤックス。現実には相手の息切れを待つしかなく、後方でボールを動かしながら時間を潰していった。

 個人的にはもっと中盤の選手がビルドアップを助ければいいのにと眺めていたが、そんな動きはなかった。アニタもDFラインに加わればいいのに、意地でも相手の隙間でボールを受けようと動き回っていた。でも、CBがその動きを見逃す場面が多く、アニタの動きはあんまり意味のあるものにはならなかった。

 これがポジションバランスを崩すことを嫌がるオランダ流なのかなとも考えてみたり。PSVのプレスをみて、白丸の部分が気になったのだけど、下がってこないんだよね、デヨングたちは。ロングボール作戦の一員だったからと聞けば、理解はできなくないんだけどさ。

 後方でボールを回しててもしょうがないので、ロングボールを蹴って、相手のプレスを交わすアヤックス。シグソールソンに単純に当てるよりも、シグソールソンが動いたことによってできたスペースにデ・ヨングを走らせる形を持っている様子。この試合ではほとんど機能しなかったけれど、奥の手をもっているのはいいことである。

 このように書いていると、アヤックスがボールを保持すれど、苦労している様子が伺えると思う。アヤックスが苦労したもう一つの要員が守備の問題。PSVの監督はルッテンなので、ビルドアップを大切にしないわけがない。ボールを保持できる状況なら保持したい。そんな監督。というか、PSVなら国内リーグで否が応でも試合にイニシアチブは握らせられそうな気がする。

 アヤックスの守備は4-2-3-1。相手のシステムにかっちり噛みあわせてきた。PSVで自由になれそうなのはCBコンビ。シグソールソンが懸命に守備を行うタイプではなかったので、CBからどんどん攻撃を組み立てることができたPSV。

 しかし、こちらは中盤にゲームメイクできるような選手がいない。みんな突貫タイプ。自分の得意な形になれば、強いんだけど、その形を誰が作る。なので、そういう形を作れそうなストロートマンを抑えれば、なんとかなりそうな雰囲気。ヴァイナルダムとメルテンスはなかなか突破力もあるので、今後が楽しみな逸材。

 というわけで、アヤックスからすれば相手にボールを保持されるわ、自分たちは上手くボールを保持できないわ、さらには先制されるわで最悪の序盤戦。しかし、ロングボール昨年などを駆使して、時間をやり過ごすと、自分たちの時間がやってくる。これを信じていたんだろうな。

 相手のプレスを外して、後方の選手がオープンな状況でボールが持てるようになると、アヤックスは徐々に相手の陣地で仕掛けられるようになる。ただし、中盤の選手が相手のバイタルエリアでボールを受けるような場面は相変わらず無い。

 後方からの攻撃の中心は、ヴェルトンゲン。左利きのCBは運ぶドリブルでどんどん相手の陣地に侵入していった。フェルメーレンもそうだったけれど、ベルギー主審のCBがアヤックスからごろごろ出てくる。なお、相方のトビーもベルギーである。

 基本はサイドからの仕掛け。左サイドのブーリフテルはカットイン型。なお、アヤックスの左SBはそんなに攻撃参加してこなかった。恐らくブーリフテルに期待しているところもあるんだろうし、この試合では怪我人やらなんやらで左SBが流動的に入れ替わったってことも関係していそう。

 右サイドはエリクセン&ファンデルヴィール。この2人がピッチの中で輝いていたかなと。エリクセンは唯一の幅広い動きでボールを引き出し、そして、ファンデルヴィールと絶妙なコンビで相手を崩しにかかった。パスで仕掛けるタイプの選手のようだが、ボールもしっかりキープできるので、将来が楽しみである。

 こうして、徐々にアヤックスが試合の主導権を握っていくと、守備の時間が増えるPSV。最初に訪れたのはGKと味方の衝突でGKの負傷退場。そして、アヤックスの力技の前に、同点ゴールを決められてしまう。

 後半になると、プレスが復活し、決定機を量産。そして、メルテンスの突破はフェンデルヴィールのファウルを誘い、PKを奪う。これを新入りのヴァイナルダムが決めて、突き放しに成功。これで、パニックに陥ったアヤックスをどんどん追い込んでいくPSV。チャンスも多かったが、追加点を許さなかった大きな要因はフェルメールのファインセーブ。ステケレンブルグがいなくなって得たチャンスを確実にものにしている様子。

 そして、アヤックスの右サイドコンビがまた輝く。エリクセンのダイレクトパスからの、ファンデルヴィールのクロスがゴールに繋がり、またも同点に追いつくアヤックス。試合は荒れ模様でレフェリーもファウルをとりまくり、試合を落ち着けようとしたが、時すでに遅し。熱い試合はこのまま終了した。

 ■独り言

 両チームとも欧州で勝つには難しいだろうなと感じてしまった。たぶん、アトレチコやバレンシアにぎりぎり勝てないくらいの実力かなと。アヤックスにはときどきCLの上のほうまで来て欲しいと思っているので、期待している、でも、下部組織が国際化しすぎると、オランダが弱くなるんじゃないかといらぬ心配をしてみたり。

 注目選手はエリクセン。たぶん、何年後にビッククラブにいそう。メルテンストとブーリフテルの左サイドからのカットインコンビもなかなか面白い。そして、ヴェルトンゲンはそのうちにプレミアにでも行くのだろうか。ガブリエル・ミリートみたいな印象だから、リーガでも活躍できそう。テオ・ヤンセンが目立たなかったのが残念。次回に期待。