■ 湖国のクラブ

日本最大の湖である「琵琶湖」は、滋賀県の総面積の6分の1を占めている。湖の形が、楽器の「琵琶」に似ていることから「琵琶湖」と呼ばれるようになったと言われているが、古より、人々の生活に密接に結びついていて、「琵琶湖」は、滋賀県の人にとっては、切っても切れない関係で、滋賀県は「湖国」とも呼ばれている。

その「湖国・滋賀」には、2つのJFLクラブが存在する。

1つ目は「MIOびわこ草津」である。2007年の全国地域リーグ決勝大会で3位となってJFL昇格を果たすと、2008年は14位、2009年は8位、2010年は11位。JFLの中で「中堅のクラブ」の地位を築きつつある。チーム名の「MIO」は「近江」を逆さ側から呼んだもので、イタリア語で「みんなの」 or 「愛すべき」という意味も持っている。ホームタウンは、滋賀県草津市で、Jリーグ参入を視野に入れて活動しているクラブである。

2つ目は「SAGAWA SHIGA FC」である。こちらは、守山市をホームタウンとしている。このチームは、JFLで屈指の戦力を誇っており、2007年はリーグ優勝、2008年は12位、2009年はリーグ優勝、2010年は2位と、素晴らしい成績を残している。FC岐阜のサイドアタッカーのMF嶋田正吾は、このチームからJリーグに引き抜かれた選手の代表である。

草津市と守山市は隣接する市で、JR守山駅とJR草津駅は普通電車で5分しか、かからない。ちなみに、この2駅の間にあるのが「JR栗東駅」で、栗東市は「競馬の街」として知られている。

 #1 大津京
大津?

■ 後期の第2節

第13回を迎えたJFLは、後期の第2節に突入し、滋賀県の2つのクラブが激突。今シーズン2回目の「滋賀ダービー」が開催された。

J1、J2と同様に、JFLも震災の影響で、リーグ序盤のカードは延期になっていて、ソニー仙台を除くと、各チームは11試合 or 12試合を消化した段階である。「SAGAWA SHIGA FC」は、現在のところ、7勝4敗1分けでリーグ首位。対する「MIOびわこ草津」は、4勝6敗1分けという成績を残している。

「滋賀ダービー」の会場となったのは、滋賀県大津市にある皇子山陸上競技場で、「びわ湖毎日マラソン」の発着点としても知られている。大津市役所のすぐ目の前にあって、JRの大津京駅から徒歩で約7分のところにある。

この周辺は、その名の通り、「大津京(近江宮)」があったところといわれている。

西暦663年の白村江の戦いで、日本は百済に味方して、「日本・百済の連合軍」と「唐・新羅の連合軍」が朝鮮半島で激突したが、「日本・百済の連合軍」は惨敗してしまう。その報復として、「唐・新羅の連合軍」が日本に攻めてくることを恐れた中大兄皇子は、667年に「大阪(=難波長柄豊碕宮)」から「大津」に都を移したとされている。

しかしながら、中大兄皇子(天智天皇)は、671年に死亡し、「大友皇子」と「大海人皇子」の間で後継者争いが勃発する。この戦いが「壬申の乱」で、争いに勝利した「大海人皇子」が「飛鳥浄御原宮」に遷都したため、「大津京」はわずかに5年の命に終わったとされている。

 #2 大津京駅の周辺
大津?

■ 滋賀のサッカー

「滋賀のサッカー」というと、何と言っても野洲高校である。2005年の高校サッカー選手権では、ジェフ千葉のFW青木孝太、川崎フロンターレのMF楠神順平、セレッソ大阪のMF乾貴士らを擁し、魅惑的な「セクシーフットボール」を披露して、高校サッカーの頂点に立ったことが知られている。このときのチームは「ヒールパス」を多用するなど、これまでの高校サッカーにはあまり見られなかったスタイルだったので、サッカー界に大きなインパクトを与えた。

野洲高校出身では、MF乾が何度か日本代表に招集されているが、滋賀県出身の日の丸戦士というと、DF井原正巳の名前が挙げないわけにはいかない。「アジアの壁」と言われた井原氏は、キャップ数「122」で歴代最多。滋賀県の水口町の出身で、高校は「SAGAWA SHIGA FC」のホームタウンの守山にある守山高校を卒業している。

他には、鹿島アントラーズのMF中田浩二、ガンバ大阪のDF高木和道、川崎フロンターレのFW矢島卓郎、湘南ベルマーレのMF坂本紘司、柏レイソルのDF橋本和といった選手が滋賀県出身で、Jリーグで活躍している選手である。

 #3 皇子山駅
大津?

