2011年05月25日配信のメルマガより抜粋


(C) Ichiro Ozawa



 先週末は、土日で大学サッカーを取材した。日曜日は西が丘で明治大対駒澤大を取材したのだが、試合後に面白いエピソードを聞いた。明治大DF丸山祐市の、進路についての話だ。

 昨年にはU−21日本代表にも選ばれるなど左利きのセンターバックとして早くからスカウトの注目を受け、新潟や横浜F・マリノスからオファーを受けていた。しかし、早い段階から進路を一般企業への就職に決めていた彼はJクラブに断りを入れた上で、ユニバーシアード代表や∪−22日本代表入りの道も自らの意思で絶っていた。

 年明けから就職活動に励んでいた丸山だが、第一希望の「ここしかない」という企業に最終面接で落ちてしまう。そして、それをきっかけにプロ入りに進路変更をしたのだという。

「第一志望の会社に落ちた時に、『このまま、他の企業に行って満足できるのか。サッカーを辞めたことで後悔するんじゃないのか』という思いが巡って。自己中かもしれないですが、サッカーでもう1回どこまでできるのか、改めてチャレンジしたいと思いました。『落ちたからプロに行こうとしている』と思われるのはわかっているので、それを跳ね返すくらい、『会社務めをしなくてよかったね』と言われるくらいプロで通用するように頑張っていきたいです」

 丸山のプレーを見たのは初めてだったが、この試合で一番目についた選手だった。正確なキック、フィードは抜群のセンスを感じさせた。183センチと高さもあり、ハードマーカータイプではないが弱さはなく、読みが抜群。スピードもプロでやっていけるだけのものを持っていて、素材としては今の大学生では屈指のレベルだ。その彼からいきなり上記のような話を聞いたので、不謹慎かもしれないが「素晴らしいじゃないか」と感じた私は、そのまま立ち話で以下のようなやりとりをした。

小澤 就活をしてみて逆に良かったことは? というのも、トップレベルの大学の選手はなかなか経験しないことだから良かったことがあるんじゃない?

丸山 そうですね。同年代だったり1つ上の人だったり、いろんな人生を送ってきた人に会うことができました。アルバイトの話や頑張ってきたことを聞いて、「こういう考え方もあるんだな」と知ることができました。OB訪問で先輩のいる企業に行って話を聞いたり。サッカーは別として、すごい人たちがいっぱいいるなと思いました。

小澤 個人的には、大学生、大学サッカーをやっている選手だったらみんな就活をした方がいいんじゃないかなと思っています。いくらトップでプロに行くとしても、引退後の人生があるわけだし、そういう意味で丸山君みたいな選手がもっと出てきて欲しいと思ってますよ。

丸山 ほんとですか……(苦笑)

小澤 やはり面接官には珍しい感じで受け止められた?

丸山 そうですね、面接官に「何で?」と聞かれました。自分自身では「大学4年間で終わらせる」という気持ちをもってサッカーをやっていたんですけど。サッカーで上手く行って、これを就職活動に移した結果、そういうわけにはいかないんだなというのを気づいて。相手とのフィーリングや運もあるのかなと思いつつ、サッカーで頑張ったことを就活で最後まで活かせなかったのが自分の甘さだ、と知りました。

小澤 丸山君を落とした第一希望の企業は見る目がないよね? サッカーの世界でここまでやれている選手だったら、どの業種でもどの世界であってもある程度通用する人材だと思うんだけど。

丸山 どうなんですかね……。

小澤 そこ以外は全く行く気がなかったの?

丸山 はい、全くなかったです。先輩がいて、6歳くらい上の明大サッカー部OBの方なんですけど、いろんな人に会わせてくれて、すごくいい会社だなと思っていたので。「ここしかないな」と思っていたし、この会社と他の企業と比べるとどうしても「違うな」という思いがあったので。



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