埼玉西武ライオンズ福岡ソフトバンクホークスの第15回戦は、5対3でライオンズが勝利した。

 2対2の同点で迎えた5回、ライオンズは中村剛也の2ランホームランで勝ち越しに成功。7回にもホセ・フェルナンデスにソロホームランが飛び出し、ホークスを突き放した。
 一時は同点に追いついたホークスだったが、ライオンズ先発の帆足和幸のゴロを打たせる投球術の前に屈した。

 ホークスではこのカード、ブライアン・ファルケンボーグがいない。今季、馬原孝浩に代わるクローザーとして16セーブをあげているファルケンボーグだが、婦人の第三子出産に立ち会うため、婦人がいる福岡に残った。いわゆる育児休暇だ。

 ホークスでは先月、秋山幸二監督が、母親の訃報にも現場で指揮を執り続けたことで話題になった(http://blog.livedoor.jp/yuill/archives/51607227.html#more)。そんな中でのファルケンボーグの育児休暇は、選手と監督で立場が違うとは言え、部下思いの秋山監督の人柄が感じられる一方で、日本人と外国人の家族観の違いを改めて思い知らされる。
 米メジャーリーグでは、選手の育児休暇、忌引きが認められている。育児休暇は今季から認められたばかりだが、第1号は元広島東洋カープで、現在はテキサス・レンジャーズに所属するコルビー・ルイス。日本人選手の第1号は、ミネソタ・ツインズ西岡剛だ。

 メジャーリーグで選手の育児休暇、忌引きが認められているのは、選手会の立場の強さもさることながら、国民性も少なからず関係しているのではなかろうか。

 欧米人は、何よりも家族を大事にしている。わが国では今季、東日本大震災と、東京電力福島第一原子力発電所事故の影響で開幕が延期されたが、家族や選手の安否を気遣い、来日が遅れた外国人選手は少なくなかった。
 また、選手も家族を大事にするからこそ、メジャーリーグは今もなお、アメリカで国民的娯楽と呼ばれているのではなかろか。

 もちろん、わが国では家族関係が希薄になっているというわけではない。先の震災で、家族の存在を改めて意識された方は少なくないだろう。
 だが、わが国では、仕事が家族よりも優先されがちだ。特に男性がそうで、育児休暇も昨年、東京都文京区の区長全国の首長としては初めて育児休暇をとったが、それだけでニュースになるぐらいだ。一般企業でも、男性の育児休暇は歓迎されているとは言い難い。

 社会や男性にも言い分があるだろうし、わが国には滅私奉公という言葉もある。「私」には自身だけではなく、家族も含まれている。
 だが、裏を返せばそれは、家族よりも仕事優先の現れだし、妻の支えを意味する「内助の功」という言葉も、男性にとって都合のいい言葉に聞こえてくる。

 少子化が叫ばれる昨今、わが国政府は、男性の積極的な育児への参加を呼び掛けている。いわゆる、イクメンだ。だが、実際は先に紹介したように、男性の育児休暇取得は、なかなか容易ではない。
 この現状を改善にするには、社会的に影響力のある人間が、実際に育児休暇をとって変えていくしかないのではなかろうか。
 プロ野球界でも選手の育児休暇を認めれば、一時的には戦力、集客力にはマイナスかもしれないが、長い目で見ればプラスになるのではなかろうか。