■ 滋賀ダービー

564人の観衆を集めた「ダービーマッチ」で、先制したのはアウェー扱いとなる「SAGAWA SHIGA FC」で、前半15分にDF奈良輪雄太のシュートで先制する。このシュートは、GKがセーブしたかと思われたが、ゴールラインを割っていたという判断でゴールが認められた。さらに、「SAGAWA SHIGA FC」は前半18分にも、右サイドに流れたMF清原翔平のクロスをFW御給匠が得意のヘディングで決めて2点目を挙げる。FW御給は得点ランキング5位となるリーグ戦6ゴール目。

2点ビハインドとなった「MIOびわこ草津」は、前半21分にゴール正面でフリーキックを得ると、これをMF伊藤和也がグラウンダーで直接決めて1点差に迫るが、「SAGAWA SHIGA FC」は、前半34分にMF大沢朋也のゴールで突き放し、3対1とリードして前半を折り返す。「SAGAWA SHIGA FC」は、後半終了間際にもFW鳥養祐矢が決めて4点目を挙げる。結局、4対1で「SAGAWA SHIGA FC」が勝利して、首位キープとなった。

 #4 試合前のセレモニー
大津?

■ JFLでプレーする元Jリーガー

昨オフ、松本山雅FCに元日本代表のDF松田直樹が加入したことが話題になったが、実質、3部リーグとなるJFLにも、名前の知られた選手は多く在籍する。

ツエーゲン金沢には元日本代表でサンフレッチェ広島で活躍したFW久保竜彦がプレーしていて、V・ファーレン長崎には、FC東京や横浜Fマリノスなどで活躍したMF佐藤由紀彦がいる。FC町田ゼルビアには、C大阪の守護神として2005年にJ1のベストイレブンにも選ばれたGK吉田宗弘がいて、FC琉球には、FW永井秀樹やFW我那覇和樹というスター選手がプレーしている。

ほとんどのチームが、Jリーグでプレーした経験のある選手を抱えているが、「SAGAWA SHIGA FC」でもっともよく知られているのは、187?のFW御給匠で、C大阪、横浜FCなどでプレーした経験を持つ大型ストライカーである。JFLでは抜きん出た存在で、2007年、2010年と2度もJFLの得点王に輝いているが、この試合で、「高さ」と「強さ」を存分にアピールした。

「MIOびわこ草津」では、水戸ホーリーホックなどでプレーし、J2通算で141試合に出場しているMF秦賢二が在籍している。今シーズンから「MIOびわこ草津」でプレーし、キャプテンを任されている。また、徳島ヴォルティスでもプレーしたFW菅原康太も、「MIOびわこ草津」に在籍している。

 #5 187?のFW御給匠 (背番号「29」)
大津?

■ 滋賀のJリーグクラブ

Jリーグは、J1が18クラブ、J2が20クラブまで拡大し、47都道府県の中で、Jリーグのクラブが無い都道府県の方が少なくなってきた。クラブが無い都道府県を挙げてみると、青森県、岩手県、福島県、秋田県、長野県、石川県、福井県、滋賀県、奈良県、和歌山県、島根県、山口県、香川県、高知県、長崎県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県ということで、18県となった。

ただし、この18県の中でも、Jリーグ入りが「手の届くところ」に来ているクラブを抱えているところもある。ブラウブリッツ秋田、松本山雅FC、AC長野パルセイロ、ツエーゲン金沢、カマタマーレ讃岐、ヴォルカ鹿児島、FC琉球といったクラブである。

したがって、「蚊帳の外」になっている都道府県は「ごくわずか」であるが、滋賀県は、残念ながら、「ごくわずか」に分類される県で、「MIOびわこ草津」も、「SAGAWA SHIGA FC」も、「JFL」が主戦場で、今シーズンのJFLで上位に入っても、Jリーグに昇格することはできない。特に、「SAGAWA SHIGA FC」の場合は、「企業のサッカー部」という位置付けなので、今のところ、Jリーグを目指す動きはない。

滋賀にJリーグクラブが誕生する日は来るのだろうか・・・。

 #6 ビワコッチ
大津?


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